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第七話「祭り」

水着コンテストが終り、俺とリーシェはそれから何事も無く過ごしていた。

まぁ、最近が騒がしすぎただけだけどね。

ある日、俺とリーシェが街に買い物に行った時だった。

その日は街が異常な盛り上がりを見せていた。


「なぁ、リーシェ」

「はい? なんですか?」

「何だか今日は街が騒がしいみたいだけど?」

「そうですね……あっ! あれじゃないですか!」


リーシェはそう言って指差す。

指差した所には、壁に張り紙が張ってあった。


「何々? 今日は『祭り』の日です?」

「あっ、そうでした」


リーシェは思い出したように手をぽんと叩く。


「今日は山の上で祭りがあるんでした」

「えっ? 何の祭り?」

「それは……えっと……忘れちゃいました」


てへっと、舌を少し出して誤魔化すリーシェ。

くう〜、可愛いから許す! 


「祭りか……」

「あの、王様」

「ん?」


リーシェが顔を少しうつむき加減で話して来た。

どうしたんだろ? なんかモジモジしてるけど?


「何? リーシェ」

「よ、良かったら! 祭りに行きませんか!?」

「ん? ……うん、丁度俺も行きたかったんだ。リーシェと一緒なら是非喜んで」

「本当ですか?」

「勿論。俺の方が頼みたかったぐらいだよ」


リーシェの顔がぱぁっと明るくなる。

うっ、その笑顔は眩しすぎる。

そうして、リーシェと俺は夜の祭りに向けて城に帰った。


そして夜になり、俺とリーシェは山の上の祭りに向かった。


「うわ〜、色んな出店が出てますね」

「うん、そうだね」


祭りの会場では溢れんばかりの人が歩いていた。

無邪気に走り回る子供に、食べ物を売る大人。

泣いている子供もいた。


「懐かしいな〜」

「あれ? 王様の世界では祭りしないんですか?」

「いや、やってるけど、こんなに盛大なものは年一回あるかどうか」

「じゃあ、今日は楽しみましょうね王様」


リーシェがぐいぐいと俺の手を引っ張る。


「うわっ!? ちょ、ちょっとリーシェ?」

「ほら、早く行きましょう王様!」


今日のリーシェは凄く元気だな?

やっぱり、祭りが楽しみだったんだな。

そうして、初めの出店に向かうと。


「はい、いらっしゃ……」

「……よ、よう」


よく知る顔のお方が焼きそばを売っていた。

そのお方は俺たちの方を見るとプルプルと肩を震わせる。


「な、何をしてるんだ君たちは!」

「いや、祭りを楽しんでるだけだよ?」

「ぼ、ぼかぁ、君たちがデートしてるようにしか見えないけど!?」

「な、何言ってるんだよ!? 俺たちは純粋に祭りを楽しみにきてるだけだよ!

 なぁ! リーシェ!?」


リーシェに問いかけると、なにやらボーっとしていた。

?? どうしたんだ? 今日のリーシェは?


「リーシェ?」

「えっ? あ、は、はい!」

「どっちにしろ、ぼかぁそんな事認めるわけにはいかないね!

 そういうわけでこの出店はヨネさんに任せて、僕も一緒に行動

 させてもらうよ!」


そうして、結局ゼロも一緒に行動するハメに。

いつもながら無茶苦茶な理屈だな。

後、ヨネさんって誰だよ?


そうして、何時ものメンバーに揃ったことで出店を見て回る。

射的にくじ引きに綿飴、懐かしいな〜。


「そういえば、ゼロ」

「ん? なんひゃい? まおうふん」

「……とりあえず、そのイカ焼き食ってくれ」

「ん、それでなんだい? 魔王君?」

「ゼロはこの祭りが何の祭りか知ってるか?」

「はっは〜、この僕にとってそれは愚問だね。確か……」

「確か?」

「……あれ? 思い出せない」


てへっと、舌を少し出して誤魔化すゼロ

くあーーー! 許さん、絶対許さん! 

貴様のその行動は万死に値する!



結局、ゼロもリーシェも何の祭りか分からずじまい。

まぁ、祭りって楽しいから何の祭りか分からなくてもいいか。

そうして、大体出店も見て回った後。


「それじゃ、帰りますか? 王様」

「あれ? 花火とかは無いの?」

「? 花火?」


リーシェとゼロが不思議そうな顔で俺の方を見つめる。

おや? 祭りがあって花火が無いのか?


「花火って何だい? 魔王君」

「花火というのは、夜空に打ち上げる火薬玉かな?」

「へ〜」


う〜ん、アリシュレードには無いのか。

仕方ない、花火が無いのなら帰るしかないか。


「それじゃあ、帰りますか?」

「うん、そうだね。それじゃあ……あれ?」

「どうしました? 王様」

「いや、財布が無いんだ……」

「えー!?」

「ごめん、リーシェ先帰ってて!」

「ちょっと! 王様!」


俺は急いで来た道を戻る。


「まずいな、確かトイレの前まではあったから」


俺は出店の通りから離れて人気の無い暗い林の方に入る。



「あるとしたこの辺なんだけど……どわっ!?」


俺が探していると、突然後ろから凄い衝撃が走る。

その衝撃で俺は前に思いっきり倒れる。


「な……ななな?」


倒れた俺の背中に誰かが乗っている。

俺は顔を起こして、背中を見ると。


「こんばんは! また会ったね、お兄ちゃん」

「う、ウィル!?」


ウィルはひまわりのように明るい笑顔で俺に話しかけてきた。


「う、ウィル悪いが降りてくれないか?」

「あっ、ごめん」


ウィルに退いてもらうと、俺は服に着いた泥をはたく。


「ねぇ、お兄ちゃん一緒にあそぼ!」

「あー、悪い、ちょっと探し物してるんだ」

「探し物?」

「コレくらいの茶色の物知らないかい?」


俺は手で大体の形と大きさをウィルに示す。

それを見たウィルは。


「あっ、もしかしてこれ?」

「! そう、それだよ! 何処で!?」

「何処って、ぶつかった時におにいちゃんの服から出てきたよ?」

「えっ?」


あちゃー、上着のポケットに入れていたのか。

俺はとりあえずウィルに財布を返してもらう。


「ありがとうな、ウィル。それじゃあ……」


俺は帰ろうとしたが、ウィルは俺のズボンを引っ張って

離れようとしなかった。


「お兄ちゃん遊んでくれるんじゃなかったの?」


ウィルは期待に満ちた目で俺を見つめる。

まぁ、財布が見つかったのはウィルのおかげではあるんだが、

残念ながらこんな夜に遊ぶのもな〜、うーん……


「ウィル、残念だけどこんな夜中じゃ遊べない」

「えっ」

「けど、一緒に出店を回る事はできるぞ?」


うむ、これしかない。

もうウィルも出店を見て回っているかも知れないが、二人で見ると

結構変わってくるものだ、多分。

俺の申し出にウィルは。


「……だめなの」

「えっ?」

「ここから離れられないから……」

「な、何で?」

「約束してるから」


うーん? 誰かと待ち合わせしてるのか。それなら!


「ウィル、ちょっとここで待ってろ?」

「えっ?」

「すぐに戻る! いいか? 待ってろよ!?」


そうして、俺は出店の通りに戻って取りあえず目に付くものを買いあさり

ウィルの元に戻る。


「お兄ちゃん、それどうしたの!?」

「いや、ウィルが離れられないならこうして持ってくるぐらいしか

 ないだろ?」


我ながら凄い買い込みようだ。

お面に綿飴、イカ焼き、水風船のヨーヨーなどなど。

でもな〜、これでウィルが喜ぶかどうか……


「ありがとう! お兄ちゃん!」

「あ、ああ」


とても喜んでくれた。

ウィルは食べ物を全て平らげ、ヨーヨーで遊んでいた。


「なぁ、ウィル」

「ん? 何?」

「何時までここにいるんだ?」

「もうちょっと」


こんな暗い所に一人で待ち合わせとは。

もうちょっと明るいところで待ち合わせすればいいのに。


「ねぇ、お兄ちゃん」

「ん? 何だ?」

「お兄ちゃんって、なにか願いとか無いの?」

「えっ? 願い?」

「うん。こう、世界中のお金がほしーいとか、人間ほろぼしたーいとか」

「うーん、願いねぇ……」


そう言われて俺の口からすぐに出た言葉は。


「……もとの世界に帰りたいかな?」

「! 駄目!」

「? ウィル?」

「そんなの絶対駄目! お兄ちゃんいなくなったら僕、一人になっちゃうもん」

「お、おいおい」


ウィルは目に涙をためていた。

う〜ん、そんなに俺を思ってくれるのはありがたいが。


「大丈夫だよ、ウィルなら友達の一人や二人すぐにできるよ」

「駄目! お兄ちゃん行っちゃ駄目!」

「ウィル……」

「なんで? お兄ちゃんここにいたら何でもできるんだよ!?

 何でも願いが叶うんだよ? 皆言う事聞くんだよ?」

「いや、それは無理だよ、現に聞いてないし」

「それは、お兄ちゃんが魔王として命令してないからだよ」

「魔王として?」

「うん」


魔王として? どうやってだよ?


「どう? これでお兄ちゃん帰りたくなくなったでしょ?」

「……それでも、俺は帰らないと行けない。ごめんな、ウィル」

「どうして?」

「俺を心配してる人もいるし、向こうの世界でやる事もある」

「……」

「俺はこっちの世界の人間じゃないから」

「……嫌だ」

「ウィル?」

「ヤダ!! お兄ちゃんの馬鹿ー!」

「あっ、おい! ウィル!」


ウィルは出店の通りに向かって走っていった。

俺も後を追っていくが。


「あれ? おかしいな?」


いつの間にか見失っていた。

俺は必死に辺りを見渡すが、何処にもいなかった。


「王様ー!」

「あれ? リーシェ?」

「さ、さがしましたよ」

「リーシェ、この辺りでコレぐらいの背で、髪が金色の子供見なかった?」

「えっ? いえ……それに、それ位の子供周りに沢山いますからね」

「そっか……」


ウィルの奴、大丈夫だろうか?

変な事に巻き込まれてないといいんだけど。

その時、空で大きな音が響く。


「あれは花火!?」

「うわぁ、綺麗ですね」

「リーシェ、花火はこの世界無いって言ってなかった?」

「えっ? 『パステル』の事だったんですか?」

「ぱ、ぱすてる?」

「はい、私たちの世界ではパステルって呼びます」


七夕がななばたで、花火がパステル? なんだかなぁ。

世界が違うとここまで言葉が違うのか。

花火に見とれるリーシェの横顔に思わずドキッとする。

こうして、俺のアリシュレードで初めての祭りの夜は終わっていくのだった。


 





















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