第83話 化け物
暑の季節。
夏だ!遊びに行きたい!
現実逃避気味の哲治です。
本日、昼前には国王様御一行がいらっしゃいます。
二代目クラケン号の改造も完璧です。
二階建てバスになりました。
ロイヤルルームも完備しています。
木工職人が頑張りましたが、誰も王宮や王城の中を見たことがないので、哲治の想像で作られております。
哲治は、いつものオシャレパッチワーク服ではなく、久し振りにカーゴパンツを履く。
上はアンダー1枚。
魔物領に行くので、プロテクターとレガースは必須だ。
オシャレサングラスは、やめておこう。
スパイクは迷ったが、ジョギングシューズにした。
国王様、おな〜り〜。
国王の他に、エリック皇太子、リリアーナ王女、内務大臣が来ています。
宰相さんは、王城でお留守番。
それと、ヴァレル(魔術大臣)、ブルー(軍務大臣)……ププッ、既成事実化されていますね。
豪華な馬車から、二代目クラケン号へ乗り換えてもらいます。
ロイヤルファミリーは二階へ、近衛兵の何人かと、お付きの人たちも二階です。
その他の方々は一階へ。
荷物と、第八師団の兵士は三代目Jクラケン号に。
三代目Jクラケン号は屋根も窓も有りません。
タイヤも付いていません。
座席は適当に付いています。
皆で風になろう!
水道工事現場の視察を終え、いよいよ魔物領へ行きます。
塀を乗り越えるため一旦降りてもらい、二台のクラケン号を魔物領へ移動させる。
実は、塀を破裂の魔法陣で壊して門を作ろうと思ったのですが、ブルーから烈火のごとく叱られました。
わざわざラムダに頼んで、でっかい破裂の魔法陣を描いてもらったのに……折り畳んで尻ポケットへ死蔵です。
まずは、第八師団の兵士たちが塀を階段で越えて周囲の警戒に当たる。
次々に階段を使って魔物領へ。
最後に近衛兵に護られながら、ロイヤルファミリーが魔物領へ入った。
皇太子と王女は緊張の面持ちだったが、国王は懐かしそうな顔をした。
哲治は、ロイヤルファミリーが乗っているので、いつもよりもゆっくり進む。
リリアーナ王女が、白目にならないように配慮したという理由もある。
旧王都に着いた頃には、日が沈みつつあった。
門から入場してもらい、兵士たちが夜営の準備をしていく。
哲治は、ロイヤルファミリーに
「体調はどうですか?気分が悪いとかありませんか」
と聞いた。
皇太子が
「ええ。今日はゆっくり進んで頂けたので、大丈夫です」
そう笑顔で、答えた。
うん。クラケン号恐怖だよね。
でも、違うよ。
「ここに来ると、体調不良を訴える人もいるので……」
オブラートに包んでみた。
皇太子は咳をひとつして
「コホン。……そうですね。少し息苦しく感じます」
そして、国王とリリアーナを向く
「国王陛下はいかがですか?」
「そうだな。言われてみればだが、息苦く感じるな」
国王が答え、近衛兵に
「お前たちはどうだ?」
そう聞いた。
近衛兵の一人が
「はっ。確認します」
と言って、周囲の近衛兵に確認を取っていた。
30人の近衛兵が付いてきているが、体調不良者は3人いた。
リリアーナも少し辛そうだった。
哲治は、国王に濃い魔素が滞留している可能性を話し、扇いで霧散させることを提案すると、少し考えた後に許可が出た。
蓄魔石を魔法陣から外して、ガーゴパンツの腿のポケットに入れる。
哲治は持ってきた布を広げ、サウナの熱波師の如く布を振る。
人が居る場所には風が行かないよう注意して、魔素を壁の外へと振り払った。
再度、確認すると、リリアーナ王女が
「テツジ様、ありがとうございます。大分、気分が優れました」
そう言ってくれた。
顔色も良くなったように見える。
体調不良の近衛兵3人も、体調を戻したようだ。
やはり、魔素が体に異変を与えるのだろう。
その日は何事も無く、夜が明けた。
朝から国王と皇太子は、旧王城へ入って行った。
ヴァレルと内務大臣も付いて行く。
石大工たちに確認してもらったが、旧王城はかなりしっかり造られているらしい。
魔法の力も使われていると言っていた。
リリアーナ王女は、二代目クラケン号の屋根に居る。
二階から上がれるように作ってある。
デッキみたいな感じだ。
手摺もしっかり作ってあるので、転落の危険もない。
そこから哲治を眺めていた。
哲治は、リリアーナ監督の監視の元、壁の外周を警戒のため廻っていた。
東門からスタートし、北に回る。
耳をそばだたせ、森の中にいる魔物の動きに注意をする。
リリアーナの悲鳴が、耳に届いた。
大きな悲鳴ではなかったが、はっきり聞こえた。
哲治は、慌ててリリアーナの方を向く。
リリアーナは南側を見ていた。
目線を追って南側をみると、化け物がいた。
南側の壁の向こう。
旧王都の壁よりも遥か高い位置に頭がある。
哲治と変わらない体高。
頭は、サイクロプスの頭を三つくっつけたような顔。
目が三つ、大きな口がひとつ。
斑色の肌、まるで迷彩のようだ。
胸にも一つ目と、大きな口がある。
腕には、イービルモンキーのような毛が生えている。
右手に何か持っている。
サイクロプスの上半身だ。
それを齧っている。
その化け物が王都に入ろうとしている。




