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第77話 準備

 哲治の心は怒りで染まっていた。


 しかし、頭は冷静だった。


 これほどまで、何かを成し遂げたいと思ったことは無かった。

 それが、褒められない所作だとしても。


 いつも、何らかの言い訳を作り、中途半端だった。


 怒りに任せ、ドラゴンと対峙しても、良い結果にはつながらない。


 勝負は、仕事もスポーツも準備が全てだ。

 準備を怠れば、良い結果は遠い。



 哲治は、第三砦に避難している女性や子供を二代目クラケン号に乗せて、辺境伯領へ向かう。


 ルイーゼ辺境伯にお願いをし、前に哲治へ提供してくれる予定だった港の倉庫に、仮で住まわせてもらう。


 それと、トンネルを掘る予定の山を削らせてもらう。

 少し大き目の石が欲しかったからだ。


 ある程度、使えそうな石が見つかったので、クラケン号の屋根に乗せて辺境伯領都へ戻る。


 港の倉庫で石を下ろし、また、第三砦まで走る。


 今度は、石大工たちを乗せて、また港の倉庫まで走った。


 持ってきた石を石大工たちに丸く加工してもらう。

 彼らから見れば、1m強のボールを作ってもらう。


 木工職人たちには、第三砦の近くで、物置のドアに取っ手を付けてもらうようお願いした。

 盾にするつもりだ。

 パネルを盾にするつもりだったが、ドアが一番しっくり来た。


 ルヴァンに頼み、ドア盾に強靭化の魔法陣を描いてもらう。



 最後に、リリアーナ王女と侍女たちを王都へ送った。



 王都に送ることを伝えると、

 王女から

 「あのドラゴンと戦うのですね?」

と問われた。


 哲治は正直に言うが迷ったが、

 「……許せませんので」

そう答えた。


 王女は、はにかみながら

 「テツジ様の勇姿を……少しでも近くで見ていたい……ですが、邪魔にはなりたくありません。……王都に行きます」

 最後は、顔を伏せてしまった。


 哲治は頭を掻きながら言った。

 「空を飛ぶ相手です。王都も絶対安全とは言えません。でも、少しでも安全な所でお待ちください。王女様が健やかにいて下さることが力になります」


 王女は、パッと顔を上げ哲治を見た後、頬を赤らめて、また顔を伏せた。

 何度かそれを繰り返し、口をムニムニさせたところで、マーリンが回収した。



 王都からの帰り道で、辺境伯領都の港倉庫に寄る。


 石大工たちに頼んだ石ボールも出来ていた。

 手に馴染んだ大きさだ。

 軟式球に比べれば遥かに重いが、力が強くなった今、何とかなると思える。


 辺境伯へお願いして、作ってもらったナップサック風の巾着袋に石ボール12個を入れる。


 物置前シティーに戻り、試し投げも何度か行った。

 軟式野球では肩は強い方だった。

 ちゃんと測ったことは無いが、100m近く投げられた。


 石ボールは重いが、ドラゴンの炎の射程より有利だと思う。



 準備が整った。

 全て終えるのに10日掛かったが、最低限の準備が出来た。

 欲を言えば限りがない。


 何通りかのシミュレーションも考えた。

 火を吹いた高さなども皆に聞いて確認した。



 返還の館でゆっくり眠り、体調を整えた。

 たまごボーロパンを食べ、ユニフォームに着替える。


 プロテクターとレガースを付け、キャッチャーヘルを被る。

 親父のサングラスを装着し、石ボールが入った巾着袋を背負う。


 腰に小さい石が詰まったスパイクケースをさげ、バットを入れたバットケースを肩に掛ける。


 最後にバッティンググローブをはめて、ドア盾を左手で持つ。



 一度、空を見上げて、ゆっくりと顔を戻し、声を出して気合いを入れる。


 魔物領に向かって歩き出した。



■■■


 アストレイア王国、王都宮殿。


 リリアーナは自室で、後悔と納得を繰り返していた。


 テツジに自分の気持ちを伝えたかった。

 でも、伝えたらいけない気持ちもあった。


 言ってしまえと思った時、マーリンに連れて行かれた。

 マーリンは何も言わず、口に人差し指を立てた。


 ルヴァンに貰った、テツジを召喚した際の召喚魔法陣のレプリカ。

 その紙を見ながら、テツジの無事の帰還を祈るだけだった。


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