17:異世界ギルド3
書事情により、次回から夕方四時に投稿します
それから、依頼の受注方法や報酬金の受け取り方法、討伐証明部位以外の魔物の素材の買取や解体の申請などといったギルド所属の冒険者としての基本的なことをブルームさんから教えてもらった。
ただ、途中から聞くのも面倒になったので後のほうは話半分にしか聞いていない。あからさまにそんな態度をとるのも失礼かと思って態度だけはまじめを装った。・・・え、だめ?
まぁ、最後は少し呆れたように笑いながら「わからなければ、また聞いてくださいね」と言われたあたり、ブルームさんにはお見通しだったのだろう。
もっとも、俺は身分証となるものを作りにきただけにつもりなので依頼を受けるのがいつになるかはわからないが。
ブルームさん曰く、白の冒険者は、一ヶ月以上依頼を受けなかった場合冒険者としての資格を失うらしい。
再度登録するには初回と違って大銅貨三枚を払わなければならないようなのだが、よく考えてみると俺ってばこの世界のお金とかよく知らない。大銅貨ってなんぞってなったので軽く説明を受けた。
貨幣を知らないことに驚かれはしたが、かなり田舎から来た者でもたまにそういうことはあるようだったので大丈夫だった。
簡単に説明すると以下のとおり。
銅貨→大銅貨→半銀貨→銀貨→金貨→白金貨
更にはそれぞれ十枚で次の一枚と同価値らしい。こちらの世界と日本では物価も価値観もぜんぜん違うので一概には比べることは適わないが、大体の指標とすれば同化が百円くらいと考えていいだろう。
ただ、市場で出回っているのは半銀貨までがほとんどで、銀貨、金貨は滅多にないらしい。白金貨は貴族階級が用いるもので、一般市民が手にすることはまずないとの事。
そういえば、じいさんが指輪に金を入れておいたって言ってたっけ。
まだ見ていないが、過去にじいさんへ挑んだ英雄が残した金だ。それなりに多いはず。あわよくば天文学的な大金でワンチャン遊んで暮らしても問題なし、なんてこともあるだろう。
余談ではあるが、ヒヤシンスは喜んで受け取ってもらえた。
それだけ。素敵! 養わせて! 見たいな事にはならなかった。
「とりあえず、後で金の確認でもしておくか・・・」
受け取った冒険者証を懐にしまい込む・・・振りをしてアイテムボックスである指輪の中に入れておく。なくしても発行料で大銅貨三枚を取られるらしいのでなくさないようにという配慮だ。
「大丈夫だったか?」
「ああ。おかげさまでな。・・・ところで、これはいったいどういう状況なんだ?」
そのままクェルの所まで戻って登録できたことを伝えるまではよかったんだが、俺は目の前の光景を前にしてもう森に帰りたくなってきた。
「戻ってきたわね! 彼こそが今まで謎に包まれていた【花園の賢者】よ!」
そういって背後の冒険者の集団に俺を紹介するPさん。心なしか生き生きとしているのはたぶん見間違いではないのだろう。調子に乗っていることがよくわかる。
アルゴテ含めた冒険者の集団も、それを聞いて各々が小声で何かを話しているようだった。
やれ意外と若い、あれがか、といった声だ。他にも何か言われているようだが、生憎とそんなことを気にしている余裕などない。
俺は自分でもわかるほど顔を歪めてPさんの襟首を掴むとクェルとともに冒険者たちから距離をとった。
「言い訳は聞いてやろう。何をした?」
「な、なんでそんなに怒ってるのよ・・・ちょ、ちょっとあなたの事を話しただけよ?」
「すまない、カオル殿。どうやら、【花園の賢者】という名前は予想以上に有名だったようなんだ・・・」
俺の態度に困惑しているPさんであったが、クェルの説明にこくこくと首を動かした。
だが、なんださっきの説明は。煽ってんじゃねぇよ。
「だからって、人を見世物みたいにするもんじゃねぇよなぁ?」
「い、イヒャイイヒャイ!」
グニィっとPさんの両頬を摘んで左右に引っ張ってやる。貴族? 知らんな。
腕をわちゃわちゃさせるPさんであったが、クェルのそのくらいで許してはくれないか、という言葉で俺もやめてやる。
終わった直後に頬を抑えたPさんに睨まれた。
「で? 何で有名だからってあんなに集まってこっち見てるんだよ」
「何でも、カオル殿に会った冒険者のパーティが急に強くなったという話がここらで知られているようでな。自分たちも強くしてほしいと頼みたいんだそうだ」
それを聞いて頭が痛くなる。
俺に会った冒険者といえばあいつらしか思い浮かばないが、なんて事をしてくれたのだ。面倒この上ないじゃないか。
こうなるなら、俺のことは秘密にするようにとか何とか言っておけばよかった、と後悔しても遅いだろう。第一、俺は本当に何もしていないのだ。食事くらいしか面倒は見ていないし、戦闘訓練は虫の魔物たちが見てくれていたんだ。
「とにかく、だ。そんな面倒なことを俺はやるつもりもない。この街に来てやったのも、お前たちの頼みごとを嫌々引き受けてなんだ。自分で収拾をつけてくれ」
「えぇ・・・少しくらい話してあげたら? さっきの人とは話してたじゃない」
「こんなに騒がれるなら話は別だ。貴族なんだろ? それくらいは治めろよ。あんまり言うなら、問答無用で森に帰るぞ」
「わ、わかったわよ。・・・そんなに怒らなくてもいいじゃない・・・」
伝家の宝刀、おうち帰るはなかなかに強力だった。まぁ、抜いたところでそれは鈍。帰ってもじいさんに追い出される未来しか見えないが・・・気づくまでは使わせてもらうとしよう。
冒険者たちの元へ説明しに戻るPさんとクェルを尻目に、俺は一人ギルドを出る。
街でやることは終わったし、後はここの領主であるPさんの自宅へと向かうだけだ。決闘までどれくらいの日にちがあるのかは知らないが、それまでは貴族のお客様として文明的で雅な時間でも過ごさせてもらうとするか。なんせ、俺はPさんたちにとっては救世主のようなもの。そんな俺の頼みを断ることはないだろう。
ククッと笑みが零れた。
もうすぐ陽が暮れるのか、空は茜色に染まっていた。




