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第81話 戻る街、戻れない者

 ドラゴンを倒した。

 それ以上も、それ以下も無い。


 怒りや復讐心が霧散したかと問うても、そんなことは無かった。


 『溜飲が下がる』という言葉があるが、当事者には適さない言葉なのかもしれない。


 命を懸けた戦い。

 最後、ドラゴンが冷静に炎を吐いていたら自分が倒れていた。


 作戦通りもクソも無い。

 『勝ちに不思議の勝ち有り』プロ野球の元監督が話していた。

 まさに、その通りだ。



 シータは、投げ捨てたプロテクターで遊んでいた。

 シータを叱っておいた。

 プンプン怒っているジェスチャーをしたので、理解し反省しただろう。

 ニコニコ笑っていたのが気になるが……。


 でも、シータがいたおかげで、足首の捻挫や肋骨のヒビも治してもらえた。

 それ以外も、全身擦り傷だらけだった。


 実は、右手の小指も折れていた。


 アドレナリンが出ていたのか、シータに指摘されるまで気が付かなかった。

 曲がっちゃいけない方向に曲がった小指を見た瞬間、涙が出るほどの激痛が襲ったよ。



 ドラゴンには、念のため止めを刺した。

 方法は、コンプライアンスに引っ掛かるといけないので言いません。



 魔素召喚魔法陣に空に近い蓄魔石を置く。

 この前、回収した蓄魔石は魔力満タンだった。

 以前から持っていた蓄魔石、二本の内一本は満タンになっていたが、もう一本がまだ空に近かった。


 ルヴァンに相談すると、

 『あの魔素召喚魔法陣に置いたら、すぐ貯まるかもな』

って、言われた。


 うん。同じ意見だ。


 ルヴァンに置く場所を聞いておいたので、間違えないように蓄魔石を置く。

 置いたと同時に蓄魔石の色が消えて焦ったが、徐々に色が薄っすらと戻って来た


 無限動力だ。



 バットケースに石ボールを詰めていき、最後にシータを入れる。

 石ボールが足場になり、上半身が出る状態だ。

 シータを落とさないように肩に担ぎ、石入りスパイクケースを拾って物置シティーへ帰る。


 夕日が巨人とエルフの影を伸ばした。



■■■


 返還の館で一晩眠り、翌朝、シータを二代目クラケン号に乗せて第三砦へ走る。


 シータさん、客室に乗ってください。

 そこは屋根です。


 第三砦で、シータを下ろした後、クルーガを監督不行届として叱っておいた。

 クルーガは「不条理」と言っていたが、構うことはない。


 ライナーが目を覚ましたことを聞き、安堵の息が出た。

 まだ、動けないようだ。

 ラムダが献身的に介護しているらしい。


 ラムダに惚れるなよ。

 ライバル多いぞ。

 血の気が盛んな奴等。

 おっ、ラムダ杯リーグ戦を企画しよう。



 (から)の二代目クラケン号を引っ張って王都へ向かう。

 国王へドラゴン討伐の報告をするためだ。



 西門跡に向かい、そこにいた兵士に伝言を頼む。

 明日、また来ることも伝えて辺境伯領へ向かった。


 辺境伯領で大工たちを乗せられるだけ乗せ、物置前シティーへ戻った。



 翌日、王都の西門跡に行くと、副社長の宰相さんが来ていた。

 ドラゴン討伐の御礼を言われた後、

 「雨期が明けたら、旧王都を視察したい。よしなに頼む」


 おお、また無茶振り。

 今度はツアコン?



 辺境伯領へ行き、避難させていた住民を乗せて物置前シティーへ戻った。



■■■


 第三砦で治療していた負傷者も何人か復活した。

 治療の甲斐なく、亡くなった人もいた。


 ライナーは意識を取り戻したが、左足が動かないらしい。

 一生動かない可能性があるそうだ。

 軍への復帰は難しいと中隊長に聞いた。

 ライナーには悪いが、命があって本当に良かった。


 馬車職人に車いすのことを話して、作ってもらうようお願いをした。


 ラムダと数人の治療班を残して、クルーガとシータ、他多くの治療班が物置前シティーに戻る。



■■■


 物置前シティーは、以前の活気を取り戻しつつあった。


 哲治は、国王視察に向けて魔物領の整地に勤しんだ。

 放ったらかしだった切り株を掘り起こして整地していく。


 石大工や職人たちは、水道工事を後回しにし、街の復旧に力を入れている。


 哲治重機株式会社も、魔物領の整地と街の復旧の手伝いで大忙しだ。


 雨期に入る前、ガンツからブルーシートを貸してくれと頼まれた。

 あれは、返還の館の屋根代わりです。

 私、返還の館で寝ています。

 雨期が来るのに貸せるか!



 雨期に入ると、魔物領の整地のピッチを上げた。



 旧王都も時々見に行く。


 ドラゴンの亡骸は雨に打たれ、雨粒を弾いていた。

 まるで何者も寄せ付けぬように……。


 哲治は、その孤高の姿に自身を重ねることは無かった。


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