プロローグ
・ゆっくり更新
・ゆるーく展開
エーベル・スフルベン
それがこの世界を救う者の名だ。
勇者とは、その世界を救う一筋の希望……いや――願望。
魔族が巣くうこの世界では日常的に百から千の数の人が死を迎えている。人間は数を減らし悪魔は益々増える。
クシャレビア大陸の偏狭で産声を上げた赤ん坊が後に世界を救う勇者へと成長する。
17年の時を経て赤ん坊は戦場へと赴く。その時には人間の住む領域はとても狭くなっていた。
人間が住む場所、フラウメース・ボーラ・テシュッツの三つの街で、防衛しているグロークス騎士団は人間の防衛の要。
そこに入隊したエーベル・スフルベンはその実力を存分に発揮し魔族を倒し戦線を押し返していく。
やがて、その資質が勇者のそれであると人々が謳い彼はその声に応えた。いや、応えようとした。
戦って戦って戦って、戦って戦って戦って戦って戦って、戦って――――
そして、ようやく大陸の中部まで人の手に取り戻すことが叶った。
その頃にはエーベル・スフルベンに妻となる者も子となる者もいて、毎夜妻に告げられる言葉は「生きて戻ってきて」というものだった。
戦ってばかりだったその人生の終わりを告げる足音を、聞き逃すほどそればかり聞いていた。
子供が5歳を迎えた頃、彼は自分の変化に気付いた。
一撃で魔物を蹴散らし魔族を切り捨てる。
この世界にもう彼に敵う物はいなかったのだ。
気が付けば人の世は大陸の8割ほどを支配し、エーベル・スフルベンが一国の王となった頃だった。
魔王の誕生――
若き魔王は次々と人間の城を落として行った。
それは戦線を押し上げるというものではなく、ただただ力で中ほどまで突っ込んでくるというのが当てはまる。戦術には程遠いもの。
そして、魔王はエーベル・スフルベンと対峙する。
魔王ゆえに、勇者ゆえに――
その戦いはまさに神と神との戦い。硬い外殻の拳で勇者の剣を受けるとその剣圧で周囲の人や魔物が吹き飛ぶ。
剣で往なした拳が地面に当たると大地が砕け魔物や人が落ちていった。
数時間の戦いの後エーベル・スフルベンの懇親の一撃が魔王の首を刎ねた。
勇者の勝利――が、その時首の無い魔王の体がその執念だけで拳を振るい勇者は避けられず、全身が砕け散るほどの衝撃を受けた。
長い長い戦い、空から落ち始めた雨が体に落ちる。目を開いたとき意識は宙に浮いていた。下を見下ろすと手足が潰れた自分の体が目に入る。
おそらく即死――ならばどうして雨なんか――そう思い上を見上げると降っていたのは雨ではなかった。
妻の涙――――。
棺桶に横たわる自らの上ですすり泣く妻は、「生きて帰って来てって言ったのに…」と繰り返し言っていた。
何度も何度も――。
・高性能なPCがほしい
・あとバナナ凍らせて食べるとなかなか――硬い!