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第二話「選ばれた理由」

起きると、いつもの自分の部屋が目に入る。


「……よかった〜 夢だったんだ」


俺は、奇妙な夢からの生還にほっと胸を撫で下ろす。

何やら、下の階からドタドタと誰かが二階に上がってくる。

? 母さんだろうか?


「王様ー! 起きてくださーい!」

「ええっ!?」


そこには何故か居るはずの無いリーシェが元気よく飛び込んできた。


「うわあああっ!?」

「きゃっ!? ど、どうしたんですか王様?」


ガバッと体を起き上がらせる。

俺は即座に辺りを見回した。すると、そこは昨日の悪趣味な寝室だった。

隣には、起こしに来たと思われるリーシェの姿があった。


「な、なにかあったんですか? 王様?」

「……はぁ」

「?」

「夢が現実で……現実が……夢か」

「??」


あまりのショックにうなだれる俺。

寝て起きたらいつもの日常という、かすかな希望は無残にも打ち砕かれた。


「王様〜、そろそろ朝食ですよ〜」


そういうと、昨日と同じように運んでくるリーシェ。

俺は、仕方なくその朝食を口に運ぶ。


「王様、今日のスケジュールを発表しますね」


そう言ってメモ帳を取り出そうとした時。


「あっ、待って」

「? どうしました?」

「あ、いや実は、この世界……アリシュレードだったかな?」

「はい。それが何か?」

「どういう世界なのかできれば教えて欲しいんだけど」


そう、実は昨日、結局他の街を散々連れまわされて疲れて寝てしまうだけに

終わってしまったのだ。

つまり、勝手に魔王にされただけで何にも分かってない。


「そうですね、わかりました。でも、その前に」


そういうと、何故か後ろの棚から服を取り出す。


「えっと、何これ?」

「これは王様の服です。その服装は汚いので洗いますね」

「あっ、なるほど」


言われてみれば、服を見ると汚くなっていた。

所々破れている部分もある。

刃物とか避けるの大変だったからな〜。


「着替えたら下に降りてきてくださいね」


リーシェは部屋から出て行った。

俺はせっせと着替えを急ぐ……だが。


--5分後


俺は着替えを終えて下の階に降りてきたのだが。



「ちょ、ちょっとリーシェ! 何だよこの服!?」

「うわぁ! すごいお似合いですよ王様」


黒いタキシードのような服に黒いマント。

所々にファッションと思われる模様が。


「うんうん。これで、魔王様らしさが出てきましたね」

「いや、出なくていいから」


こんな姿で外に出たら笑われ者だよ。


「けど、これすごいぴったりだね。まるでサイズ計ったみたいに」

「はい。計りましたよ」

「えっ? 何時?」

「王様が寝てる時にサッサっと」


と言う事は、昨日の間にこの服をこしらえたというのですか?

その速さにも驚きだが、勝手に人のサイズを測るのにもおどろいた。

むしろ、プライバシーの侵害だ。


「あ! あと、王様これを」


リーシェはポケットからなにやら腕輪を取り出す。


「それは?」

「はい、代々魔王になられた方はこれを付ける決まりになっておりますので

 付けていただきます」


金色の高価そうな腕輪だ。

俺はリーシェから受け取ると、付けてみる。


「うわぁ! お似合いですよ王様」

「そ、そう?」


でもなんかサイズがちょっときついな。

俺は一旦腕輪をはずそうとすると……


「ん? あ、あれ? と、取れない!?」

「えっ? あ、本当だ」

「本当だ、じゃないよ! どうするのこれ!?」

「ん〜、こんな事初めてですね。でも、お似合いですよ」

「似合えばいいって訳じゃないでしょ!?」



俺がどんなに引っ張っても取れない。

こんなのずっと付けてないといけないのか!?


「ん〜、仕方ないですね」

「何か方法が!?」

「王様、こうなったら腕を落とせば」



どこからともなく巨大なチェーンソーが出てくる。

いやいや、それ、腕だけじゃすまないよ?

落ちるのはむしろ命の方じゃないか?



「まぁ、もう腕輪はいいですハイ」

「えっ? いいんですか!?」


まぁ、腕を落とされるよりましですからね。



「さてと、リーシェ、教えてくれないか? この世界の事を」

「はい、それでは……スイッチON!」



突如天井から巨大なスクリーンが下りてくる。

スクリーンにこの世界の地図が映し出された。

それと同時に、何故か眼鏡をかけるリーシェ。



「では、説明させていただきます。この世界[アリシュレード]は

 人間と魔族を中心に、他の種族が一杯います。その数約3億!」


「さ、三億!?」


「まぁ、約半数は人間ですけどね〜」

「リーシェは魔族なの?」

「はい。魔族と言っても人間に近い者から、本当に化け物じゃん!? 

 みたいな奴らまで多種多様ですよ?」

「へぇ〜」

「その魔族を仕切るのが、我らが魔王様。つまり、あなたです!」


ビシッ! と、俺を指差すリーシェ。

その後ヤッタネ! といわんばかりに親指を立てる。

いやいや、良くないから。


「質問、リーシェ」

「……」

「リーシェ?」

「先生です」

「はっ?」

「今の私はリーシェ先生です、そこのところヨロシクお願いします」


くいっ、と眼鏡を上げるリーシェ。

まさかそんなことで眼鏡を? いやいや、考えすぎか。


「リーシェ……先生、質問です」

「はい、なんですか?」

「どうして俺が魔王になったんですか?」

「それは勿論、公正な審議の上で決定しましたよ?」


この世界に居ない俺を公正な審議の上で?

いやいや、そりゃ〜無理でしょう。


「ちなみに聞くけど、どういう審議を?」

「『魔王様公平に審議委員会』というちゃんとしたものがありますよ?」


めっちゃくちゃ胡散臭いんですけど!?


「行ってみます? 審議会場に」

「えっ!? いけるの?」

「はい、勿論」


非常に気になる。

なぜ自分が選ばれたのか、なぜ自分だったのか。

俺はリーシェの腕に掴まると、昨日のようにテレポートをする。


「はい、ここが審議委員会の会場です」

「ここが? マジ?」

「王様〜、私はいつも大マジですよ?」


リーシェに連れられて来た場所は、大学の教室のような場所だった。

目の前には黒板と教壇、後ろには生徒席らしきものが。

俺たちは、辺りを見回すが誰一人として見当たらない。


「さすがに誰も居ませんね〜」

「みたいだね〜」


仕方ないので諦めて帰ろうとしたその時。


「むっ? 誰じゃ? こんな時期に会場にくるとは」

「あっ! 王様! この人、魔王委員会議長のモンタ議長ですよ!」

「えっ!?」


髪は年のせいか白く、髪がぼうぼうに生えて顔が分からない。

かなりの歳だという事だけは分かる。

その風貌からかなりの大物ぶりを予感させる。

杖を使いながらふらふらと歩いていた。


「お久しぶりです、モンタ議長!」

「おおっ! リーシェか! 懐かしいの〜」


二人は和気あいあいと話合う。

どうやら、知り合いのようだ。


「今日はどうしたのじゃ?」

「はい。実はこちらの王様がモンタ議長に話しがあると」

「ほう?」


俺に気づいたモンタ議長は杖をつきながら近づいてくる。


「初めまして、わしはモンタ議長じゃ」

「す、鈴木修です、はじめまして」

「むっ? 鈴木じゃと? もしや、魔王の鈴木か?」

「えっ!? 知ってるんですか?」

「勿論じゃ、何と言っても君を選んだのはこのわしなのじゃからな」



その言葉を聞いた俺は驚いた。

この人が俺をこの世界に導いた張本人……?


「お、教えてください! どうして俺を選んだんですか!?」

「ま、待て、く、苦しい」


俺は無意識にモンタ議長の肩を揺さぶっていた。

ハッと我に返った俺は手を離す。


「す、すみません。でもどうしても知りたいんです!」

「……分かった、お主には知る権利がある。教えよう」

「あ、ありがとうございます!」


モンタ議長は近くにあった椅子に腰をかけ、一回ため息をつく。

そして、ゆっくりと語りだした。


「さて、わしは王がいなくなった時、魔族1億もの数の中から

 王の選定を任せられている責任者じゃ」

「ど、どのように選定されているのですか?」

「ふむ、いい質問じゃ。王を選定するのは大変でな、公平でなければ

 いけないのじゃよ」

「? なぜですか?」

「簡単じゃ、力で競い合えば力の強い魔物が勝ち、知識で競えば知識のある魔物が

 勝ち、大食いで競い合えばギャル○根が勝つ。これではその分野に突出した

 王ができてしまうだけじゃ」


なるほど、一つだけ優れているだけじゃ駄目なのか。

最後の例えに少し疑問が残ってしまうのは気のせいか?


「では、どうするか? その答えはじゃな……」

「そ、その答えは……?」


喉がゴクリと鳴る。

今まさに自分が聞きたいことが告げられようとしている。

そして、その答えは!



「くじ引きじゃ」



……ん? 



「あの、今なんとおっしゃいましたコノヤロウ?」


予想してなかった言葉を聞いて、言葉遣いがおかしくなってしまった。

まいったな、なぜか拳に力が。



「ま、待て! なぜ拳を振り上げるのじゃ!?」

「じゃあ、もう一度今の言葉を聞かせてください」

「……KUJIBIKIじゃ」

「ローマ字で言っても一緒だよ! この野郎!」

「お、王様! 押さえてください! モンタ議長も何か考えが!」


今にも殴りかかろうとする俺をリーシェが抑える。

実際問題、何か理由があったとしてもくじ引きは無い!


「じゃあ、なんでくじ引きなんですか? モンタ」

「……ひどいのぅ。公平にしなければならんと言ったじゃろ?

 くじ引きなら全くの公平じゃ、しかも一億ものくじじゃぞ?」


そんなもので王様を決めようとするアンタもアンタだよ。

あれ? でもまてよ?


「本当に俺をくじ引きで決めたのですか?」

「うむ」

「じゃあ、それはおかしい。だって、俺はこの世界にいないのに

 俺のくじを引いたなんて無理がある」

「ああ、その事じゃな? ……それはくじを引く直前じゃな、

 わしはこのままクジで決めてよいのかどうか迷った」



いや、良くないだろ? 迷ったのなら辞めろよ。



「こう、面白味に欠けておった」



おやおや、何やら話がおかしいぞ? この展開。

何やら嫌〜な予感が。



「そこでわしは考えた、何か適当な名前を書いたクジを

 一枚クジ箱に放り込んだ。そして、結果は……なんと!

 その適当な名前に当たったのじゃ! ビックリじゃろ!」



俺とリーシェは唖然、呆然。

そして、俺の怒りは言うまでも無く頂点に達した。


「いや〜、わしも驚いた。まさか適当な名前を書いたのに

 その適当な名前の人間が居るとは、奇跡じゃな。……? 

 あれ? どしたの? ふ、二人とも?」

「リーシェ」

「はい、王様」



リーシェはモンタ議長をガッチリ後ろから拘束する。

素晴らしい程の意思疎通。



「な、なにをするんじゃ? なにやらおぬし等から

 凄まじい殺気が迸っておるが?」





その後、モンタ議長は言うまでも無く病院に運ばれた。











 

 

















































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