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花を咲かせる魔法使いはとりあえず楽をしたい  作者: 岳鳥翁
アリエリスト領と花の魔法使い
1/76

1:考えるのは面倒だけど、転生はする

しれっと新作投稿。今度こそはエタらないようにしたい(願望)


毎日0時に投稿となっております。現在は4月の27日まで毎日投稿。随時更新。


話ごとに字数が違いますが多目に見てやってください。

「その時僕はこう言ってあげたんだよ。『それすらできないのなら、神様なんて辞めてしまえ!』ってね!」


「…はぁ、なるほど」


 目の前で胡坐をかいて浮いている(・・・・・)金髪の少年の、そんな元気な声に取りあえずうなづいて見せた俺であるのだが、そんな俺自身も今の状況をよく把握できていない。

 なんか変な場所に来たなと思ったら、突然この少年が現れて、話? が始まったわけである。


 ちなみに、先ほどから何で浮いているのかという疑問があるわけなのだが、そこに突っ込んでもどうしようもない気がするので口にはしない。めんどくさそうだし。


「ねぇちょっと、ちゃんと話聞いてる?」

「へ? あ、いや……すみません、聞いてなかったです…」

「うんうん、正直なことはいいことだ。とはいえ、聞いていなかったことはいただけないね」


 はいダメ~と言って腕をクロスする金髪の少年に、よくわからずすいませんと謝る。

 見た目的には俺の方が年上であるのだが、そうしなければならないように感じたのだ。

 ……何故なのだろうか?


「ふむふむ、君のその疑問は尤もなものだね。それに答えるとするなら、それは僕の存在レベルが君の遥か上だから、というのがベストな解答になるだろう」


「あれ……俺、今声には……」


「出してなかったね。なにせ、僕は神…って名乗れればよかったんだけど代行を任された天使だ。元々死んだ人の魂を導くのが仕事だし、それくらいはできて当然だよ」


 どうだすごいだろ、と今度は胸を張って威張る金髪少年。

 表情豊かでこういった仕草がよく似合うのは、年相応といったところだろうか。


 しかし……天使、ねぇ

 存在レベルがなんなのかはいまいちよくわからないが、まぁ今はそういうものなのだと考えておこう。目の前の少年が、少しばかり早い病気にかかっている可能性もないわけではないが、それも後回しの問題だ。


 改めて目の前の少年を見るが、簡素な白い服の背中の部分からは、少年の身長を超えるくらいの羽が一対。そして、頭の上には光る円盤のようなものが浮かんでいる。


 ……天使のそれって、リングじゃありませんでしたっけ?


「細かいことを気にする男は嫌われるよ」

「それは勘弁。養ってもらうのに、嫌われたら終わりだ」

 

「反応は早いのに、言ってる内容は完全にニートのそれだね」


 呆れたような視線をこちらに向けてくる少年であったが、養われることの何がダメなのだろうか。

 女の人だって、家庭に入れば旦那に養ってもらう人が多いはず。そして、現在の男女を平等に扱おうとする社会であるならば、その立場が逆転しても何ら問題はないはずなのだ。

 敢えて言おう。養ってもらうことの何が悪いのか。楽をして何が悪いのか。


「でも君は家事と料理、掃除も任せたいんだろ? でもって好きな事したい、と」

「うん」

「それってヒモだよね」

「そうともいうな。いいよね、ヒモ。働かなくていいとか最高じゃないか」


 俺がそういうと、今度は呆れたように溜息を吐く少年であったが、まぁいいかと口にする。

 

「君、もう死んでるしね」


「……え?」


 唐突に告げられた言葉に、一瞬思考が停止した。

 死んだ? 誰が? あ、俺deathねわかりま…せんよ!?


「フ、フッ、じょ、冗談はやめてほしいですな」

花富士薫(はなふじかおる)。年齢19歳。実家は花屋を経営しており、嫌々ながらも手伝いはしていた。親から英才教育という名の強制により、花言葉を覚えさせられる。交友関係は狭くはないが、その中に女子はおらず、彼女がいたこともない。将来的に楽ができて養ってくれそうな彼女を探そうと大学に入って奮起するが、その矢先に睡眠中に飛んできた豆腐が喉に詰まって窒息死。…こんなところかな」


「待って。色々とツッコミたいところはあるけど、取り敢えず一言」


「いいよ。何?」


「飛んできた豆腐って何?」

 

 少年が、そこにツッコむかぁ…と再度ため息を吐くが、そこが気になったんだから仕方ないじゃん。何よ、豆腐が飛んでくるってパワーワードは。


 いや、うん。何で俺のプロフィールをそこまで知っているのかは謎なんだけどね? この年齢でストーカーは将来が心配だぞ。


「うん、まぁそこらへんの説明を含めて最初の方にやるつもりだったんだよ」


 そう言うと、少年はどこから取り出したのか全身鏡を……全身鏡!?


「細かいことは気にしないの。それより、自分の姿でも見てみなよ」


「?お、おう。わかった」


 毎日のように見慣れている姿を、何故今確認せねばならんのだろうか。

 そう思って目の前に出された鏡に自身を写してみる。


 当然ながら、そこにはいつも見慣れていた黒目黒髪のそこそこ顔立ちの整った俺の姿が……



「……ん?」


 なんか、光の玉みたいなものしか写ってないんですが?

 あれかな、マジックミラーみたいなものなんでしょうか。


「いや、君だよ、それ」

「ハッハッハ、またまた」

「マジだけど?」

「ハッハッハ……え、マジで?」

「うん」

「……」


 改めて鏡に写った姿を見る。が、完全に球体である。見方によってはゴールデン。光ってるしね。


 そっかー、これが今の俺かー。


「……よし、面倒だから考えるの止めよ。つまるとこ、今までの話全部本当ってことでいいよね」

「ある意味、そこでそう開き直る君はすごいよ」

「ここで慌てても疲れるだけだしな」


 でもあれだな。本当に死んだ原因が豆腐ってことなら、何故そこで豆腐だったのだろうか。

 確か、それ含めて説明をしてくれるって話だったが…

 どうなのよ?と視線(今は目がないけど)を送ると、少年(天使)はやっとかと呟いてどこからか紙を取り出した。


「まぁ事の次第は最初に言ったんだけど、聞いてなかったみたいだからもう一度説明するよ。まぁ、簡単に言えば、本来君たち人間の魂を管理している神様がちょっとしたミスをやらかしてね。残念なことにそのとばっちりを受けたのが君だったのさ」


「……ミスって、豆腐か?」


「そ。で、本来完璧な存在としてあるはずの神様がそんなミスをするから、僕が『それすらできないのなら、神様なんて辞めてしまえ!』って言ったんだけど、そしたら神様が拗ねちゃったみたいでね。『ならてめぇやってみろよっ!?』ってことで僕がここにいるのさ」


「口悪いのな、神様って。で、君は何をするんだ?」


 この少年が天使だというのであれば、本来神様ってのは上の存在に当たるはずだ。

 会社でいえば、社長と平社員的な?

 社長に直で文句をいう平社員……そう考えると、すげぇなこいつ。逆らったら面倒事の予感しかしないから俺だったら絶対やらんわ。


「本来なら、こういったミスも神様が何とかするんだけどね。神様はそんな気じゃないみたいなんだ。まったく、だから大昔にも……いや、まぁこれはいいか。とにかく、僕も命令されたからには全うしなくちゃいけないんだなこれが」


「なんか、大変だな」


 俺が同情の目を向けると、天使の少年は「そうでもないよ」と言って笑って見せた。


「このフォローがうまくいけば、僕も下級の神くらいにはなれるかもしれないんだよ。もっとも、君の働き次第なんだけどね」


「俺の?」


 そ、といって、取り出していた紙に視線を写す少年。

 暫くその紙を見ながらふむふむと頷くような仕草をしていたが、全部読み終えたのかよしっという掛け声と共にその紙が消える。


「まぁよくある話、異世界に転生ってやつかな。こちらの勝手な都合なんだけども、同じところでってのはできないからね。そこは謝ろう。それでもって、これもよくある話なんだけど、なにかひとつ特典を……」

「俺をお世話してくれる綺麗な女の人」 

「うん、無理」


 即答したらすぐに拒否されたでござる。

 なんだそれ、解せん。

 異世界で憧れのヒモ生活とか何それ最高だったのに、あっさりと希望を砕かれた。


 むぅ、と俺不機嫌ですアピールをしてみるが、少年は苦笑いするのみで、仕方ないでしょー、と話を続ける。


「神様ならそれも出来たかもしれないんだけどねぇ。見ての通り僕はただの天使だ。そんな力は持ってないんだよ。だから、与えられるものも大したものじゃないんだ。ごめんね」

「そっすか……」


 一軒家に綺麗なお姉さん系の嫁さんをもらって、俺は悠々自適のヒモライフを送りたかったんだが。

 

「まぁ、君の努力次第ではできないこともない」

「えぇ…面倒だな。もっと、楽に、かつ手っ取り早くヒモになれないの?」

「……発言だけ聞いてると本当にどうしようもないやつだね、君は。……まぁいいや。とにかく、大したものは与えられないんだけど、君に適正の高い能力、というか魔法がある。それを君に与えよう」


 あれ、俺に選択権はないんですか?と思ったのだが、言う前にないよ、とのこと。

 ミスで殺された割に扱いが雑な気がする。

 が、ここでとやかくいうのも面倒だし、天使の少年曰く、ゴミみたいなものじゃないらしい。

ならいいか。


「向こうについたら、手紙を送っておこう。あとの説明はそれを見てね。あと、ヒモになるのは構わないけど、出来れば僕のお願いも聞いてくれると嬉しいな」


「? 今ここで話せばいいだろ?」


「残念だけど、そこまで時間がないんだ。何せ僕はただの天使。この場所で君の存在を保たせるのって、結構疲れるんだよ」


 ちなみに、普通なら少しここに留まるだけで俺の存在はバンされるらしい。

 ……ここ、そんなに危険な場所だったのね。何て場所に呼んでやがる。



「それじゃ、あとのことは頼んだよ」


 その言葉を最後に、少年の姿が霞んでいく……いや、これ俺が消えかかってるパターンですわ。

 ゴールデンボール状態の俺の体が、下の方から徐々に消えている。


 次に目覚めたら天使の言う異世界とやらなのだろう。


 なら、願わくば

 俺が最も楽だと思えるような、そんな人生を送らせてほしい。





感想、ご意見、評価待ってます。





そうだよ、媚び売ってんだよ悪いか!

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