表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

第六話「コンテスト」

「お兄ちゃんの魔王としての期間……有効につかってね」


ウィルの言葉が頭に響く。

う〜ん、どういう事だろうか? 有効にと言われてもな〜。

ガシガシと頭をかきむしる。

確かに、俺は魔王になっても何もしてないしな〜……。

などと考えていると。



「こんにちは〜、元気か〜い? 魔王君?」


嬉しそうにスキップしながら俺に近づいてくるゼロが入ってきた。


「嫌な予感がするから帰ってくれ」

「OH〜、つれないね〜魔王君、君にとってもいい話があるんだが」


ニンマリと笑うゼロ。

ムッ、ゼロから話を持ちかけるなんて天変地異の前触れか?


「実はコレなんだよ、魔王君」

「こ、コレは!?」


ゼロは俺にチラシを見せる。

そこには、『第120回 水着美女コンテスト』なるものが


「ゼロ、これにでるのか?」

「出るわけないだろ? これに出るぴったりの人がいるじゃな〜い?」

「……まさか、リーシェ?」

「そう! リーシェが出れば一位だよ!」

「リーシェが出るわけ無いだろ?」

「魔王君が言えば必ずリーシェも出てくれるよ」

「……おいおい」


ふぅ、とため息を一つ。

俺の答えは既に決まっている。

そして俺は……



「うわ〜、凄い広いですねこのデパート」

「だろ〜、なんたって僕の子会社だからね〜」


水着を買いにゼロの進めるデパートに来ていた。

まぁ…その……本能には勝てなかった。

恥も外聞も無く正直に言うと、リーシェの水着姿が見たい。


「う〜ん、だけど……」

「どうしました? 王様?」

「いや……実は、俺の世界のデパートと似てるからビックリ」

「えっ!? そうなんですか?」

「へぇ〜、それは僕にとっても興味深い話だね〜」


ガラスのショーウインドウに商品が展示されている。

そして、今俺たちはエスカレーターで水着売り場まで上っている。

各階で売っているものが違う。

何から何までソックリだ。

そうこうしている内に目的の水着売り場に到着した。


「すごい種類がありますね」


フロア一面水着だらけ、それは正に圧巻ものだった。


「じゃあ、俺たちは向こうにいるから、水着買ったらここで待ち合わせね」

「はい、わかりました」


そうして、俺とゼロは男物の水着の場所に移動した。


「やっぱりトランクス系かな?」


俺は無難な水着を買ってゼロのほうに向かうと……


「おわっ!? お前何してんだよ!?」

「ん? なにかおかしいかい魔王君?」


ゼロの奴はぴちぴちの海パンを試着していた。

ブーメランパンツと言う奴だ。


「たのむから、それはやめてくれ」

「魔王君、こういうのは苦手なのかい?」


あのギリギリ度はマズイ。

俺の気も知らずにゼロはポーズをとる。

俺の説得で、ゼロもトランクス系にしてもらった。

俺たちは海パンを買って待ち合わせ場所に戻ると既にリーシェが

帰ってきていた。


「あ、待たせた?」

「いえ、私も今来たばかりです」

「それじゃあ、帰ろうか?」

「はい」


そうして、俺たちは城へ戻っていった。



--次の日。

俺たちは水着コンテストが行われる海辺へときていた。

辺りには埋め尽くすほどの人と魔族が。


「リーシェ、大丈夫なのか?」

「えっ? なにがですか?」

「いや、人と魔族が一緒だけど……」

「大丈夫です、こういう時は争い事は無しです。

 皆楽しみたいんですから」


それだったら、何時もこういう風にして欲しい。


「それじゃあ、着替えたらここらで待ち合わせね」

「わかりました〜」


そういって、更衣室へと向かう。

俺はさっさと着替えて海辺へと戻り、場所を確保する。

すると、イキナリ後ろから目を覆い隠される。


「うわっ、もしかしてリーシェ?」


俺は後ろを振り向くと。


「やぁ、魔王君」


……一瞬、殺意が芽生えてしまった。

ちょっとドキッとした俺が馬鹿だった。


「……なんだ、ゼロか」

「なんだとは酷いじゃないか?」

「リーシェは?」

「う〜んどうしたんだろうね? ちょっと見てくるよ」


そう言ってゼロは更衣室の方に走っていった。

俺は黙々とパラソルやマットを準備していく。

すると、後ろから背中をトントンと叩かれる。

くそっ、またゼロか。


「なんだ? 何か忘れ物かゼ……」

「どうですか? 王様?」


ヤバイ、死んだ。

というより、俺は死んでるのではないだろうか?

そこには眩い姿の天使が舞い降りていた。

白いワンピース姿のリーシェが立っていた。

……息ができない。


「似合ってませんか?」

「なななななな……そ、そんなことない! もうバッチリ!」

「ありがとうございます」


そういってニッコリと微笑むリーシェ。

俺の胸に衝撃が走る。……もう駄目。

死亡原因はそのスマイル。


「おっと〜、リーシェ、ここにいたのかい?」


リーシェの後ろからゼロが帰ってきた。

その声でハッと我に返る。

いかん、いかん。今回だけは助かったよゼロ。


「あっ、ゼロ(ニコッ)」

「……(バタッ)」

「ど、どうしたの!? ゼロ」


あっ、死んだ。

うんうん、その気持ちわかるよゼロ。


その後、なんとか生き返ったゼロと共に3人で海で遊んでいた。

そして、水着コンテストの時間になり砂浜に設置された

特設会場へと足を運んだ。

そこは溢れんばかりの人がいた。



「お前らー! 水着は好きかー!!」

「おー!!」

「水着の為に……死ねるかー!!」

「オー!!」

「ヨッシャー! お前らの心意気しかと受け止めたぜー!!

 これより〜、第120回 水着美女コンテスト開催するぜー!!」

「待ってマシター!!」


司会者の声に反応して観客が大いに盛り上がっていた。

というか、水着の為に死ねるのか。


「なぁ、ゼロ」

「ん? なんだい魔王君?」

「これって賞品とかあるのか?」


実の所、俺はリーシェの水着姿しか考えてなかった。

水着コンテストというからには何か賞品があるのだろう。


「フフン、1位になると何と「ゼロと行く1泊2日の旅行」が

 もらえるのさ」

「ふーん、たいした事ない……えっ!!?」


ゼロってまさか…


「お前、はめたな!?」

「何をいってるんだ〜い? このコンテストは僕の会社が主催している

 コンテストでね、前回まで普通の旅行券だったんだけどね、

 なぜか今回に限ってこんな事になってしまったんだよ」

「なんで今回だけなんだよ!!?」

「まぁ、それは大人の事情って奴?」


既にコンテストは始まっており、止める事は不可能。

俺にできることと言えばリーシェが一位にならない事を

祈るだけ。


「それでは〜続いて、NO9のリーシェさんのご登場!」


リーシェが舞台の端から出てくると、割れんばかりの歓声が。

うう……まずいかも…

だけど、他の人も凄い美人揃いだからまだわからな……


「リーシェさん、どこかチャームポイントとかありますか?」

「いえ、残念だけど無いんです(ニコッ)」



いっかーーーん!! そのキラースマイルは!!!

リーシェが微笑んだ瞬間、会場の所々でため息が。

まずい! このままでは本当に1位にされてしまう!!


「いや〜今回も素晴らしい人ばかりの水着コンテスト、

 それでは、特別審査員長のモンタ議長、何か一言」


……え? モンタ議長?

審査員の席を見ると確かにモンタ議長の姿が。


「ほっほっほ、今回はレベルが高すぎますな、

 選ぶのに迷いますわい」

「そうですね〜、では休憩を少し挟んだ後、優勝者の発表を

 モンタ議長からお伝えしていただきましょう〜」


ワイワイと騒がしくなる観衆達。

俺はこっそりと審査員席の裏側へと移動する。


「モンタ議長、モンタ議長」

「ん? おお、鈴木君かね」


俺はモンタ議長を舞台の裏側へと誘導する。


「モンタ議長、今のところ一位はだれなんですか?」

「ほっほっほ、それは教えられんな」

「……リーシェですか?」

「……さてのう」


むむむ、このままでは教えてくれそうにないな…

仕方ない、あれを使うか。


「いいんですか? モンタ議長?」

「ほっ? 何がじゃ?」

「パブ「らん…」


その言葉を言おうとすると、モンタ議長が口をふさいできた。


「お主……酷くないか?」

「だったら、教えてください」

「リーシェじゃ」


あちゃ〜、やっぱりか。

だが、これでこのままにしておくわけにはいかなくなったな。


「モンタ議長の力でリーシェを1位にしない様に

 何とかなりませんか?」

「ほっほっほ、それは無理じゃな」

「……わかりました、こっちにも考えがあります」

「ほっ?」

「モンタ議長の恥ずかしい過去を魔王の権限で世界中にばら撒く

 ことにします」

「なっ……なんじゃとーー!!?」


うむ、我ながら素晴らしいアイディアだ。

ウィルの言ってた有効に使ってというのはこういうことか。


「お……鬼! お主は悪魔じゃ!!」

「悪魔で結構です。しかし、モンタ議長が何とかしてくれるのなら

 この事は伏せておきますが……?」

「ぬぐぐぐぐ……わかった」


こうして、ゼロの野望を未然に防ぐ事ができた。


「それでは〜審査委員長の優勝者の発表〜」

「うむ」


音楽と共にモンタ議長が優勝者の書いた紙を開く。

そして。


「今回の優勝者は……NO8のアリーシャさんじゃ」


観客から大きな歓声があがる。

だが……隣の男からは悲鳴が上がっていた。


「な……なぜだい!!? ぼ、ぼかぁリーシェが勝つように

 仕組んだはずなのに!?」

「残念だったな、ゼロ。悪は滅びるんだよ」


と、肩にポンと手を置く。

がんばって、あの綺麗な人と一泊二日の旅行いってらっしゃ〜い。

コンテストも終り、城へと帰る途中。


「リーシェ残念だったね」

「いえ、やっぱり私なんかが一位になんかなれませんよ」

「そんなこと無いよ、俺はリーシェが一位だと思ってたよ」


まぁ、本当は一位だったんだけどね。

ごめんよ、リーシェ。


「そういえば、ゼロの奴は?」

「あっ、なんか優勝賞品についてなんか揉めてるらしいですよ?」


策士、策に溺れるという奴だな。


「また行きたいですね海」

「そうだね、また来……」


そう言い掛けて俺は言葉を止めた。

来年……そっか、俺は来年にはここにはいないんだった。


「どうしました? 王様?」

「ううん、なんでもない」


とりあえず、来年の事を考えるのはやめよう。

まだ、俺はここにいるんだから。



























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ