Hello New "You"
平日も更新したい、優しい嘘です。
基本的に土曜日曜に更新していく予定です。
「テメェ!よくもモリヤマをぉぉ!!」
叫びながらモモタが鬼に向かって駆け出す。
「それはキケンだ。モモタくん!」
鬼がモモタの体を薙ぎ払う。
「うわぁっ!!」
モモタの体が壁にぶつかる。
「モモタくん、生きてるかい?」
「あ、安心、しろ。生きて…るぜ。でも、動けそうに……ねぇな。」
シムラが鬼の攻撃を防ぎながら話す。
「アカシくん、闘えよ。立てよ。」
アカシが立ち上がる。しかし、その瞳に光は宿っていない。
ー 弱い、弱い。
頭の中に声が響く。自分自身の声だ。アカシの壊れた心をさらに掻き乱す。
「オレは弱い。」
ー 弱い、弱い弱い。
「誰も救えない。」
ー 弱い、弱い弱い弱い。
「こんなオレは嫌だ。オレはオレを殺したい。」
ー 弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い。
「死ねよ、オレ。誰も助けられないなら意味はない。」
ー さようなら、アカシ・ソウイチ。
心が完全に壊れた。
「ソウ、イチ?」
走り出す体。刀を振るう。鬼の左腕が宙を舞う。アカシだ。
「やるじゃん♪」
「……。」
「グオオオオォォ!」
「うるせぇよ。潰れろ!」
アカシが鬼の右目を貫く。
「ボクがトドメをさすっ!」
「まだ、終わらない……。」
鬼が声を絞り出す。鬼からもう2本腕が生える。前回とはまた違うことが起こる。
「ウソ、でしょ?」
増えた腕がシムラを捕らえる。
「アハッ、死んだわ。」
そして、地面に叩きつけた。
シムラが死んだ。しかし、アカシは眉一つ動かさず、鬼の左目も潰した。
「じゃあな。また次で遊んでやるよ。」
そのまま鬼の喉を引き裂く。
「ア、カァ…ァァァ……。」
声にならない音を発しながら鬼が絶命する。
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シムラの死体の傍にアカシが立ち尽くす。
「やっぱり、救えないのか?」
ー 違う。お前が弱かったんじゃない。
「もっとはやく鬼を殺してたら、シムラは死ななかったんじゃないのか?」
ー アイツが死んだのは油断したからだ。弱かったからだ。
「オレは強い。」
ー そうだ。強いから生き残った。死んだのはソイツらが弱かったせいだ。
「じゃあオレはどうすればいい?」
ー 見捨てればいい。この世は強い者しか生き残れないようにできている。
「そうだな。」
シムラの死体を一瞥し、壁の穴を目指す。
「行こうか、テンマ。」
「ソウイチィ、オメェ…なんか、雰囲気変わったな。」
「ああ、オレは強くなったんだ。」
やはりアカシの目には光が宿っていない。
モモタに肩を貸し、鬼が出てきた穴を進む。
ー 見捨てて、2人で抜け出せ。
脳内でアカシが囁く。
「考え直したんだが、それは無理かもしれないな。」
前へ前へ進む。
「強いヤツは全てを欲する。だから、オレも全員の命を欲する。何度でもやり直せるならな。」
以前のアカシならば、純粋に仲間の死を悲しみ、救うために全力を尽くしただろう。
しかし、今のアカシは本質から変わってしまった。芯にあった『助けたい』という感情を失った。ただ、強者ゆえに全てを欲しているだけである。シムラのように狂ってさえいた。
「さっきから何をブツブツ言ってんだ?」
「いや、何でもない。」
扉の前に辿り着く。
「次で終わらせてやるよ。」
砂時計のように繰り返す世界。死んだ仲間はさしずめ零れた砂。
その砂を取りこぼさないために何度でも繰り返す。自分を支えてくれたモモタと一緒なら、新しい、生まれ変わった自分ならそれが出来ると確信していた。
「この扉の先に次がある。」
『1』から『2』へと数字が変わった扉をくぐり抜け、再び地獄のような『最初』へと進む。
2章終了し、3周目のループへ続きます。
まだまだ続く予定なのでよろしくお願いします。