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愛する息子を救うために

作者: なめなめ
掲載日:2026/01/26

 息子が借金してるらしい?


 二十歳を越えたくらいの息子。何かのきっかけなのか彼はパチンコにハマってしまう。

 それこそ自らの貯金を全て溶かし、消費者金融に何十万も借金するまでにだ。


 そして何より、親の私に隠れて悪い友人とつるむまでになった。


 正直、仮にも二十歳を越えた息子だ……それらがどういう結果を招いても全ては本人の責任だと思う。


 思うが、それでも愛する息子には代わりにない。よって親として私は取り敢えずなけなしの貯金で消費者金融による借金を立て替える。


 ただ幸いにもこの必死の行為は息子に通じたらしく、反省して一生懸命に仕事を頑張って私に全ての金額を返済してくれた。そして同時に、私の心に息子へ対しての不信感を払拭してくれた。くれたはずだった……


 悪夢は続いていた。息子は悪い友人との関係を密かに続けていたのだ。しかもその友人は明らかに“(やから)”と呼ぶに相応しい人物。


 人を見かけで決めてはいけないとよく聞くが、それでも彼は控えめ目に見ても明らかに最悪が服を着て歩いているような人物だった。


 ある日、その感じた印象は決して錯覚でなかったことを思い知らされる!


 彼は悪意を息子に向けた。


 息子は彼を友人として接したが、彼の方は違っていた。言葉巧みに息子の心を惑わし、都合の言い様に利用し、奪いにかかったのだ。


 私は親として息子にそんな輩と付き合うなと何度も訴える……っが、まったく聞き入れてもらえず、逆に親子間に深刻な亀裂を生じさせる事態にまでなってしまう。


 ―――数ヶ月後。相変わらず輩との付き合いを続ける息子は確実におかしくなっていた。無論、気が狂ったとかではない。


 いや、気が狂っていた方がはるかにマシだと思えた。


 私が何度も忠告や警告を繰り返したにも関わらず、案の定息子は何も気づかないままだったのだ。


 幸いにも消費者金融に再び借金することはなかったが、輩には理不尽な借金をしていた。


 ここで敢えて“理不尽”と表現したかについてだが、息子の証言だけで聞くと、「それはそもそも借金なのか?」というもばかりだったからだ。


 まぁ例を一つ上げるとすれば、金がない時に“好意”という形で飯を食べさせ、その飯代をいつの間にか借金とし、さらには何倍にもして請求したりだ。


 当然本来ならば、そんな借金返済は実際に抱えた分だけを返せばいい話。しかし、相手は完全なる悪党側の人間だ。ありもしない事実をでっち上げて世間を知らない息子を追い込むなど造作もない。


 それにその輩は決して書面等の証拠は残さない。証拠がなければ払わなくてもいいとなるが、逆にいえば借金をしてない証拠にもならないからだ。

 さらに息子にはパチンコで大金を使い込んだという“前科”があるため、直接現場を知らない親としては「もしかしたら?」と疑心暗鬼にかられてその借金を払ってしまう。


 結果、味を占めた輩は嬉々として息子をさらに誑かす。


 極めつけは、息子の壊れたバイクを格安で修理すると言ってとんでもない金額をふっかけてきた!


 もちろん当初はそんな金は払えないとしていたが、輩はあろうことかここである取り引きを持ちかける。


「修理代が払えないなら、そのバイクをよこせ!」とほざいてきたのだ!


 はっきり言って、本当に理不尽としかいいようのない提案。しかし、当時の息子はその輩に全服の信頼を置いていた。


 そして何より、私も日頃の度重なる息子の愚行に精神を病んでいたためにその条件を流されるままに受け入れてしまう。


 後日、輩はバイクを転売する。しかもこれは転売された側からあとになって聞かされたことだが、なんとバイクは一切の修理がされてなかったとのこと。


 当然転売された側は立腹し、輩に賠償を求める。


 しかし、輩は何とこの賠償については元の持ち主である息子に責任があるとして肩代わりさせようとしてきた。

 ただ、この件ついては私が事前に転売された側に事情を話していたために息子側には非がなしとなり、全面的に輩の責任ということで幕を閉じた。


 っが……これで全てが終わったわけではなかった。


 悪夢は続く。このあとも息子は何も気づかないままにあらゆる悪意に晒されていく。


 私は見ていられなかった。見ていられずに警察、法律家、行政……さらには精神科の医者にまで相談を持ちかけた。


 結果、それ等は全て徒労に終わるだけだったが……


 私は大いに絶望するが、それでも自分の息子を救いたい気持ちまでは萎えなかった。救うためにはあらゆる手段をとる覚悟を決めていた。


 やがて……どうしようもない状況にまで追い詰められた私は、心に秘めていた覚悟を実行へ移そうとする。


「アイツを殺すしかない! 息子を救うにはこの方法だけだ!!」


 もはや頼るものが何もないと確信する私は、無言でキッチンにあった包丁を握り締める。


「息子よ。絶対にお前を助けてやるからな!」


 そう、私は……私は息子を救う覚悟を完全に決めていた。



 ―――私はもうじき人として許されない罪を確実に犯す。でも、それに対する躊躇は微塵もない。


 何故なら、それが息子のためになるからだ!!


「ああ、世界で一番愛する息子よ……絶対に私がお前を救ってやるからな。

だから……だから……願わくば強く生きてくれ息子よ……」

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