Re:始まりの始まり
3話目でございます。1話の前書きで言うべきだったのですが、題名の意味は砂時計です。
「おーい、生きてるか?」
そう言いながらうつ伏せに倒れる青年を揺り起こそうとするオールバックの大柄の男が1人。優しい口調とは裏腹に、気絶している赤髪の青年、アカシ・ソウイチを持ち上げ揺さぶるというやや乱暴な起こし方だ。
「全然起きないねぇ。人工呼吸いっとく?」
「そうやな。」
みかん色のワンピースを着た少女、ヤマブキ・サツキの軽口を真に受け、モリヤマ・エンはマウストゥーマウスに移行する。唇が重なる直前、
「うわぁぁぁ!!」
アカシ・ソウイチの最悪の目覚めが、再び訪れた。
「何が起こってんのか、全然頭がついていけねぇぞ。」
アカシ・ソウイチは困惑していた。つい先刻に死んだはずのスズヤ、シムラ、モモタ、ヤマブキ、キジマ、モリヤマが生きていたのだから。
だが、あの出来事が嘘だとは思えない。ヤマブキの死体、モモタが殺される瞬間、スズヤが身を呈してアカシを守ったこと、その血の感触、シムラが自ら死を選んだこと、全てが鮮明に記憶に残っている。
ー まさか、タイムリープ?
そう考えると色々説明がつく。前回同様、モリヤマが自己紹介を提案したこと、自己紹介が右回りで行われていること、それぞれのセリフが一言一句変わっていないこと。一つだけ前回と違うことを挙げるならば、スズヤがアカシにお礼を告げなかったことだ。
「アンタの番っスよ。いくらそこのモリヤマちゃんにキスされかけたからってそんなクヨクヨすることないっス!」
「悪い……、考え事してた。」
キジマの声で我に返り、自己紹介を始める。
「オレはアカシ・ソウイチ。よろしく。」
手短に自己紹介を済ませる。前回同様ならば、自己紹介が終われば再び鬼がやってくるはずだ。もう一度あの悲劇をやり直せるのならば、目的はたった一つ。
ー 全員が生き残ることだ。
そのためには、1番最初に死ぬと思われるヤマブキを救うことが前提条件だ。はやぁい鬼とシムラが戦い、勝利することは前回同様の結果となるだろう。とすると、ヤマブキを殺したのはつよぉい鬼だということがわかる。1度つよぉい鬼と対峙したアカシならば、鬼を引きつけることが可能だろう。
「なんか……シムラちゃん残念っスね。」
「なんとでも言うがいいさ。」
前回同様、けたたましい音が鳴り響く。
「な、なんや!?」
「うるせぇぞ!!」
アカシは、周りを見渡す。どのタイミングで刀が出現するのか。
「キミ達は桃太郎。鬼を倒してね。」
2回流れる声のうち始めの1回が終わった。まだ、刀は出現しない。
「キミ達は桃太郎。鬼を倒してね。」
2回目の声が止んだ瞬間に、何もない空間から刀が出現した。
「走れ!」
前回のスズヤのように刀を手に取り、叫ぶ。途端、衝撃音が響く。その正体を、アカシは知っている。
「また会ったな……。」
はやぁい鬼と、つよぉい鬼のお出ましである。
アカシ・ソウイチの戦いが、再び始まる。
2章が始まりました。1章と比べるとだいぶ長くなると思いますが、お付き合いください。