表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/20

第十二話「聖夜の真実(後編)

「ウィ、ウィル=アリシュレード?」

「そう、僕はこの世界そのものなんだ」


クリスマスの夜にウィルからとんでもないプレゼントを貰った。

それは、ウィルがこの世界だという衝撃の事実。


「な、なんで?」

「それはね、魔王ルシフェル様が僕を作り上げたからさ」


確かに、ルシフェルはアリシュレードを作ったと言われているけど……

まさか、こんな子供の事だったのか。


「ルシフェル様は自分の住んでいた世界が戦いによって滅び、最後の力で

 僕を作り上げた……そして、この世界は僕の魔力で作られている想像。

 いわば、空想の世界」

「な!? じゃあリーシェ達も空想の人だっていうのか!?」

「安心して。この世界で生きている人たちは既に僕の想像では無いから」

「どういう事だ?」

「確かに、3万年前に生まれた魔族と人間は僕の想像で生まれた。けど

 その中で生まれた子共達は既に違う。僕の想像で生まれたわけじゃない」


3万年前? じゃあ、ウィルはあの姿で3万年も生きているのか!?


「ルシフェル様は自分の世界が戦いによって滅びたため、僕を『調整者』に指名した」

「調整者?」

「そう、世界のバランスを影で操作する。それが調整者。

 そして、僕にそれを行う為にある2つの力を授けてくれたのさ」

「2つの……力?」

「一つは、お兄ちゃんのつけてるそのリング」


俺はウィルに言われてハッと気づく。

たしか、これは魔王になったらつけるってリーシェが言ってたな。


「そのリングをつけてる者の記憶、望みが僕には見えるようになって

 いるのさ」

「!?」



お、俺の恥ずかしい過去もバレてるって事?



「そして、もう一つ」

「な、何?」

「このアリシュレードの世界で生まれた者は全て僕の手によって

 記憶を操作できるって事」

「にゃ、にゃんだってー!?」


い、いかん。

あまりの驚きに言葉がおかしくなってる。


「! そうか、今までのビル開発とか七夕、花火とかはまさか」

「そう。お兄ちゃんの世界の記憶から生まれたものだよ? この

 アリシュレードにそんな行事とか物は無いもの」


なるほど、以前、リーシェに祭りの事を聞いた時は

「祭り」というものは知っていたけど「何の祭り」かは知らなかった

ウィルに祭りというものがなんなのかだけインプットされたからだろう。


「でも何で言葉がここまで違ったんだ?」

「えっ? だって、名前変えたほうが面白いし、でも今回は

 お兄ちゃんの世界にソックリにする為に同じ名前使ったんだよ?」


なるほど……。

今までの疑問、問題が全て解けていく。


「……でもね」

「?」


ウィルの顔が少し暗くなる。

どこか、寂しそうに感じるものがあった。


「ルシフェル様は僕に一つだけ命令したんだ」

「命令?」

「うん。それは『お前はアリシュレードの者と関わる事を禁じる。

 そして、魔王の願い、望みを叶える義務をつける』と言うもの」

「!?」

「ルシフェル様は調整者は常に中立という意味で僕にこういう

 命令を下したんだと思う。でもね、でもね」


ウィルは目から頬を伝う涙を袖で拭う。

そうか、ウィルの言ってた意味がやっと分かった。

ウィルは俺が来るまで誰とも会う事も出来ず、話すことも出来ず

遊ぶ事もできなかった。

一人で3万年も生き続けたわけか。

ルシフェルの命令は『アリシュレードの者と関わる事を禁じる』

そして、俺はアリシュレードの者では無い。

ウィルにとって、俺は最初で最後の友達と言うわけか……。


「ウィル、一つ聞いていいか?」

「何?」

「4代魔王の「バリス」は人間と魔族の和平を望んでいた筈。

 これは調整者としては一番望ましい事じゃないのか?」


そうだ。一番気になる事だ。

もし、ウィルの言ってたことが本当ならば、

戦争を起こさないようにするにはそれが一番じゃないか。


「アイツは、そんな偉い奴じゃないよ」

「えっ?」

「アイツは周りから言われてただ和平の為に動いただけ。

 心の中では人間と戦いたい、殺したいと願っていた」

「じゃあ」

「……うん。だから、願いを叶えてあげた」

「ウィル……」


ウィルはその話をしている間、何処と無く元気が無かった。

ウィルにとっても辛い事だったんだろう。


「お兄ちゃん、そろそろ話も終りにしよう」

「えっ?」

「僕はお兄ちゃんがここにとどまらないと言うのなら、僕はこの世界を壊す。

 もし、お兄ちゃんが留まるというなら僕はこの世界を残す。

 さぁ、どうする?」

「ウィル!」

「期限は12月31日。お兄ちゃんの世界で言う年の終りまでに

 決めておいて。その時、またこの場所でね」


そういって、闇の向こうにウィルは姿を消していった。


「ウィル……」


俺は……どうすればいいんだろうか。

突然の真実にただ立ちすくむしか無かった。


 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ