第87話 帰る場所、居る場所
ロイヤルファミリーの視察が終わり、テツジシティーに日常が戻って来ていた。
まだ、復旧途中のため、上下水道工事は後回しになっている。
瓦礫の撤去や建材の運搬に魔物領の巡回と、大忙しの哲治です。
ロイヤルファミリーが発って直ぐ。
ヴァレルから
「テツジ殿。王女殿下の邸宅下に、隷属の首輪が埋まっている可能性がある。申し訳ないが、掘り出してもらえないか?」
そう、お願いされた。
将来、誰かが掘り出して、悪用されたら寝覚めが悪いので、掘り出すことにした。
リリアーナも、ここに戻ることはないだろう。
哲治は、胸の奥に喪失感を感じながら、リリアーナ邸を壊していった。
掘り出した25個の隷属の首輪。
自身にも使用された可能性があった。
召喚された頃がフラッシュバックする。
頭を振り、隷属の首輪をヴァレルに渡した。
ライナーも復帰し、戻って来た。
左足は、やはり動かないらしい。
馬車職人が、車椅子を作ってくれた。
ゴムは無いので木のタイヤだが、竹を使ってクッション性を良くしている。
車椅子で走り回り、第八師団の指揮を執っていた。
負傷した人たちも、概ね復帰している。
残念ながら、あれから亡くなった人もいた。
落ち着いたら、慰霊祭を行う予定だ。
ヴァレルに隷属の首輪を渡した、5日後。
ヴァレルが、哲治の元を訪れた。
ずっと、ルヴァンラボに籠っていて、顔を見るのは5日振りだ。
ヴァレルが哲治に向かい
「隷属の首輪の解除が出来るぞ!」
珍しく興奮しているようだ。
哲治は最初、ヴァレルの様子が可笑しくて、言葉の内容が入ってこなかったが、内容が頭に届くと
「本当?やったね。これでシータとラムダ助かるね。ヴァレルさん、ありがとう」
そう言って、頭を下げた。
「でも、自我崩壊は?クリア出来たの?」
哲治は不安だったことを聞く。
ヴァレルは、
「大丈夫だ。直ぐに外すのは危険だが、催眠魔法を徐々に薄くして最終的に完全に遮断する」
ヴァレルは、小さな魔法陣が描かれた紙を見せて
「これを1日1枚ずつ首輪に貼り付けて、徐々に解除する。計算では、7日で解除出来るが、念のため検証しながら10日後にはずす予定だ」
早速、シータとラムダに話したが、二人ともキョトンとしていた。
ルヴァンは天才だが、ヴァレルも凄い。
国王を説得して、異世界人召喚を止めさせた。
王族の管理する隷属の首輪。
それも全て破棄される。
この国が、この世界が変わっていく。
実感はないが、自分が召喚されてから、やってきたことが世界を動かした。
これ以上、異世界人が犠牲にならない。
それだけは誇ろう。
◆◆◆
ついに、シータとラムダの隷属の首輪を外すことに成功しました。
心置き無く、旧王都の魔素召喚魔法陣を破壊しに行きます。
最初、スパイクでガリガリやったのですが消えなくて、鍬で掘り返しました。
それと、破裂の魔法陣。
あれ、凄いんです。
地雷になるんです。
破裂の魔法陣を描いた紙を地面に置いといて、魔物が踏むと、パァンって破裂する。
罠のために作ったって聞いていたが、正にその通りだった。
魔石使わないと起動しないと思ったけど、魔物が出す魔力で起動するようです。
あの大きな破裂の魔法陣。
いじり倒していたけど、自分に魔力が無くて良かったよ。
冷や汗かきました。
第八師団の若い兵士の何人かが、ラムダの指導を受けて、魔物寄せと破裂の魔法陣を描けるようになった。
魔物領の塀の近くで、魔物を呼び寄せて破裂の罠に嵌める。
そんな作戦が出来そうだ。
ルヴァンに哲治は
「俺を返した後、魔力が残っていたら、シータとラムダも返してあげて」
って、言ったら。
ルヴァンは不思議そうな顔で
「本人たちが、帰りたいって言ったのか?」
と聞かれた。
確かに、直接会話出来ないのもあって聞いていないな。
クルーガを通訳にして聞いてみると、二人ともこの世界に残るそうだ。
何でも、人の役に立つ喜びがこの世界にあると。
それと話変わりますが、旧王都にあったドラゴンの亡骸。
……解体しました。
格好いいこと言っていましたが、あの化け物と戦ったことで、防御大事ってことに至りました。
ドラゴンの鱗は硬いから、鎧代わりに使わせてもらいます。
また、変なのが出てきたら怖いからね。
ドラゴンから魔石は出てこなかった。
やはり、魔物とは違ったようだ。
肉も食いました。
特別美味しいとかなく、鶏肉に似た感じ。
唐揚げ祭りだったよ。
ルヴァンも遂に本腰を入れて、返還魔法陣を返還の館の床に描いています。
返還の館は仮設住宅も兼ねているので、寝る時は魔法陣に触らないようにハンモックを使用しています。
元の世界へ帰れる日が近付いている。
嬉しさと、何とも言えない空白感が入り混じっていた。
皆様お読みいただきありがとうございます。
あと2話で完結となります。
最後までお付き合い宜しくお願いします。




