第73話 厄災
2話連続投稿2話目です。
第72話からお読みください。
アストレイア王国の王都は、かつてない混乱に包まれていた。
上空を旋回する大きな影。
この国には、大きな鳥はいない。
王都民が、初めて目にする大きな生物。
ゆっくりと旋回し、ゆっくり降りてくる。
荷車に荷物を積む者、着の身着のままで走るもの。
城門へ人が殺到する。
第一師団の兵士が大声を上げ落ち着くように叫ぶが、怒号や悲鳴が、その声を上書きしていた。
大きな生物――ドラゴンは、王城へ降りていく。
第一師団はそれを見て、王城へ向けて走り出す。
王城前では、近衛兵が槍を構え戦闘態勢を取るが、構わずドラゴンは、王城壁を壊しながら王城前へ降り立つ。
土煙が立ちのぼる。
王城壁の周りに居た近衛兵たちは、無残な亡骸に変わっていた。
「この街の長はおるか?」
ドラゴンが叫ぶ。
王城から近衛兵たちが現れる。
槍を構え、ドラゴンの前に進む。
ドラゴンは近衛兵の方に顔を向ける。
口を開け、ブレスを放った。
一瞬にして、近衛兵たちが灰になって消えた。
ドラゴンは再び顔を王城へ向け、
「無駄なことはするな。長を出せ」
王城のベランダからアストレイア国王が出てくる。
「朕がこの王国を統べる者だ。何用だ?」
ドラゴンが、国王を見定める
「大男を森へ差し向けたのは、お前か?」
国王は表情ひとつ変えず
「何の話だ?」
と聞き返した。
ドラゴンは、
「まあいい。森を切り拓くのは止めよ。我が許さぬ。もし続ければ、この街も森の街のように滅ぼすぞ」
そう言うと、ドラゴンは国王の返事を待たず、飛び立った。
西の方へ首を向ける。
西城門付近で、再びブレスを地面に向け放った。
首だけを一度、国王に向け、南の方へ飛び去った。
アストレイア国王は、怒りの表情に変わる。
飛び去るドラゴンを睨みつけていた。
■■■
ドラゴンは、王国中を飛び回っていた。
南北をジグザクに飛び、街を見付ければ、一番大きい建物の前に降り、同じ言葉を繰り返した。
「巨人を知っているか?」
「森に手を出すな」
どこの街が巨人を遣わせたか、分からなかったからだ。
だが、どこの街も、
「巨人は知らない」
と言われてしまう。
それに、領主とか村長とか、長の呼び方も違う。
片っ端から当たるしかない。
南で大きな池を見付けた。
遥か先まで、一面の水。
興味が湧いたので、水辺に降り、水を飲んだ。
塩っぱい!
これは毒の水だ。
普段は、水も食事も必要無い。
興味で近付くのは危険だ。
あの大男の時もそうだった。
興味本位で近づき、足を一本失った。
再び飛び上がり、また、街を探す。
何度も日が沈み、日が昇った。
夜は、山の頂で睡眠をとった。
大きな山脈が見えた。
山脈を越え、最初に見えた街に向かう。
大きい街だ。
上空で旋回し、大きい建物を探す。
尖った屋根の大きな建物があった。
ゆっくりと降り、目の前に着地する。
いくつかの建物を踏み潰したが、気にすることは無い。
いつものように問う
「この街の長は居るか?」
だが、誰も出てこない。
白い服を着た人間たちが逃げ回っているだけだ。
何か叫んでいるが、意味が分からない。
腹が立ったので、所構わずブレスを吐いて、飛び去った。
■■■
帝国領最西の街。
見たことない巨大な生物が、上空を飛んでいた。
西の山脈から来たとのことだ。
街中は大混乱になっている。
教会が誇る大聖堂。
尖塔には大きな鐘が吊るされていた。
教会関係者は、
「大聖堂の有るこの街は、神のご加護で溢れています」
散々そう言って、献金を集めていた。
しかし、空から来た巨大生物は、大聖堂の目の前に降り立ち咆哮した。
その後は、火を吹き大聖堂を火の海に変えた。




