第74話 かくしん
哲治が荷物を整理していると、スマホが出てきた。
使えないため電源を落としていたが、懐かしくなり思わず電源を入れてみた。
2年以上充電していない。
もう電池の残量もないだろうと思っていたが、意外にも起動した。
電池残量も50%以上残っていた。
哲治は、スマホの電源を再度切りポケットにしまう。
片付けが一段落した頃、辺境伯から遣いの人がやって来た。
ブルーとヴァレルを呼び、話を聞いた。
内容は、
辺境伯領にドラゴンが来た。
物置前シティーに居れば危険だ。
港の倉庫を片付けるので、哲治が寝られる大きさだから避難しろ。
そう伝えられた。
確かに、ここに居ることがドラゴンにバレたら、この街が危ない目に合う可能性が高い。
辺境伯はさらに、
ドラゴンは王国中を飛び回っているようだ。
街に降り、テツジを探している。
魔物領の開拓を止めろと言っている。
国王と一度、話した方が良い。
最後に、紙漉き職人を派遣しろ。
最後の一文が辺境伯らしくて、笑ってしまった。
明後日、辺境伯領へ行くと、使者の人に伝える。
使者の人は、辺境伯領へ戻って行く。
下手すると、使者を追い抜いてしまうかもしれないが、辺境伯のことだから大丈夫だろう。
まだ、ドラゴンは戻らないと信じ、ヴァレル、ブルー、ルヴァンを連れて、再度旧王都へ向かう。
旧王都に到着すると、それぞれが気になる場所へ向かう。
哲治もスマホを起動し、飛行機モードに変更して、片っ端から写真を撮る。
魔法陣も忘れずに写真に収めた。
ヴァレルは王城を調べ、ブルーは兵士の詰所らしき場所を調べる。
ルヴァンは魔法陣の解析だ。
時折、持ち上げてくれと頼まれる。
哲治は、周囲を廻りながら、気になる場所をスマホで撮影していた。
一晩を皆、寝ずに過ごし、昼過ぎに旧王都を出た。
戦利品はこの前より多い。
体調は、前回より永く居たが問題ないようだ。
やはり、あの魔法陣が原因か。
蓄魔石を外したことで、魔法陣が止まっていた。
物置前シティーに着いてから、ルヴァンが話し始めた。
「あの魔法陣は、やはり召喚魔法陣だ」
哲治は頷き
「魔物の召喚?」
と聞いた。
ルヴァンは首を振り
「生物の召喚ではないな。テツジ殿が言っていた、"気体"……"大気"か。それを異世界から召喚していると思われる」
哲治は難しい顔をする。
ヴァレルが
「魔素か……?」
ルヴァンが頷く。
「多分そうだ。もう一つ何か機能があるみたいだが、まだ解析出来ていない」
ヴァレルが、旧王都で見付けた文献を元に話し出した。
国家機密に関わることだが、ブルーは軍務大臣(本人は固辞)、リリアーナは王族だ。
ルヴァンは口外しないし、魔法陣以外興味が無い。
「少し端折るが、あのドラゴンは250年以上前、召喚されたようだ。当時は3匹居た。大きいドラゴン2匹と、少し小さい一匹」
ヴァレルは持って帰った資料を慎重に捲り
「大きい一匹は衰弱して死んだ。魔素が薄いことが理由だったらしい。そこで……あの魔法陣を当時の魔術師に描かせた」
ヴァレルは息を吐き、続ける
「一部の住民は、ドラゴンを信仰対象にしたらしい。王族は求心力の低下から、王族を支持する者たちと、あの王都を出た。……ここまでが分かったことだ」
リリアーナが驚いた顔をするが、何も言わずに聞いている。
今度はブルーが、
「俺が調べた所からも、ドラゴン信仰の話があった。残った奴らの手記が見付かった」
そう言って、ブルーはボロボロの本を見せた。
「王政が無くなり、住民は平等に生きていたようだな。ドラゴンという、絶対の守護者の元、平和だったみたいだ」
皆、ブルーの次の言葉を待つ
「問題は、手記の後半だ。……住民が次々異変したと」
哲治は息を飲んだ
ブルーは続ける
「肌が緑色になったり、体が大きくなったりと。家畜などは顕著だったようだな。巨大化し、凶暴になって逃げ出したようだ」
哲治が
「それって……」
ブルーは手で哲治の発言を止める。
「住民は大きいドラゴンに救いを求めたが、ある時、狂ったように街の一部を焼き、そのまま死んだと。……手記はここで終わっている」
ヴァレルは考えをまとめ
「ドラゴンは、魔素が必要。魔素を異世界から流し込んできた。魔素が足りなかったのか、種類が違うのか大人のドラゴンは生きていけなかった」
哲治が頷き
「つまり、あのドラゴンは、その時の子供のドラゴンってことだね」
ヴァレルとブルーが頷く。
ルヴァンは相変わらず魔法陣とにらめっこ。
リリアーナは……うん、可愛い。
魔素が人や動物を魔物に変えた。
仮説が確信に変わった。
国王と話す必要がある。
あの魔法陣を壊せるのは、自分だけだ。
あの魔法陣がある限り、魔物が生まれる。
下手をすれば、今、人として生きている者たちが、魔物に変わるかもしれない。
魔素が無くなれば、どうなる?
魔石が取れなくなれば、どうなる?
シータとラムダの顔が浮かぶ。
両親の顔が浮かぶ。




