最終話「それから……」
「いっやっほおおおおー!」
けたたましい叫び声が上がる。
グラウンドには喜ぶ姿と、悲しむ姿の両者の姿が見えた。
我が母校のサッカーのユニフォームを着た男が俺に駆け寄ってくる。
「おい! 見たかよ!? ついに一回戦突破したぞ!?」
「おー、オメデトウ。んじゃ、今日は一志のおごりで焼肉な?」
「バカヤロウ! なんで俺のおごりになるんだよ!?」
一志は笑いながら俺にヘッドロックをかましてくる。
俺は今、一志のサッカーの試合の応援に来ていた。
あのアリシュレードの体験から一年……いや、正確には『一日』だ。
俺は元の世界に戻ると、なぜかパジャマ姿で寝ていた。
急いで俺は両親に話を聞くと。
「何言ってるのよ? 丸一日ぐっすり寝ていただけよ? 幸い、昨日は
休日だから良かったものの」
と、ため息をつきながら母親は語る。
夢? と思って自分の部屋に戻ると、ある物を発見する。
「これは……リーシェの編んだ手袋?」
はめてみると、相変わらずのブカブカ。
その時、俺はあの出来事は現実のものだったと確信した。
ただ、時間の流れだけが違うだけで。
だが、そのおかげで俺は今までどおりの生活に戻れたわけだ。
「よ〜し、このまま一気にプロに駆け上がってやるぞ!」
などと、目の前で凄まじい事をおっしゃる友人。
だが、この十年後に彼はプロサッカーの「監督」として目覚しい活躍をすることを
知る由もなかった。
「おー、頑張れよー。夢は頑張れば叶うよ」
「おう。修もさっさと夢見つけろよ?」
「……いや、俺の夢はもう叶ったんだ」
「あん? お前もしかして、俺が一回戦突破するのが夢だったのか!?」
「そんな訳ないだろ! それとは違うけど、もう叶ったんだよ」
「?」
俺は雲ひとつない青空を見上げてあの時の事を振り返る。
そして、俺はゆっくりと身体を伸ばし。
「まぁ、後は俺自身の気持ち次第。これからの事は、なるようになるか」
俺は前に向かって歩き出した。
少しずつ、ゆっくりと確実に。
-fin-
『なるようになれ』如何だったでしょうか?
読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
次に投稿した作品も読んでいただけるようにがんばっていきたいとおもいます。