第69話 王女の気持ち
2話連続投稿の2話目です。
第68話を先にお読みください。
リリアーナはテツジが倒れたと聞いてから、落ち着かない日々を過ごしていた。
倒れたと聞いてから五日が経つ。
勇者シティーの人々は、それぞれが出来ることをしている。
力がある男性たちはテツジの元へ行き、残った男性や女性、子供は布を用意し、紙を漉き、物資を整えている。
皆、必死で勇者を救おうとしている。
リリアーナも何か手伝いたかった。
リリアーナが手伝おうとすると
「王女様は、私たちに数字や計算を教えて下さいました。それが凄く役に立っています。どうぞ王女様は、私たちを見守り下さい」
と、言われてしまう。
王族に生まれたことを、初めて悔しく思った。
マーリンに相談し、侍女たちが担当していた返還の館の掃除を手伝わせてもらう。
ここに負傷したテツジを運ぶ予定だ。
テツジハウスの入口には段差がある。
それに、テツジ以外、誰も扉を開けられない。
返還の館を出来るだけ清潔にするため、一心不乱に掃除をする。
そして、乾燥させた麦藁を敷いていく。
慣れないことばかりだが、体を動かすことで気持ちも落ち着いてきた。
夕方になって、テツジが近くまで運ばれてきたと知らされる。
残った男性や女性たちが松明を用意し、整備された街道に並ぶ。
日が暮れた後、火を灯し誘導するのだ。
リリアーナも侍女たちと一緒に並んだ。
松明は持たせてもらえなかったが、松明を持ったマーリンの横に立つ。
灯りの魔道具を使わないのは、魔石を治癒の魔法陣に回すためだ。
日が落ち、周囲が月明かりに変わる頃、沢山の赤い光が見えた。
赤い光は中々大きくならない。
空気が冷え、松明の炎が妙に暖かく感じた頃。
ハッキリと姿が見えた。
沢山の男性が、掛け声とともに綱を引っ張っている。
後ろから、丸太を担いだ男性たちが走り、前へ前へと置いていく。
ゆっくり近付いてくる。
リリアーナ頬に、一筋の涙が流れた。
テツジの姿を見たからなのか、王国民の懸命さを目の当たりにしたからなのか分からない。
誘導役も走り、誘導路を伸ばしていく。
リリアーナは、テツジの顔を見たかったが、マーリンと一緒に移動し、道標を作るひとりになった。
翌朝。
ついにテツジは返還の館の入口まで運ばれた。
返還の館の入口には、石大工のガンツが用意したサッカーボールという、丸い物が沢山置いてある。
ソリから青いシートごとテツジを下ろし、ボールを使って藁まで運ぶ。
テツジを運んできた男性たちは、3日間力の限りを尽くしたが、最後の力を振り絞り、テツジを藁に寝かせることに成功した。
皆、テツジを心配しながらも、三々五々寝床へ帰っていく。
リリアーナは、その者たちの背中に向けて、無意識に深く頭を下げた。
シータとラムダ、それにクルーガに加え、治療院で働く者たちがテツジの火傷を治療し続けていた。
リリアーナと侍女たちは、大工から脚立を二台借り、テツジの頭に乗せた濡れ布の交換を行っていた。
リリアーナは、テツジの顔を間近で見て、嬉しさと不安が交互に訪れ鼓動の速度を抑えられなかった。
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