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花を咲かせる魔法使いはとりあえず楽をしたい  作者: 岳鳥翁
アリエリスト領と花の魔法使い
18/76

18:海藻類と書いてカーマイン

 「貴様の実力とやらを見てやろう。当然、断りはしないな? 【花園の賢者】よ」


 「面倒だからパスで」


 いきなり突きつけられた杖を手でどける。

 初対面の人間に対してその態度はいかがなものなのかと思われるのだが。


 俺の一言に唖然とした表情を見せる緑の長髪の男。しかしすぐに表情を引き締めると、見下すような目で俺を見る。


 「フッ、何だ怖いのか? それとも、自信がないのか? ならばすぐに認めるのだな。自分には賢者と呼ばれるほどの力はない、ただ魔法が使える田舎者だとな!」


 何これウザイ。


 「いや、まぁ確かに。自分でもそこらへんはよくわかってないしなぁ・・・」

 

 俺の後ろではPさんが長髪緑を警戒するようにクェルを盾にしていた。あんたのところの魔法使いなんだろうに。


 なんでこんな面倒なやつが出てきたのか、と俺は昨日からの回想に入った。





  --------------------------------------------------------



 暫くして疲れた様子でギルドから出てきたPさんとクェル。Pさんにいたっては俺に文句を言いたそうにしていたが、それもこれも自業自得なので俺が何かを言われる筋合いはない。諦めろ。


 元々、ギルドの後はPさんの自宅である領主の屋敷まで行く予定であったのだが、予想以上にギルドで時間を食ってしまったため、急遽予定を変更。街の宿屋で一泊することになったのだ。


 俺だけ。

 


 何でも、俺のことを説明するにはもう時間も遅く、家族に迷惑がかかるとの事。

 誰のせいでこうなったのかと言ってやりたいが、街のほうにも少しばかり興味があったのでとりあえずその提案に乗ることにしたのだ。


 宿屋であるがかなりいい所を紹介してくれた。高級宿とか言うやつだ。金もPさんが払ってくれている。

 明日の朝に迎えに来てくれるそうなので、それまではその高級宿で過ごした。

 


 



 で、朝になってクェルとPさんが来たのだ。

 サービスもよく、料理もうまい、風呂もある。もうここで暮らそうかと思ったが、二人の顔を見て現実に引き戻されたのだ。なんて事をしてくれたんだ。


 宿屋の店主にお礼を言って嫌々二人に着いて行って歩くこと暫し。

 街の中でも一際高い場所に立てられた領主宅は、前の世界でもヨーロッパにありそうな雰囲気の屋敷であった。

 で、その門のところに知らない男が立っていた、と



------------------------------------------



 回想終了。

 つまりあれだ。開口一番で冒頭の台詞が出てきたのだ。


 頭おかしいんじゃねぇの?


 「そもそもの話、当主であるユリウス様には、この私が外様で縁のある者を紹介するつもりだったのだ。それを話を聞かないアーネスト様が話も聞かず・・・・・・」



 話が長いので面倒になった俺は、目の前の男に気づかれないようにそっと後ろの二人の下へと近づいた。


 「なぁ、何あれ? いきなりキャラが濃いの出てきて、わけわかんないんだけど?」

 「・・・アリエリスト家の魔法使いで、カーマインという男だ。貴族家の出身ではあるが、三男であるために家を継げず、アリエリスト家に魔法使いとして雇われている。が、あれでもアリエリスト家の雇われている中では一番優秀な魔法使いだ」

 「私、あいつ嫌いなのよね・・・なんか、視線が鬱陶しいのよ」

 

 クェルの後ろで、カーマインを睨むPさんは、何かを思い出したのか次にはブルリと身を震わせる。よほどいやな思いでもしたのだろう。

 未だに得意気に御高説を述べているカーマインという男。聞いてもいないのに今度は自分の事を語りだしているので無視していても問題はない。


 「で? 何でそんな面倒な奴が俺を待ち受けていたわけ?」

 「昨日、お嬢様がユリウス様にカオル殿のことを話されてな。その結果、決闘の件についてはカオル殿に任せることになった・・・ところまではよかったんだが、それに最後まで反対したのがあの男でな。なんでも、お嬢様がカオル殿に協力を取り付ける前から、決闘を任せる魔法使いを見つけていたらしい」

 「そうなのか? なら、別に俺が出なくてもよかったじゃないか。なんなら、今からでも帰ろうか?」


 クェルの言葉に気分が上がる。

 話がなかったことになった、とか事実を話せばじいさんだって諦めてくれるだろう。

 だが、そんな俺の気持ちなどは露知らず、クェルはPさんに聞こえないような小声で話しかけてくる。


 「ここだけの話だが、あの男はあまり信用しないほうがいい。噂ではあるが、嫡子のいないアリエリスト家の当主の座を狙っているとも言われているからな」

 「・・・あんまり、俺を面倒ごとに巻き込まないでほしいんだが」


 すまない、と小さく謝るクェルに顔をしかめる。

 こいつらアリエリスト家(覚えた)を取り巻いている状況はよくわからないが、それで何となく想定しているよりも面倒な状況なのは理解できた。

 つまるところ、アリエリスト家内部に相手側と通している奴がいるかもってことね。

 でその筆頭がこのカーマインとかいう目の前の長髪緑である、と。


 


 「つまり! 貴様は御呼びでないのだ! それがわかったなら、荷物をまとめてさっさと森に帰るがいい」


 ・・・実はいい人だったりしませんか?


 


 「ちょっと! 私が苦労して連れてきたのに、何てこと言ってんのよ! そんなこといったら、カオルが本当に帰っちゃうでしょ!?」

 「なっ!? だ、だがアーネスト! そのようなどこの馬の骨だかわからない男に、我がアリエリスト家の一存がかかった決闘を任せるわけには・・・」

 

 そうだそうだー。だいたい、俺の魔法の性質を聞いて絶望してたじゃないかー! 

 ほら、あきらめてもいいのよ?  


 「うるさい! だいたい、私のこと呼び捨てにしないでよね! それに、あんた雇われてるだけでアリエリストの名を語ってんじゃないわよ!」

 「クッ・・・! しかし、アーネスト、様! 私は・・・」

 

 Pさんの言葉に言葉を詰まらせるカーマインは、何も言えずに俯いた。

 怒りなのか、はたまた悔しさなのか。握り締めた杖の先が震えている。


 がんばれ、海藻類(カーマイン)! そこで諦めたら、誰が俺を森へ帰してくれるって言うんだよ!! 顔上げろよ! お前しかできないことなんだ! もっとだ、お前ならもっとやれるはずだろ!?


 「だいたい、あんたが雇うつもりだったやつより、カオルの方が強いわよ!」

 

 ・・・ん?


 Pさんの言葉に、俺は一瞬で現実に引き戻された。

 見れば、何故か得意気にふんぞり返っているPさんの姿。

 

 ナニヲイッテルンデショウカ?


 そしてそんなPさんの言葉に反応したのは俺だけではなかったようで、その一人であるカーマインは先ほどまでの顔を一変させ、今度はニヤリ、と笑った。


 「ほぅ・・・ではこうしましょう、アーネスト様。私が雇った男とその男で決闘させ、勝った者をフルフート家との決闘で使う。これなら文句はありませんね?」

 「いいわよ。それに乗ってあげるわ」


 よくねぇよ。乗るんじゃねぇよ。


 こいつ、また勝手に話を進めやがった。昨日のギルドの件から何もわかっていないではないか。

 Pさんのほうはまだ海藻類のほうを見ているため、その後ろで控えているクェルに何とかしろ、という視線を送った。



 「・・・」

 

 おい、無視すんじゃねぇよ。


 しかたない。ここは俺が自ら主張するしかないだろう。

 流されるままじゃ、俺は自分の望む生活を手にできないことを知っている。俺はNOといえる男なのだ。


 「あの、俺は・・・」

 「その話、面白そうだ。許可しよう」

 「誰だよ」


 思わず初対面で汚い言葉が出てしまったが、俺は悪くない。悪くても認めない。

 なんでそのタイミングで割り込んできた・・・!


 頭を抱えたくなるのをこらえ、声の人物に視線を向ける。


 出てきたのは四十くらいの優男。

 豪奢な装いに身を包み、整えられた金髪は左右に分けられている。そしてどこのイケメンタレントだと言いたくなるようなルックス。

 

 「やぁ、初めまして、【花園の賢者】殿。私はユリウス。ユリウス・P・アリエリストだ。このアリストの街の領主であり、君を連れてきたアーネストの父だよ」


 つまりここで一番偉い人が出てきた、と。

 Pさんはあ、父上、と呟いているがクェルはひざまづいて頭を下げている。カーマインも同じような姿勢をとっていた。


 「・・・どうも」

 

 言いたいことは色々とあるが、いきなり文句をいうのは失礼だろう。そう考えて軽く会釈をするのだが、この人の背後でカーマインが俺を睨んでいるのが見えた。


 「まぁ、色々とあるだろうが、まずは屋敷に入ってくれ。話はそれからでも遅くはないだろう?」

 「・・・まぁ、そりゃそうですね・・・」

 「カーマイン。君もそれでいいだろう?」

 「・・・は。かしこまりました」


 ではいこうか、と門をくぐって屋敷へと入っていく領主さん。

 Pさんたち二人はその後ろをついていったので、俺もそれに続こうと歩き出す。

 が、そんな俺の前にカーマインが立ちふさがった。


 「あまり、いい気にならないことだな。貴様なんぞ、すぐにでも追い出してやる」

 

 それだけ言って先に行くカーマインをみて、俺は思わずため息をついた。

 

 今度から、置いていかれる前についていくか・・・

 

 

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