第67話 巨人崩壊
物置前シティー。
ブルーはルヴァンの家の通信室にいた。
「ふー、モールスというのは慣れんな。ルヴァン卿、早く会話出来るようにしてくれよ」
「今は駄目だ」
ルヴァンは、顔も上げず
「返還の魔法陣で手一杯だ」
と言う。
「それは、転送魔法陣じゃないのか。ふたつ対で有るよな。そろそろ本格的に返還の魔法陣に取り掛からないと、テツジ殿が暴れるぞ」
そう突っ込んだのは、ヴァレルである。
ブルーは、
「ヴァレル卿の方はどうだ?隷属の首輪は無効化出来そうか?」
ヴァレルが答える
「仕組みは分かった。後は解除の手法だな。それと、これはシギリードの首輪だ。王家の首輪の現物が欲しいが、国王の許可は出ないだろう……」
「だろうな。無効化だからな。バレたら極刑だな。カカカ」
ブルーが笑う。
ルヴァンが何か気付いたように
「そういえば、テツジの召喚の時の首輪があるはずだ。瓦礫の下か?ガンツたちに聞いてみれば良い」
そんな危険な会話をしていると、玄関の扉がノックされ、返事をする間もなく扉が開く。
そこにはライナーが居た。
「おっさん!テツジ殿が大怪我を負って、防壁の所で倒れていると、見廻りから連絡があった」
叫ぶように、ライナーは言った。
ブルー、ルヴァン、ヴァレルは、驚きの表情を見せる。
「テツジが大怪我!?」
ブルーが問う
「何があったか分かるか?」
ライナーは首を振り
「詳しく分からない。意識がないようだ」
ブルーは、ライナーに
「第2大隊を集めて、防壁へ向かわせろ。シータとラムダ。それと、クルーガに声を掛けろ。馬車は有るか?無ければ荷車で行ってもらえ」
ブルーはさらに
「大工や職人にも声を掛けよう。言ってくる」
直ぐに外へ走り出した。
ヴァレルが、ライナーに
「クルーガには、防壁まで行ってもらう。シータとラムダはこちらで治癒の魔法陣を大量に描いてもらおう」
そう言って、ヴァレルは駆け出そうとしたが、ルヴァンが止める。
「まて、これを持っていけ」
と言って、植物紙を大量に渡す。
ルヴァンが、ライナーに向かい
「テツジ殿の状態、詳しく分かるか?」
ライナーは、
「大怪我と……直ぐに確認する。分かったら治療院に伝える」
と言うとともに走り出した。
ブルーは目に付いた男たちに声を掛け、人を集めて行く。
石大工のガンツが、ブルーに
「テツジが大怪我だって?それで、こっちに運んでくるのか?クラケン号はテツジハウスに立て掛けてあるから、直ぐに使えないぞ」
ブルーは物置を見る。
確かに人輸送用クラケン号は立て掛けてあった。
倒して使おうと思えば、時間が掛かる。
怪我人が出る可能性もある。
荷物運搬用のクラケン号は、テツジが持って行っているのだろう。
防壁前で治療するしかないか。
ブルーがそう考え出した時、ガンツが
「あれ使えねーか?」
指差した先には、返還の館の屋根部にかかった青いシートがあった。
ブルーはガンツに
「降ろせるか?」
「直ぐに降ろす。少し待っていろ」
ガンツが、返還の館へ走る。
「ブルーシート降ろせー!テツジの一大事だ!それでテツジを運ぶぞー」
ガンツの叫び声が聞こえた。
ブルーは苦笑いを浮かべる。
「"ブルー"シートとは、ライナーだけじゃなく、勝手に人の名前使いやがって」
独り言を言いながら走り出した。
『叱ってやるから、元気になってくれよ』
そう思いながら、ブルーは父親であるルイーゼ辺境伯の元へ、馬を駆ける。
何が起こったのか分からない。
分からない恐怖が心を染める。
■■■
ライナーは部下を二人伴い、馬で防壁へ向かう。
代わりの馬も用意し、並走させる。
いつもの道程が遠く感じた。
ほどなくして、倒れたテツジが視界に映る。
うつ伏せで、ピクリとも動かない。
近付くにつれ、状態が見える。
左の袖が途中からなくなっている。
そこから見える左前腕が焼けていた。
火に包まれた!?
テツジは火を使わない。
魔物領の木は火に強く、火災は起こらない。
何が起こった……。
焦りと不安。
ライナーは、部下2人に指示を出す。
「テツジは、大火傷。直ぐに治療院へ連絡!馬を乗り換えて走れ!」
テツジは大丈夫なのか。
テツジを失うかもしれない恐怖が心を染める。
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