2人
優しい嘘です。
題名を変更しました。
3章に突入します。
「大丈夫か?起きろ!」
赤髪の青年が荒々しく起こされる。しかし、そのやり方はモリヤマとは違っていた。
「テン、マ?」
「そうだ、オレだ。オメェ…覚えてるか?」
アカシにとって3度目の世界、その目覚めは過去2回とは違い前回共に生き残ったモモタ・テンマが目の前にいた。
『覚えてるか?』という言葉から察するにどうやらモモタにも前回の記憶があるらしい。
「テンマ、オレも覚えてるぞ。」
「オメェは何が起こってんのか…知ってんのか?」
「……オレもこれが3回目だ。わからないこともまだまだ多い。けど、一つ言えることは生き残って扉をくぐった人間は、記憶を引き継いだままタイムリープするってことだ。」
「マジ…かよ。」
信じられないという顔だ。何度でもやり直せると仮定していたアカシでさえ、未だに受け止め難い真実を無理矢理に受け入れたといった状況だった。
アカシの発言が真実だとすると、
ー アンタは覚えてないかもしれないけど、ありがとう。
あのスズヤの言葉が腑に落ちた。スズヤにとってあの回、アカシにとっての初めての回は2回目以降の世界だったのだ。そして、アカシはそれ以前に少なくとも1度死んでいる。
「あれは、オレがスズヤを庇って…死んだってことになるんじゃ……。」
自分がかつて死んだことがあるという、突拍子もない仮説が途端に現実味を帯びる。
「まさか、オレも何度も……何度も、死んだのか?」
「…そうだ。」
実際にアカシが見たモモタの死は1度だけ。しかし、アカシにとっての最初の回以前に、世界が繰り返されていたということがわかった以上、そう言わざるを得なかった。その現実を受け入れるしかなかった。
「キジマも、モリヤマも、ヤマブキも、シムラも、スズヤも、テンマも、オレも、みんな…何度も何度も死んでいたんだ。何度も繰り返していたんだ。」
口に出すと、えも言われぬ嫌悪感、怖気に襲われる。
当初、生き残れば終わりだと思われた世界には終わりがなかった。死ねば終わりだと思っていた。
しかし、死んでも世界は続く。続いてしまう。しかもそれはアカシが知らないところで、死んで記憶を失った『アカシ・ソウイチ』が進んでいくのだ。
「出る方法は今んとこねぇみてぇだが、オレ達が気づいてねぇだけでぜってぇどっかにあるはずだ!」
どこまでもポジティブな発言をするモモタ。根拠はなくとも彼には人を惹きつける不思議な力を持っていた。
「そうだよな…。それしか残された道はない。」
「ぜってぇ生き残んぞ、ソウイチ!」
「もちろんだ!」
生き残りを目指し、3度目のループを生き抜くことを2人は誓った。
ありがとうございました。