第72話 守るもの
物置を壊され、途方に暮れる、哲治です。
ドラゴンが、
「この中か〜!」
とか言って、火を吹いたが、破壊出来ず、物理的に何度も体当たりして、壊したらしい。
さすが、断熱材入り。
違う!そこじゃない。
絶対、親父に怒られる。
弁償コースだ。
ドラゴンに賠償請求しましょう。
そうしましょ。
このままだと、崩落してリリアーナ邸を潰す可能性がある。
中にある道具類を全て出し、返還の館へ移動させる。
棚も全部外し、外に出す。
側面から蹴りを入れ、崩壊させた。
パネルは返還の館の外側に立て掛けておく。
返還の館で三角座りして、途方に暮れていると、ヴァレルが息を切らしやって来た。
ヴァレルが息を整え
「ドラゴンが、王都方面に飛んで行った。シータが見たらしい」
哲治は、
「俺を探している?」
ヴァレルは頷き
「そうかもしれん。ただ、絶好の好機だ。すまないが、旧王都まで連れてってくれんか」
そんなビックリ発言をする。
哲治は驚いたが
「……分かりました。クラケン号は使えないので、少し運搬が乱暴になりますよ。大丈夫ですか?」
ヴァレルの顔が青ざめていく
「……かまわない……」
そう呟いた。
ヴァレルは、ルヴァンを呼んでくると言って走って行った。
元気なおじさんだ。
バットやノコギリなどを置いてきてしまった。
回収のためにも、もう一度、旧王都へ行く必要がある。
昆虫飼育ケースを持って来る。
クラケン号と同じく、相棒と呼べる存在だ。
飼育ケースに藁を突っ込み、ハサミで切った布を敷く。
これだと、下のクッションは良いけど、転がるな。
布を大きめに切り、藁に被せる。
布を指で押し、凹みを三つ作った。
完成と同時にヴァレルとルヴァン、それにブルーが来た。
おじい……おじさん三人衆、揃い踏み。
三人を飼育ケースの凹みに、一人ずつ入れていく。
これなら、体が動かないので、転がる危険はない。
ルヴァンとブルーが何か言っている。
聞こえないな。
ヴァレルは達観した顔だ。
空のバットケースを肩に担ぎ、ロープを腰に巻いていく。
両手でケースを持ち上げ、なるべく揺らさないように走り出す。
魔物領に入り、切り株が処理されていない地域まで来た。
ここからは、慎重に行く。
ドラゴンが複数いた場合や、戻って来た場合など考えながら歩いて行く。
街を囲う壁に着いた。
お城まで進み、ケースを下ろす。
三人衆を外に出すと、青い顔をしたまま、お城へ入って行った。
哲治は、周辺を見て回る。
例のドラゴンが降り立った先。
あの時、ドラゴンの目線が一瞬向いた場所。
近付いて行くと、瓦礫の先に地上絵があった。
あの崩落した塀の近くに描かれていたような図形。
……魔法陣だ!
哲治はお城に戻り、ヴァレルを呼ぶ。
三人衆が慌てて出てくる。
「どうした。ドラゴンか?」
哲治は首を振り
「魔法陣を見付けた。見て欲しい」
そう言って、ヴァレルとルヴァンを掴む。
魔法陣の場所まで行き、上から見てもらった。
ルヴァンが、
「召喚魔法陣に似ている。しかも、起動しているな。何か召喚し続けているようだ」
ヴァレルが言う
「魔力の供給は、どうなっている?」
「あれだ!」
ルヴァンが、指差した先に蓄魔石があった。
哲治は、二人を地面に下ろし、聞いた。
「この魔法陣、消したら不味い?」
ルヴァンが懐から紙を出し、
「もう一度、持ち上げてくれ、紙に書き留める」
そう言ってきた。
哲治はルヴァンを掴み持ち上げる。
ルヴァンは、紙に魔法陣の気になる部分を描いていく。
ひと通り描き終えたので、ルヴァンを下ろす。
「消すのは、待ってくれ。この魔法陣を戻ってから解読する」
とルヴァンが言う。
ヴァレルも
「あのドラゴンは、これを守っている可能性もある。様子を見た方が良い」
と言った。
哲治も同じ考えに至った。
ただ、欲しかった蓄魔石。
嫌がらせも兼ねて、ポケットにナイナイした。
お城に戻った三人衆の探索を待つ間に、バットやノコギリなどを回収し、バットはバットケースにしまい、ノコギリなどはロープで身体に巻き付けたりしていた。
三人衆の探索が終わり、三人と戦利品を飼育ケースに入れて、来た道を戻る。
皆、少しだけ体調が悪そうだ。
聞くと、少し息苦しさを感じたらしい。
前回、自分が感じた感覚と一緒だ。
早く戻りたいが、常に上空を気にしながら歩いて行く。
あのドラゴンは、何を守っているのか。
何を召喚しているのか。
手を出しては、いけないことなのか。
ドラゴンから見れば、勝手に人の庭に入り、勝手に開拓した人間。
火を吹いて、撃退するのも当たり前だ。
だが、あの魔法陣が魔物を生むものだったら。
この世界の人や動物を、魔物に変えてしまうものだったら。
正義はどっちにある?
2話連続投稿です。
続けて第73話もお読みください。
宜しくお願いいたします。




