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第3の鬼

2日ぶりくらいですね。優しい嘘です!

2章もそろそろクライマックスです。よろしくお願いします。

鬼攻略の鍵を握っていたはずのスズヤ・アイヒが腹部を貫かれ、死んでいる。前回を含め、体感時間でおよそ4時間の間に5回の死を目撃したアカシ。しかもスズヤの死を目撃するのは2度目。自分を救ってくれたスズヤを救うことができなかった自分に嫌気がさす。


「モモターー!ヤマブキーー!スズヤが見つかったー!!」


取り決め通り2人に知らせる。が、不可解な点が多い。アカシが知る限り鬼は2体だけのはず。はやぁい鬼はシムラと戦い、つよぉい鬼はこの建物には入れないはず。とすると、スズヤを殺した者の正体は……


「きゃあぁぁぁ!!!」


アカシが最悪の結論に至ったのと同時にヤマブキの悲鳴が聞こえる。それがその結論を裏付けてしまった。

急いで入口へと走る。そこには、真っ黒な鬼と床に横たわったヤマブキだったものがいた。


「やっぱりか……。」


アカシに背を向けた黒い鬼。


ー 今なら気付かれずに倒せる……!


ジリジリと黒い鬼に忍び寄る。しかし、黒い鬼が振り返り、アカシと目が合う。とてつもない恐怖で背筋が凍りつき、金縛りにあったかのように体が動かない。建物に入ってからの謎の恐怖感の正体がこの鬼だとハッキリ理解できた。

唯一自由な眼球を動かし、状況を把握する。アカシと対峙した鬼は真っ黒な鬼。言葉では言い尽くせないほど黒鬼の顔は恐ろしいものであった。憎悪に燃え上がる双眸、絶望感を抱かせる笑顔を浮かべた口。膝が震え、歯があわず、冷や汗も涙も止まらない。声すら出せない。

黒鬼が1歩ずつ歩み寄る。その歩みと同じ速さで死が近づいているのがわかった。黒鬼への恐怖と、死の恐怖、恐怖の相乗効果で頭がおかしくなりそうだ。


ー ひと思いにやってくれ!!


そうアカシは心から望んだ。この恐怖からはやく解放して欲しかった。ヤマブキやスズヤはこんな気分だったのだろうか。


ー 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


アカシの中で何かが壊れた。

アカシが死を確信し、絶望した刹那、


「でゃぁぁぁぁぁぁ!!!」


叫び声と共に、黒鬼が一刀両断される。


「大丈夫か?助けに来たぜ、アカシ!!」


「モモ、タ……。」


「ハハッ、ヒデェ顔してやがる。」


そう言ってモモタはハンカチを差し出す。なんとか感謝の言葉を絞り出し、それを受け取り顔を拭く。


「キジマが死んでた。」


モモタから告げられた、アカシをさらに追い詰める現実であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




未だに震えている体に鞭打ち、建物の外に出る。見た瞬間、自由を奪われるその鬼は、他の2体とは本質から異なっていた。シムラが、倒すことが確定しているはやぁい鬼、動きが遅く、逃げることが可能なつよぉい鬼、そして、エンカウントが即、死に繋がる黒鬼。


「アカシよぉ、中でこんなもん見つけたんだけど。」


モモタが見せてきたものは、切り札同然の『お札』であった。

謎が一つ解けた。アカシには前回のモリヤマ、キジマの死が、件の黒鬼のせいだと分かった。この2人に関しては逃走に徹すれば、つよぉい鬼から逃げ切ることは可能だろう。しかし、2人は死んでいた。

推理をすすめる。スズヤは、前回お札を手に入れていた。そのお札はアカシ達が探索した黒鬼が出現する建物の中にある。しかもこの戦いのクリア条件が鬼の全滅だとすると、黒鬼を倒さなければならない。

となると、1人での探索はほぼ死を意味する。お札について知っていた彼女が1人で建物に行くはずはない。信じたくはない。が、こう仮定してしまうと辻褄が合う。



スズヤが2人を囮にした……そして、今回も……



アカシには『スズヤ・アイヒ』という人物がわからなくなってきた。自らの身を呈してアカシを救った彼女、仲間を見捨てた彼女、どちらが本物の『スズヤ・アイヒ』なのか。


「アカシ、顔色が悪ぃぞ。まだ、休んどくか?」


モモタが声をかける。


「大丈夫だ。」


本当は恐怖が抜けきらないことと、スズヤの行動への困惑で精神的にボロボロであるが、強がってみせる。


「嘘つくなよ。俺には全部お見通しだぜ。」


「……。」


「無理にとは言わねぇが、話してみねぇか?」


アカシの胸の奥から懐疑、困惑、失望、虚無……挙げればキリがないほどとめどなく溢れてきた。スズヤの事を話しても、前回のことを知らないモモタには理解されないだろう。


「話してラクになることもあるだろ?なぁ?」


「ラクになる?」


モモタが弱ったアカシに手を差し伸べている事は理解できていた。しかし、擦り切れたアカシは自分が弱っていることを認めたくなかった。


「話して何が変わるんだよ!?今の状況も!死んだ3人も!……オレが弱かったせいだ。そのせいで、みんなが死んだ。」


モモタにぶつけた。ぶちまけた。


「オレはわからない……。信じたかったのに、揺らいだんだ。信じられなくなった、わからなくなったんだよ!信じたかったのに……、信じたかったのによぉ!!」


全部吐き出した。無意味だとわかっていた。モモタにぶつけて、無駄に混乱させて、状況は、関係は悪化するだけだと。


「俺にもわからねぇな。でもよぉ、信じてぇものを信じりゃあいいじゃねぇか。」


「……!」


アカシにとって信じたかったもの。それをモモタは肯定した。


ー 信じたいものを信じる。


アカシを助けてくれた、スズヤを信じることに決めた。


「……まだ、完璧に割り切れたわけじゃない。けど、ありがとう、モモタ。お前のおかげで吹っ切れたわ。」


また助けられてしまった。


「まだ調子悪そうだなぁ?」


「そうかもしれないなぁ。」


アカシは、精神的に余裕がでてきた。


「いいんだぜ?俺に全部任せても。ヒーローは1人で十分だからな!!」


思わずアカシは吹き出す。


「なっ、なに笑ってんだよ!?」


今のアカシにとって『モモタ・テンマ』という存在は単純に心の支えになった。

寄りかかっても折れない彼の強さ、底抜けに明るい性格、全てに救われた。今は悩む時ではない、進む時だ。


「まぁオメェが立ち直ったんならいいけどよ……」


照れくさそうに彼が頭を搔く。


「じゃあ行こうか、テンマ。」


モモタへの信頼が、アカシに自然とそう口に出させていた。


「足引っ張んじゃねぇぞ、ソウイチ!」


短い時間であったが、信頼が築き上げられた。その信頼を失わないために、今度は自分がみんなを助けるために、アカシはホールに向かい走り出す。

はい、5話でした。

前書きと後書きには何を書くべきかよくわかりません。教えてもらいたいです。

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