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第80話 サヨナラ打

 大きな音が響いた後、ドラゴンが咆哮を上げた。

 悲鳴に近い叫びだった。


 石ボールは、頭にも体にも当たらず、尻尾に当たったようだ。


 ドラゴンの千切れた尻尾が地面を叩く。


 トカゲの尻尾切りか、くだらないことを考えてしまった。

 その時、頭が揺れた。


 ドラゴンが、頭を掠め後方に跳んで行く。

 千切れた尻尾に意識が行ったため避けられなかった。


 フラつきながら、ドア盾を拾おうと身を屈める。

 そこに横から衝撃を受けて転がってしまった。


 まだ、炎を放たれるまでは時間がある。

 身を低くし、巾着袋まで戻る。

 巾着袋は燃え落ちて、黒焦げた石ボールが転がっていた。


 その一つを掴む。

 バッティンググローブ越しに熱を感じた。

 直ぐに顔を上げて、ドラゴンを探す。

 右手から革が焼ける匂いがしてきた。


 狂ったように不規則に飛ぶドラゴン。

 狙いすまして投石する。

 焼けたバッティンググローブが引っ掛かり、石ボールは見当違いの場所へ飛んで行った。


 それでも、ドラゴンは気が狂ったように飛び続け、旧王都の建物にぶつかって建物を壊していく。


 尻尾が無くなり、飛行がコントロール出来ないのか。

 上空に上がったり、地面スレスレを飛んだり、行動が読めない。

 体力を無駄に使っているように思えるが、何か考えがあるかもしれない。


 ドラゴンから目線を外さないように右手のバッティンググローブを外す。

 右手に少し火傷の感覚がある。

 石ボールは熱くて使えない。

 ドア盾を左手で掴んで、バットを右手で握る。


 痛いし怖い。

 それに、血を出せば自身のコントロールが出来なくなる。

 投石で魔物を倒してきたのは、自分が自分でなくなる“狂暴化”が怖かったからだ。


 それでも、接近戦で勝負だ。



 ドラゴンが、旧王城へ方向を変えた。


 ヤバイ!

 あそこにはシータが居る。


 旧王城の最上階の窓から、シータが顔を出した。


 哲治は思わず

 「シータ。逃げろ!」

 叫んでしまった。


 その時、ドラゴンの口が笑ったように見えた。



 哲治は無我夢中で走った。

 石畳がスパイクの歯を滑らせる。

 瓦礫が進路の邪魔をする。


 泥臭い生き方を馬鹿にしていた。

 熱血を恥ずかしいと思っていた。

 スマートに生きることを望んだ。

 報いか。


 間に合わない。

 いや、間に合わせる。


 哲治は足に力を入れて吠えた。

 「うおぉぉぉー」


 ドア盾をドラゴンに向け、身体ごと横に飛ぶ。


 ドガーン


 という音と共に、胸と腹に激しい痛みが走る。


 くの字になったドア盾が手を離れて空を舞う。

 空と地面が交互に見える。

 ふっ飛ばされ、地面を転がっていた。


 旧王城は無事だ。


 背中を何かに打ちつけて、転がっていた体が止まった。


 直ぐに立ち上がるが、左足首と胸の下に激痛が走る。

 肋骨、やったか。

 足は折れてない。

 捻っただけだ。

 血は出ていない。


 歯を食いしばり、左足を庇いながら走る。

 走りながらプロテクターを外して投げ捨てる。

 途中、転がっていた金属バットを拾って再び走る。


 旧王城の反対側で、ドラゴンが頭を振っている。


 旧王城をすり抜けて、更に走る。

 ドラゴンが飛び上がるのが見えた。


 哲治は尻ポケットから蓄魔石を取り出して高く掲げる。

 「おい!オオトカゲ。お前の魔法陣を壊すぞ!」

 そう叫び、魔法陣へ向かう。


 言葉は通じないが、意図は分かったようだ。

 哲治もドラゴンの憤怒の表情が分かった。


 魔法陣の前まで行って振り返る。

 バットを両手で握り、正対の構えをとる。


 ドラゴンが突っ込んで来た。

 いやにスローに感じる。


 タイミングを計り、半身になりながらテイクバックする。

 スタンド入りするホームランは打ったことないが、ホームランバッターのように、少しアッパー気味にフルスイングした。

 踏み込んだ左足の痛みも感じない。


 音が消えた。



 両手が痺れ、バットが宙を舞う。

 くの字なったバットを見て、ブーメランを思い出した。


 ドサッ


 音が戻って来た。


 ドラゴンの首が曲がり、倒れている。


 哲治は何の感慨も無かった。

 倒れたドラゴンを見下ろしていると、足に何か当たった気配があった。


 視線を移すと、石ボールがひとつ転がっていた。


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