俺が俺で、お前が俺で、お前も俺で、お前まで俺!?
ある日ゲームの世界にトリップしてしまった俺ら4人の会話
「うわああああ!何だコレ!何だコレ!何だコレぇ!?」
「嘘だろ!?げ、ゲームの中にトリップ!?」
「そんな、ラノベじゃあるまいし!」
「ていうか、お前ら誰だよ!?なんで俺そっくりの顔してんの!?」
「むしろ、お前が誰だよ!」
「俺は和田秀平だ!」
「俺だって和田秀平だ!」
「ってことは、お前らもまさか!?」
「そのまさかだよ!」
「嘘だろ、おいぃ!俺が4人とかどうなってんだ!!」
「怖ぇよ!なんのホラーだよぉおおお!!」
「ひとまず、それぞれ戦闘俺、回復俺、生産俺、商人俺ってことで。」
「異議なし。」
「人に出会ったら旅の4つ子って設定で通そう。」
「対外的な名前は、戦闘俺がセントー・オレ・ワダ・シューへー。
俺がカイフク・オレ・ワダ・シューヘー。
そんで生産俺がセーサン・オレ・ワダ・シューヘー。
商人俺がショーニン・オレ・ワダ・シューヘーな。」
「あーでもせっかくチートでトリップならTUEEEEがしたかった!戦闘俺うらやましす!」
「バカ野郎!リアル戦闘とか怖いだろうが!俺は生産俺と代わりてぇ!」
「それより交渉とかしなきゃいけなくなったが、商人俺大丈夫なのか?」
「無理無理無理!人見知りすぎてオンライン手を出さなかったチキンに商人とか無理ゲーすぎる!」
「だよなぁ。しかし、生きねば……。」
「あっ!それ俺が言いたかったのに!」
「俺も俺も!」
「ずるいぞ!俺のくせに抜け駆け良くない!」
「だったら、俺は明日の朝『知らない天井だ』を言わせてもらうからな!」
「じゃあ俺は『うだつの上がらねぇ平民にやっと巡ってきた幸運か、それとも破滅の罠か…』で。」
「それもう言う時期を逃してねぇか?」
「待て待て俺ら。それより先に話し合わなきゃいけないことがあるだろう。」
「分かってるさ。俺が4人もいるってぇ事実を考えるに……。」
「あぁ。おそらく現実世界で何事もなく過ごす俺もいる可能性が高い、だろ?」
「さすが俺。考えることは同じか。」
「これが本当の自画自賛。」
「なんつーか、現実に帰るって発想がすでに怪しいよな。」
「だな。だって、帰れたとしてこの中の誰が?ってことになるし。」
「現実世界に俺ら登場!急に5つ子に!なんて目も当てられんぞ。」
「夢オチ的に記憶消去で俺ら消滅も嫌だな。」
「…………とりあえず、帰れないし帰らない方向で?」
「賛成。俺ら4人でいればまぁ普通に生活するぐらい楽勝だろ。」
「全員カンストだからな。むしろリアル俺より勝ち組確定。」
「ごくり。」
「それにしても…………。」
「あぁ、アレだな。」
「全員きちんと男キャラで作っていて良かったな。」
「これで性転換とかしてたら自殺ものだよな。」
「色んな意味で俺女か。ゾッとしねぇ……。」
「そんで誰か1人でもいなくなってみろ、死活問題になるぞ。」
「特に回復俺な。」
「いや、そりゃ戦闘俺の立場からすりゃそうだろうけど1番は生産俺だろ?」
「そして、今もっとも自殺しそうな立場にいるのが商人俺な。」
「ガクガクブルブル。自称対人恐怖症の俺が有能商人のわけがない。」
「レベルだけ高くてもリアルになっちまったらなぁ。」
「頼むから俺らのためにも引きこもらないでくれよ商人俺。」
「ぜってぇ1人にしないから。俺の気持ち俺らよく分かってっから。」
「うう……あったけぇ。例え中身が全部俺でも俺は今人生で初めて仲間がいる感動を味わっている。」
「ふふ、みんな同じ気持ちさ。」
「あぁ、なんたって全員俺だからな。」
「おぉぉお我が生涯に一片の悔いなぁあーーっし!!」
「だから抜け駆けすんなし!!」
「最終奥義くらわすぞコラァ!」
「やめて俺ら!1人でも欠けたら人生ツんじゃうって言ってるでしょっ!」
「なんか、全員俺なのに微妙に差が出てるよな。」
「そりゃ、立場が違えば考え方も変わってくるんじゃね?」
「今後は経験によっても少しずつ性格も変化していくかもな。」
「そもそも顔はともかく体型からしてすでに違ってんじゃん。」
「戦闘俺はマッシヴでいいよな。」
「生産俺も何気に筋肉ついてるしな。」
「でも見慣れないから違和感すげぇよ。」
「確かに。なぜか動かすことへの違和感はないんだけどな。」
「へー、そうなんだ?」
「てか、回復俺だってシュッと痩せてて羨ましいぜ。」
「うんうん。1番女受けしそうだよなぁ。」
「いやいや、こういう魔物の出る世界じゃ戦闘俺みたいなタイプの方がモテんじゃね?」
「まーたまたそんな。やめろよ回復俺ぇー。」
「きゃっきゃうふふ。」
「………………ふ、ふへへ、リアル体型のピザデブそのままな俺乙。」
「うわちょ商人俺、気をしっかり!」
「なにを初日からダークサイドに堕ちそうになってんだよぉー!」
「ほら!アレだったら、俺が倉庫に貯めてる力の果実あげるから!な!な!」
「つーか、本当に俺ら崩壊の危機が訪れるとしたら、多分女関係じゃね。」
「全員好み同じだからな。」
「誰か1人だけリア充にでもなったら俺は俺を殺してしまうかもしれん。」
「嫉妬で死ねる。」
「少なくとも嫌がらせは必至だな。」
「どう足掻いても自傷行為です、本当にありがとうございました。」
「かといって全員を同時に相手してくれるようなビッチはイヤだ。」
「野に咲く花のような可憐な清楚系万歳!」
「つーことは、スペック高くなっても大魔法使い候補なのか俺。」
「それはそれでイヤすぎる。」
「へへっ、俺はとっくに覚悟完了してるぜ。」
「商人俺…………ほろり。」
「で、ずっと思ってたことがあんだけど。言っていいか。」
「いや、それより先にさ。いい加減こっから移動しねぇ?」
「あれ、俺いつ発言してた?」
「お前は俺か。あ、俺だわ。」
「以上、ここまで全部俺の自演。」
「ぬるぽ。」
「ガッ!」
「とりあえず、ここってゲームスタート地点の朽ちた神殿でいいんだよな?」
「おそらくな。」
「この神殿が俺ら伝説の幕開けの地になるのか……。」
「夢がひろがりんぐ。」
「腕がなるぜ。」
「無双なら任せろー、ばりばり。」
「よし!そんじゃ、とにかく俺ら。今後ともヨロシク!」
「あぁ、俺。いっちょやってやろうぜ!」
「俺らの俺らによる俺らのための冒険が、今、はじまるっ!!」
「おいそりゃ打ち切りフラグだ。」