プロローグ
少年は1人の少女を背負ってひたすら何もない道ーー《砂漠》のように360度、砂ではない砂よりも細かい粒が敷き詰められた荒野を歩いていた。
一体どれぐらい歩いたのだろうか。感覚が麻痺して今まで気にもとめていない。
背中で眠る少女ーー薄紅色の髪の毛に白い肌。何と言っても彼女の整った顔立ち。美女、というよりも美少女という言葉が世界で1番似合うといっても過言ではない美貌の持ち主であった。
ーーめんどくせぇんだよ。
そんな美少女を背負ってるにも関わらず少年はただただ面倒だという感情だけが頭を支配している。
それならばその少女を置いていけばいいはず、しかしそれは少年の性分とも言える部分であり、置いていくことなど頭の隅にもなかったのだ。
だが少年の体力は限界に近づいていた。心身ともにボロボロでもう歩く力も残っていないはずだった。
それでも少年は歩き続けた。歩き続けることが曲がりなりにも少年の恐怖心を和らげる唯一の方法であったから。
その時地面が揺れ、地響きをさせた。
ーー何かが来る。
そう直感した少年だったが、恐怖を前にして足を動かす力が残っていなかった。
そして少年の数十メートル先の地面が盛り上がりそこからツノの生えた魚、ではなく巨大ザメのようなものが現れ、
「ギャルァァァァァァァァ!!!!!」
ーーあー、詰んだ。
少年はサメの雄叫びを前に本日何度目かわからない《詰み》を悟った。
そしてサメは2人に襲いかかる。
その時、
「ギャルルルルル!!!!」
先ほどとは違う悲痛な叫びが響き渡った。
閉じていた目を開け前を見ると、
3つの塊が落ちていた。
否、サメが三等分されていたのだ。
「し、死んだの、か?」
しばらく様子を見ていたが先ほどまでの獰猛さは消え失せあたりには静寂が広がっているだけだった。
おそらく死んでいるのだろう。
そう思った瞬間少年は膝から崩れ落ち、地面に横たわる。
ーーもう、動けねぇ。
このまま死ぬのだろうか。そう思った瞬間、
少年の前に誰かが居た。
最後の力を振り絞りその人物の顔を見る。
女だった。
はっきりとは見えなかったものの、少年の背中にもたれかかる美少女と勝るにも劣らない美貌の持ち主。
最後の力を出しきった少年は霞ゆく意識の中で信じられない光景を目にした。
地面が一気に遠のく。飛んでいるのだと認識するのには十分すぎる判断材料だ。
そして少年は意識を失った。