再会
優しい嘘です。
6話です。お願いします。
ホールに辿り着く。
「あぁ、生きてたんだぁ♪」
血塗れののシムラ・キリヒコと惨殺されたはやぁい鬼がいた。
「オメェ……、なに、やってんだ?」
「なにって、鬼を倒したんじゃないか。」
「いくらなんでもそこまでやるこたァねぇだろう。」
「敗者の如何は、勝者の自由さ。」
モモタの言葉もシムラの狂気に包まれた心には届かない。
「縄張り争いだったり、食物連鎖だったり当然の事じゃないか。そうだろう?敗者は縄張りを明け渡す、敗者は勝者に喰われる。敗者の処遇は勝者のもの。だったら、負けたコイツはボクのものさ。だからオモチャにした。キミが口出しできる問題じゃない。」
こんな異常な状況でなければ、シムラという人間は社会から排斥されていただろう。しかし、この状況では狂っているからこそ躊躇いもなく鬼を殺し、生き抜ける、『社会』適合者であった。
「わけわかんねぇぜ……。」
「ボクもキミとはソリが合わないかもねぇ。」
険悪な雰囲気だ。曲がったことが嫌いなモモタ、嬉嬉として鬼を傷つけるシムラ、この2人が打ち解けることはないだろう。
「とにかく、ボクのジャマするならキミもオモチャになってもらうからねェ。」
シムラはそう口にする。実際に鬼がなぶり殺されているところを見てしまった以上、彼は有言実行するであろう。
これ以上、敵を増やさないためにもアカシが話題を変える。
「シムラ、でかい方の鬼はどうなった?」
「キミが引き連れて出ていった後、戻ってきてないよ。」
前回とはまた、違う展開だ。いや、もしかすると前回同様、今すぐにでも鬼がホールに入ってくるのかもしれない。
「そうか、油断せずに行こう。」
ー ガラガラッ
突如ドアが開く。そして、
「やっと…見つけた。」
4人目の生存者、モリヤマ・エンが入ってきた。
「モリヤマ!オメェ生きててよかったぜ!」
「アニキ達も無事で嬉しいわ!」
モリヤマとモモタが肩を組む。先ほどまでの緊張が緩んだ。
「生きてるヒトが多いのは喜ばしいことだけど、オニをどうやってブッ殺すか、良案はあるの?」
「ある。このお札だ。」
モモタがお札を見せる。
「このお札には鬼の動きを止めるっつー効果があるみてぇーなんだ。」
「じゃあソイツをオニに貼って、ブッ殺すンだねぇ。」
「言い方が気になるがまぁそーいうことだ!」
「モリヤマ、鬼を見てないか?」
「見てないなぁ。」
「来るのを待ってても埒があかねぇ。探しに行こうぜ!」
「よし、じゃあソイツを探しにしゅっぱーーつ!」
「行こか、アニキ!」
モリヤマがドアに向かって走り出す。
「……は?」
ドアが開いた途端モリヤマの体が宙に浮く。
「クソッ、離せぇ!!」
鬼がモリヤマの体を掴み、ホールに入ってきた。
アカシの体に怖気が走る。あの黒鬼の幻視が見える。恐ろしい。腰が抜けた。
「ソウイチ!?」
「こ、怖い……」
「まさか、あの鬼がトラウマになっちまったのか?」
つよぉい鬼に黒鬼が重なってしまう。頭から消し去ったとしても、心を押しつぶされたあの感触は忘れられない。
「邪魔だよ、コシヌケ。」
シムラが脚を振り抜く。
「…カハッ!」
無様な声を漏らしながらアカシの体が吹っ飛び、壁に激突する。
「戦えないならせめて、死なないようにしてよ。後でボクが殺してあげるからさァ!」
「モリヤマ!助けてやるからなぁ!」
「こいつ、チカラ入れてきよった!!」
骨の軋む音が聞こえる。
「い、痛ぁぁぁぁい!!」
「このお札で!」
モモタがお札を鬼に貼り付ける。が、鬼の動きは止まらない。
「どうしてだ!?偽物か!?」
切り札を失った。
モモタ、シムラが腕に斬りつけるが、意に介せず力を加え続ける鬼。
「嫌やっ!…死に、たっ!!」
凄惨な音と血飛沫と共に、モリヤマが肉塊と化す。
同時にアカシの中で何かが弾ける音がした。
次で2章終わる予定です。では、次回のお話でお会いしましょう。