表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/89

第70話 巨人覚醒

 哲治は目を覚ました。

 見慣れない天井だ。

 天井じゃない。

 ブルーシートが風で、はためいている。


 胸に重さを感じた。

 首を上げ、自身の胸を見る。


 ……シータが寝ていた。


 何が何だか分からない。

 ゆっくり眠れた感覚があるだけだ。


 体が動かない。

 右手でシータを退かそうとしても、自分の腕ではない感じがする。


 左手を動かそうとした時、痛みが走った。


 ……思い出した。


 魔物領の翼竜。

 やつが火を吹いた。


 とっさに顔を庇い、反転したが、左腕を焼かれた。

 二発目が来る前に逃げた。


 ……逃げ延びたのか?ここまで?



 思い出せない。

 切り株が邪魔だったことは覚えている。



 首を右横に回すと、リリアーナ王女とマーリンが寝ていた。

 二人の見慣れた寝顔。

 安心感が押し寄せる。

 ……王女、白目じゃない!


 今度は、左に首を回す。

 ラムダとクルーガ、それに医療を勉強している人たちが寝ていた。



 胸の上でシータが動いた。

 首を上げる。


 寝ぼけ眼と眼が合った。


 シータは何度か目を擦り、

 「∑∇、∅π、Θ」

 叫んだ。


 うん。分からん。


 左右から、ゴソゴソ音が聞こえた。


 右側を見ると、王女が目を見開いて、

 「ゆ、勇者様〜」

 と言って両手を広げ走ってくる。


 動き難い首を思い切り左に向けました。

 顔面ダイブは怖いって。


 クルーガが慌てて外へ出ていく。


 ラムダも何か言っている。

 うん。分からん。



 その後、物置前シティーの住人たちが、ひっきりなしにやって来る。

 「大丈夫か?」

 「良かった」

 「俺たち頑張ったぞ」

 一言言って去っていく。


 少し右手が動くようになったので、手を上げて応えていた。


 ブルーとライナーが来た時に

 「何があったの?」

 と聞いたが、

 「それはこっちのセリフだ。……もう少し良くなったら話す」

 と言って教えてくれなかった。



 食事のことを聞かれたが、腹は減っていない。

 水が欲しかったので、ストローの説明をして、職人に竹で作ってもらい寝たまま飲んだ。



 時間が経つにつれ、体が動くようになってきた。

 左腕は突っ張ったような痛みはあるが、火傷痕は小さかった。

 シータたち医療班に御礼を言う。


 夜には座れるようになった。


 寝ていた場所は、建設途中の返還の館だ。

 入口面に大きな木の板が目隠しのように立て掛けてある。



 腹も少し減ったので、ずーといるリリアーナ王女に頼んだ。

 マーリンが走って行った。

 王女はニコニコしていた。


 間が持たなかったので、“リリアーナダンス”をリクエストしようとしたところで、たまごボーロパンが運ばれて来た。



 深夜になり、ヴァレルとブルーがやって来た。


 リリアーナ王女は夢の中だ。

 藁で寝ているが、良いのか!?

 王女だぞ!……王女だよね?



 ヴァレルとブルーに話を聞いた。


 「何がどうなったんですか?」


 ブルーが答える

 「お前は、防壁の所で倒れていた。10日前だ」


 「10日前?そんなに?」


 ブルーは頷く

 「この街の住民が力を合わせて、ここまで運んだ。住民たちに感謝しろよ。カカカ」

 笑ったあと真顔で

 「左腕の火傷は酷いもんだった。治療班にも、いや紙や布を用意した住民たちにも感謝しろよ。あと、王女殿下も心配して、ずっとお前を看病していたんだ。ちゃんと感謝しろ」


 哲治は言葉が出なかった。

 この巨体を塀から運んだ。

 もの凄く大変だったと思うが、想像が出来ない。

 それに、多くの人たちが自分を救うために動いてくれた。



 ヴァレルが口を開く

 「テツジ殿に火傷を負わせた奴が、ここへ来た」


 哲治は息を飲む

 「あの翼竜の魔物が?街は無事なの?」


 「安心しろ。街は無事だ。翼竜の魔物ではなく“ドラゴン”と名乗った」

 ヴァレルが言った。


 「……名乗った?言葉を話す……?」


 ヴァレルは頷くと

 「多分、200年以上前に召喚したオオトカゲの生き残りだ。意思疎通で会話が出来る」


 哲治は混乱していた

 「……魔物じゃない。……召喚されたオオトカゲ。……会話出来る」

 哲治は思い出す

 「あっ!確か火を吹く前に喋った気がする。何を言ったか分からなかったけど。……それに召喚されたオオトカゲって、前に聞いた。逃げ出したって」


 ヴァレルが頷く。



 ドラゴン……龍。

 伝説の生き物。

 ここまで来た。

 俺に殺すため!?


 この場所まで運んでくれた。

 隠してくれた。

 治療し、看病してくれた。

 だから助かった。


 まだ、生きている。

 先程までとは違う、実感の有る感謝の気持ちが、次から次へと胸の奥から溢れ出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ