プロローグ
寂れた廃墟の建物が並び建つ街、ゴーストタウンに二つの影があった。
「トイチェンジ!武装、重装甲!」
「トイチェンジ……武装、四辺形態」
片方は赤く、蟹の手のような分厚い装甲が肩や腰に取り付けられる。
もう片方は四角く黒い物体へと変わる。
「行くよぉ!」
合図と共に肩の装甲が外れ、蟹の鋏のような装甲は上下に開き、黒い空白に光が集まる。
「シューート!」
球体となった光は一筋のレーザーとなって発射される。
「……ディフェンス、フォルム」
四辺形の形状から膨れ上がり、菱形のシールドへと姿を変える。
一閃を引く光はシールドにぶち当たって四方八方に飛び散り、近くの廃ビルを破壊し霧散する。
「……アタック、フォルム」
今度は菱形のシールドが四つに解れ、太い槍状に成る。
「……ロック……オン…!」
狙いを定め、オンの掛け声で風を切って突撃する。
「――わわわっ!?」
猛進する一撃は止まることなく、狙った相手に向かって一直線に進む。
「それ、ちょっと待ってーーっ!?」
赤い装甲を前に放ち、固まる。
……。
…………。
………………。
そして、時は止まった。
「……ん、ん~~……ん?あ、あれ?」
「……ん」
双方の動きは止まり、否、無理矢理止められた。
「……シキ、邪魔するな」
「……へ?シキ姉様?」
槍を止め、装甲を掴み、それは立っていた。
「二人共。バトルはいいですけど、ちゃんとマスターに許可は得ましたか?」
シキと呼ばれた者は、怒気を孕んだ呆れ顔をした。
「得ていないのなら、これは説教ですね」
「それはちょっとごめんだな。僕は」
「あ、マスター。おかえりなさいませ」
「ただいま、シキ」
『バトルフィールド、リリース』
少年がポッドのスイッチを押すと、機械音声が流れ、寂れた廃墟は光の粒子に成り変わって消える。
「おかえりマスター!」
「……おかえり、なさい」
「ただいま。アオイ、ルカ」
正反対の反応のあいさつに笑顔で返す少年。
「マスター、今日もお勤めお疲れ様です!」
これは少年とちいさな女の子達の物語である。