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第86話 王国の行き先

 アストレイア国王は、テツジシティーのリリアーナ邸で、緊急の会議を開いた。


 会議に参加しているのは、アストレイア国王とエリック皇太子。

 それに、ヴァレルとブルー、内務大臣だ。



 目の当たりにした化け物。

 国王は、旧王都からの道程で考えていた。



 国王は、ブルーに聞く

 「軍務卿。あの化け物は何だ?」


 ブルーは自分に問い掛けられたと気付かず、隣に座るヴァレルに肘を小突かれた。


 ブルーは、ひとつ咳をして答える。

 「あれは……魔物の変異種だと思われます」


 国王は

 「変異種か……話には聞いたことがある。他の魔物の魔石を喰うと、変異する魔物がいると」


 「はい。私も変異種は口伝で聞いていただけで、実際に見るようになったのはテツジが倒してきた変異種だけです。軍部の過去の資料も調べましたが、あれ程の異型は初めて見ましたし、資料にもありません」

 ブルーが言った。


 国王は溜息に近い息を吐き

 「魔術卿。あの化け物は、魔素が生んだのか?」


 ヴァレルは、国王の目を見て答える

 「確定は出来ません。しかし、状況から考えれば、間違いではないかと」


 国王は頷き

 「……これが、魔素の危険性か……。魔術卿、魔素が無くなった場合、この国はどうなるか推察を聞かせよ」


 ヴァレルは一度姿勢を正し答える

 「はい。あの魔法陣を壊しても、直ぐに魔素が無くなるとは思えません。また、魔素が無くなったとしても、人体への影響は皆無と思われます」

 一度、言葉を切り、続けた


 「魔物領の魔素が薄まれば、魔物も弱体化すると思われます。今以上に魔石は採りやすくなるのではと推察いたします」


 国王は頷き

 「なるほど。魔素が機能しなくなる時期は分かるか?」


 「分かりません」

 ヴァレルは、頭を下げた。


 国王はブルーに向き

 「軍務卿は、魔素について、どう考える?」

 と、聞いた。


 ブルーは、国王の目を真っ直ぐに見て

 「はい。魔素は毒です。魔素の秘密を知った今、魔物領に近い砦に駐屯している第八師団の長として、看過出来ません」

 はっきりと言い切った。


 国王は僅かに笑い

 「そうか」

 と呟いた後、中空に視線を移した。



 少しの沈黙の後、国王は

 「エリックはどう思う?」

 父親の顔で、皇太子に聞いた。


 「はい。私は初めて魔物領に入り、魔物を見ました。勇者殿が簡単に魔物を倒しておりましたので、錯覚しそうでしたが、あの化け物と勇者殿の戦いを見て、魔物の恐ろしさを実感いたしました」


 皇太子は、息を吸い込み続ける

 「私は、便利さよりも国民が健やかに過ごせる環境を作りたいと考えます」



 国王は頷き

 「……魔素は破棄する。あの魔法陣は、勇者殿に壊してもらおう。昔の強力な魔法も、今の魔術師では再現出来ないだろう」

 静かに言った後、内務大臣に向き直る。


 「内務卿。王都に帰り次第、学校建設の予算と、ルイーゼ辺境伯との協同開発の予算を計上せよ」


 「かしこまりました」

 と、内務大臣は頭を下げ答えた。


 国王は、

 「資金はシギリードから没収した分がある。安心して計算せよ」

 そう言った後に笑った。



 国王は、ブルーに向き言った

 「第八師団長。魔物への対応、引き続き頼む」


 ブルーは

 「はっ。承知いたしました」

 と言って、立ち上がり敬礼をした。


 国王は、ヴァレルに向かい、いたずらっ子のような顔で、

 「魔術卿。魔術省は解体か?」

 そう聞いた。


 ヴァレルも同じような顔をし

 「そうですね。魔術省を()()()に変えましょう。大臣はルヴァン・カリスで良いでしょう」

 そう言って、ニヤリと笑った。



 この会議は、国王の考えを確認し、後押しするためのものであった。



 会議が終わり、テツジに旧王都の魔法陣の破壊と、魔物領の探索を頼んだ。



 その後、国王はルヴァンと話して、魔力に頼らない技術の開発のため、テツジの帰還が終了次第、王都へ戻るように伝えた。


 ルヴァンは快諾したが、技術大臣の役職だけは固辞していた。

 一技術者としてやりたいと。



 翌朝、国王たちは王都へ向け、出発した。

 リリアーナも一緒に帰って行った。



 残ったヴァレルの手には、国王から渡された王家の隷属の首輪が握られていた。


 「もう必要ない」

 国王のその言葉が、異世界人召喚と魔法からの決別を示していた。


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