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第八話「怖い話」

それはある暑い夏の夜の出来事じゃった。

その日は夜だと言うのに30度を超える熱帯夜でな。

ある子供が好奇心で夜の学校に訪れおってな、夜の学校の廊下は

不気味なほど静かじゃった。

歩けばギシ、ギシと木の床が軋む音が響く。

その時じゃ。


「……あつい」


どこからとも無く声が聞こえてきたのじゃ。

その子供は声のする方向へと歩いていく。



「……あつい……あつい」


そして、ある部屋の前にたどり着いたのじゃ。

その子供はそーっと、扉を少しだけ開けて中を覗く。

すると、中は異様な熱気が立ち込めており、その中央に一人の男がおった。

そこからなにやら粘つくような音が聞こえてくる。

子供は気になりもう少しだけ扉を開く、すると。

「ガラッ」と思わず大きな音をたててしまったのじゃ!

中にいた男はその音に気づき、子供のほうを振り向くと!


「み〜た〜な!?」


奴の口の周りは赤く染まっておった!

そう! 奴はキムチ鍋を食っておったのじゃよ!



「どうじゃ? これがわしの怖い話じゃ」


そうして、一旦俺は部屋の電気をつける。

今のを話していたのはモンタ議長だ。


「す、凄い怖かったです」

「り、リーシェ、一応聞くけど、どこら辺が怖かった?」

「えっ? だって王様、真夏の夜にキムチ鍋食べてるんですよ!?

 しかも一人で! 怖いじゃないですか!」


あ〜、なるほど。言われてみれば確かに怖いかも。

リーシェは肩を震わせながらまだ恐怖の余韻に浸っている。


「ゼロはどうだっ……おい」


俺のとなりに座っていたゼロは白目をむいて気絶していた。

お前、どれだけ怖かったんだ?


「ほっほっほ、わしの口もまだまだ衰えておらんのぅ」

「……さいですか」


俺たちは今、広間に丸テーブルを置いて周りを囲むように座っている。

テーブルの上にはろうそくが何本か置いてある。


「でも王様、これって結構いいアイディアですね」

「そ、そう?」


俺たちは今、互いに持ってる怖い話を言い合っている。

どうしてこうなったかと言うと。





--今日は一段と暑い日だった。

リーシェと俺が暑いときはどうするのかと、他愛の無い話をしていて、俺の世界では

怖い話をして涼しくなる方法があるんだよ? とか言ってると。

「じゃあ、ゼロやモンタ議長も呼んで今夜やってみませんか?」

と言うわけでこういうことになってしまった。





「じゃあ、次は……」

「あ、はい! 私の番です」

「じゃあ、リーシェ」


そうして、再び電気を消す。

テーブルの上にあるろうそくに火を灯す。

ろうそくの明かりが不気味に俺たちの顔を映し出す。


「あれは、一昨日の事でした」


お、一昨日!? めちゃくちゃ最近だね!?


「夜にどこからか何か物音がするので、私が廊下に出てみると」

「で、出てみると? な、なんだい??」

「そこには点々と血の跡がついていたんです」

「……なかなか怖くなってきたのう」


ん? あれ? もしかして……。


「私がその跡の先をたどると、洗面台までつづいてました。

 そしてそこに何と! べっとりと血のついたタオルが!」


……一応最後まで聞いておこう。


「そして、そのタオルを見つけた後に再び物音が! そして私は

 すかさず廊下にでてみると……なんとそこには、上半身に血がついた

 亡霊の後ろ姿が! そして、その亡霊は何処かにスーっと消えていったのです!

 これが、私の怖い話です」


そして、リーシェは部屋の明かりをつける。


「どうでした?」

「凄いスリリングな話じゃったわい」


隣のゼロはまたもや魂が抜けていた。

……おいおい。


「いかがでした? 王様」

「あ、うん、凄い恐かった」

「本当ですか?」

「う、うん」


すまないリーシェ、その亡霊、実は俺だ。

本当の話はこうだ。


俺はその日、夜中に少しおなかが空いたので何か食べるものを探しに台所へと

向かっていた。

眠たい目をこすりながら冷蔵庫を開けて、色々探していると、

トマトジュースが目に入ってそれを振って飲もうとする。

開けた瞬間、トマトジュースが噴射して俺の全身は真っ赤っかに。

たまらず洗面台に走ったために廊下に点々と跡が残ったのだろう。

その時拭いたタオルをリーシェが見たタオルだ。

そして、部屋に戻っていく俺の姿をリーシェが見ていたというわけだ。

勿論、この後パジャマを着替えた為、リーシェが知る由も無いわけだ。


「じゃあ、次は誰ですか?」

「えっと、ゼロは……無理か」

「となると、王様ですか?」


う〜ん参ったな。怖い話なんか無いぞ?

俺は必死に考える。


「王様、もしかして怖い話無いんですか?」


むっ、そういわれると何が何でも出したくなるな。

その時、ふとある出来事が頭をよぎる。


「おい、ゼロ起きろ。今から話するんだから」

「ん? あっああ……ぼ、ぼかぁもういいよ」

「何言ってるんだ、最後だから聞いていけよ」


俺の話は怖いと言うよりも、フッフッフ。

俺は心の中で不敵な笑みを浮かべていた。

そうして、俺は電気を消す。


「さて、実は俺の話はごく最近の話なんだが……」

「ほうほう」

「王様、早く、早く」

「実は、俺は密かにアリシュレードのお菓子で有名な「ロッテ」と言う

 菓子店に行った時があった」

「OH〜! あの有名なロッテかい!?」


おっ、今回はゼロも話に乗れているようだな。


「私も行ったことあります。あそこの苺マフィンっておいしいんですよね〜」

「ほっほっほ……そうじゃな」

「俺はそのロッテに早朝から並んである商品を買ったんだ」

「ある商品だって?」

「そう、その商品とは「スペシャル苺ロールケーキ」!」


その商品名を聞いた三人はさぞかし驚いていた。

ふっふっふ、それもその筈。なぜならそのロールケーキは一日5個限定と言う

超レア商品なのだからだ!!


「そ、それで買えたのかい!?」

「ふっ、城から3時間かかる距離を歩き、ロッテの前に並んだのは何と

 早朝の3時だ……ロッテの開く時間は10時。俺は当然の如く

 買えたのさ」

「そ、それは、よ、良かったですね王様!」

「だが、ここからが問題なんだ」

「どうしてだい? 魔王君」

「なぜなら、俺はそのロールケーキが食べれなかったからさ!」


広間に衝撃が走る。

外では突然雨が降り出す。


「ど、どうしてなんじゃ?」

「俺は買った後誰にも分からないように冷蔵庫の最奥に入れて、

 更にダミーの商品を前に置いて完璧にガードしていた……にも関わらず、

 俺が食べようとした時には既に消えていたのさ」

「そ、それは多分、幽霊さんが食べたに違いないですね!」


まぁ、突っ込みたい所だがここは抑えよう。


「俺の怖い話はここからなんだ」

「えっ?」

「実は……この中に犯人がいるって事だ!」


突然、外で雷鳴が轟く。

皆が俺の方を向く。


「そ、それは本当なのかい金田一……じゃない、魔王君!?」

「ああ。俺の推理が正しければ間違いない」

「だ、だれなのじゃ!?」

「ゆ、幽霊さんですよ! 幽霊さん!」


むぅ、犯人はいまだシラを切る気ですか……なら。


「リーシェ、リーシェ」

「なっ、なんですか? 王様?」

「口のところに食べかすが」

「な! なにを言ってるんですか王様! 騙されませんよ!

 大体、あれは1週間も前……あっ!」


フッフッフ、俺は密かに買いに行ったと言った筈。それを知っている者こそ犯人!

明らかにバレバレだったが、ついに正体を出したな!

この、苺好きのリーシェさん!


「ち、ちがうんです王様! 本当はちょっとだけで済ませようとしたんですけど、

 こう……おいしくて……その」


慌てて言い訳を述べるリーシェ。

むぅ、本来なら可愛くて許すところだけど……物が物だけにもう少しからかってみる。



「ほほぉ〜、あんなに苦労して買ってきたのに、全部! 丸ごと!

 食べたわけなんだ〜」

「あ……あう」

「そんなんだから、リーシェ太るんだよ……な〜んてね」


瞬間。場の空気が凍りつく。……あれ?何で?

ゼロとモンタ議長は口をパクパクさせている。


「……んふふふふ」

「り……リーシェ?」

「ええ、そうです、私がロールケーキを食べました」


はっきりと断言するリーシェ。おや? 以前にも感じた寒気が。

その時、窓の外で恐ろしいほど大きな雷が!

暗い室内を雷が一瞬明るくする。

その時、俺が見たものは。


ギャー! リーシェの影に角が生えてる! 生えてますよ!?

俺は即座に、自分の命の危機を悟った。


「そうですよね、私も分かっていたんですよ? このままじゃあ太るの……」

「ごめん、許して、僕が悪かったです。言葉のアヤです」

「王様? どうしたんですか? 私は怒って無いDEATHよ?」


怒ってる! 絶対怒ってる!

無意味に文字変えてる所あるし!


「そういえば知ってますか王様?」

「な、何を?」

「嘘を暴かれた犯人は、力の限り抵抗するって……」


リーシェは俺の方を見て指を鳴らす。

それ抵抗言わない! 暴力だから! もしくは逆切れ!

リーシェのその姿を見るや否やそそくさと退散するゼロとモンタ議長。


「「じゃあ、後は二人で仲良くしてね〜……お休み」」


なんて言って帰っていった。


「王様、たーっぷりと抵抗させていただきますね?」

「イヤー!!」





そうして、しばらくの間俺の叫びが城中に響く。

ああ……すごく怖い話でしょ?


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