14:徒歩二時間は近くない
遅くなりましたが、PVが500をこえ、気づけば、900も間近。ありがとうございます。まだあと半分は予約投稿してますのでよこれば楽しんで下さい。
あと、ブクマや感想などで二修羅和尚の調子は上がります。是非。
それでは、どうぞ!
花を咲かせる。それが俺の使える魔法の特性であるわけだが、別にそれだけしかできないというわけではない。
第一、本当に花を咲かせるだけなのであれば、じいさんとあった瞬間に異世界生活は終了していただろう。
なので、戦えないことはない。が、怪我すれば痛いし、疲れるだけの事にどうして俺がやる気を出さなくてはならないのか。そこらへんを主張したいとは思うが、残念なことにこの件にじいさんまでもが絡んでいるのなら仕方ないと諦める他ないだろう。
竜という種族は、干渉されるのを嫌う割に、自らが関わる事は思い通りにならないと気に入らないのだ。
つまり、じいさんはジャ◯アンだった?
俺の中で、新たな説がQ.E.Dされそうになるが、すぐにくだらねぇと思考を破棄する。
もうすぐ抜けるとはいえ、ここはまだ森の中。つまりじいさんのテリトリー。思考を読めるじいさんのことだ。変なことを考えれば、また何されるかわかったもんじゃない。
「なぁ、森を出たらどうするんだ?」
そういえば、この後の予定をまったく聞いていなかったことに気づき、先頭を行くPさんに声をかける。
が、返ってきたのはうー、とかあーとかいう気の抜けたような声ばかり。
さっきの、「魔法で花を咲かせられます」発言からずっとこんな感じだ。
一端の乙女としてどうなんだとは思うが、最後の望みとばかりに頼った相手が、こんな使えそうにないやつだしなぁ。賢者、とか言われてる程だと思っていれば尚更だろう。
だが、そこまで落ち込まれると俺も少しばかり気分が悪い。勝手に期待されて勝手に落ち込まれてるのだ。確かめもせず、過度な期待を抱いた方が悪い。
それに、俺は弱いわけではない。多分。やる気にならないだけなんだ。
「取り敢えずは、冒険者ギルドで、カオル殿の登録を行う予定だ。森から出たことがない、ということなら、身分を示す物はあって困らないはずだ」
Pさんが言わない代わりに、クェルが答えてくれる。
まだまだクェルの顔を見ただけで少しばかりビビってしまいそうになるが、もうある程度はなれた。
いつまでも怖がってちゃ相手に悪い、と俺は腰が引けない様に意識しながらなるほど、と頷いた。
異世界ファンタジー定番のギルドはやはりというかなんというか、冒険者で結成された組織であるらしい。街や村などから依頼を受け、それを所属する冒険者に斡旋するギルドは、その報酬の一部を手数料としているのだとか。ギルドという組織は国中に存在し、王国の首都に本部を置き、他の街に支部を置いているとも聞いた。いわば、規模の大きい何でも屋と考えればいいだろう。
なお、これは前に花園まで来た四人組の冒険者からの情報である。
「要するに、登録して決闘やれば全部終わりなんだろ? なら早く済ませようぜ。ヒモ生活が待ってるんだ」
「夢にまで………ウェッ!?」
「お嬢様!?」
突然立ち止ったPさん。かと思えば、何やらもごもごと独り言を呟いた後、硬直したまま後ろ向きに倒れそうになっていた。クェルが支えなければ後頭部を強打していただろう。
駆け寄っていったクェルの後を、少しばかり歩く速度を上げてPさんの側に近寄った。
顔が赤いが、熱中症にでもなったのだろうか。確かにもう森の出口はすぐそこだ。そのため、木陰のある場所も減っている。俺も気をつけるか。
「おいおい、大丈夫か? あんたに何かあったら、こっちが困るんだぞ?」
ほれ、と気を利かせて日陰になるように背の高い、大きめの花をPさんの側に咲かせた。
こんなところで倒れられたら、いったい誰が俺を養うというのだ。一大決心(じいさんによる強制)してあの花園から出てきたというのに、無駄に……あれ? おじゃんになれば、俺戻れるんじゃね?
「っ……!?!? だ、大丈夫よ! それより、急ぐわよ!」
「お嬢様! お待ちください!」
帰還計画を立てている真っ最中であったが、Pさんは俺の顔を見るや否や勢いよく立ちあがって歩き出すと、それを追うようにしてクェルも後に続いた。意外と元気のよさそうなその足取りに若干ながら残念に思ったが、まぁそれはそれでいいだろう。
「……」
「? どうされたのだ? カオル殿」
あれから少しして、場所は森の入口。
俺はそこで踏み止まっていた。
…いや、言いたいことはわかるんだ。はよ行けって言われなくても分っている。ただ、頭ではわかっていても体が言うことを聞いてくれないのだ。
何故だ、何故、森から出るあと一歩が踏む出せないんだ…!
「すまん。だが、初めてこの森から出るもんだからな。こう…なんか出た瞬間に死ぬんじゃないのだろうかとか考えてしまうんだ」
「考えすぎではないか?」
まぁ、そうなんだけどさぁ。
「ちょっと、あんまり変なことで時間使わないでよね」
そんな俺を見かねたのか、腰に手を当てたPさんがムッとした様子でそう言った。
先程までの奇行少女はどこへいったのか、今ではもうすっかり落ち着いたようで、俺との会話にも割と普通の対応をしてくれるようになっている。
それと、俺にとってはあまり嬉しくない事であるが、それでも噂になるくらいには強いと考えたようで決闘は俺がやるようだ。よく花を咲かせるだけって聞いてそう思えたなとは思うが、あれだけ養えとか言ってかっこつけて負けましたじゃ話にならん。ので、勝つ気はある。怪我とか痛いし。面倒だからやりたくはないけどね!
閑話休題
「それは分ってる。ただ、わかるだろ? この状況は、言わば寒い冬に、暖かい部屋から外に出たくない、みたいな状態なんだよ」
「多分違うわよ、それ」
「ですよねー」
口ではそう言ってはいるものの、結構マジで動きたくない…いや、間違い。動かない。
なんたってこの森は、俺がこの世界に転生してきてからのいわば家なのだ。
あの天使の頼みで、不毛の地と呼ばれた場所を花畑に変えたり、魔物にお世話してもらったり、青林檎育てたり、しーちゃんのような魔物たちとも仲良くなったり……
あぁ、考えたら、今すぐにでも引き返したくなってきた。このまま、ダッシュで二人を撒けば、もう諦めるんじゃ…
「ゴッ!?」
そんな俺の思考は、背中に感じた衝撃と痛みで中断させられた。
ついでに勢いそのままに、森の入口から吹き飛んでしまったようで、今度は顔面に衝撃。
本日二度目の顔面着地である。
「だ、大丈夫か? 飛んできた土の塊が背中にぶつかっていたようだが…」
その一言で全部理解した。
あのじじい、やってくれたな。
帰ったら一発喰らわせようと思うが、面倒だったら止めておく、と割と柔らかい信念のもとに誓った俺であった。
「まぁ、出てきたんだし、それでよかったじゃない。それじゃ、早くアリストまで行くわよ」
「アリスト?」
「この地竜の森の近くの、お嬢様の父であるユリウス様が治める街の名だ。知らなかったのか?」
あいにくだが、俺はこっちに来てからあの森から出たことがないのだ。面倒だったし俺に直接は関係なかったこともあり、森周辺のことでも知らないことは知らない。
こういう面倒くさがりな部分をじいさんは直したかったのだろうか。
未来の俺、頑張って直してくれ。
「で? ここからどれくらいで着くんだ? そのアリストには」
「結構早いわよ。歩ける距離だし」
「およそ一時間くらいだ」
やだ、もう帰りたくなってきた。




