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第62話 変異種

 涼の季節です。秋です。


 秋と言えば、スポーツ!一択の哲治です。

 食欲の秋?……腹が減りません。

 読書の秋?……本がありません。字も読めません。


 これでも、文字習おうと思ったんですよ。

 この国の文字は、表音文字と聞いています。

 ローマ字式です。


 簡単だと思うでしょ!?


 “意思疎通”の魔法が掛かっているので、こちらの発音が分かりません!

 例えば、“雨”って英語で“レイン【rain】ですよね。

 レインをローマ字表記にすると、“rein”です。


 でも、こっちの人が、いくら“レイン”と発音していても、“雨”にしか聞こえない。

 ローマ字表記にしたら、“ame”ですよ。

 

 諦めることも大事なこと。

 先輩の言葉が身に沁みます。


 

 返還の館の建設も順調です。

 なぜなら、当初の責任者ガンツが、首になりました。


 あいつ遊び過ぎだって。

 サッカー教えたら、何かの動物の膀胱を使ってサッカーボール作り上げやがった。

 ゴルフボール蹴って怪我すればいいのに。


 でも、この国の人たち凄いね。

 こんな感じって説明だけで、完全な形にしてしまう。

 普通は、トライ&エラーだぞ。


 哲治重機も頑張っていますよ。


 魔素紙の結果から、魔物領で採掘された石の方が、魔力の通りが良いのではないか、と言うことで採掘、運搬、積み上げとフル稼働。


 まあ魔物領石は、床に使うだけらしい。


 

 更に、水道事業も良い感じで進んでいます。



 さて、話は戻りますが、スポーツの秋です。

 本日は、午後からお休みをいただきました。


 テツジカントリークラブへ行ってきます。

 右ドッグレッグPAR4と、池越えPAR3の2ホールのみです。

 

 グリーンは草むら。

 フェアウエーは、ほぼ土なので、職人に人工芝マットを作ってもらいました。

 人工芝は無いので、イービルモンキーの毛皮で代用です。


 これの為だけに、イービルモンキー狩りしていました。

 これの為だけに、職人を酷使しました。


 ごめんなさい。

 でも、おかげで畜魔石の充電も順調です。



 まずは、PAR4のホールへ行きます。

 ドライバーを握り、フルショット!


 ナイスショ……どスライス……ボールが右の森へ消えていく。

 フェアウエー狭すぎ……。


 貴重なゴルフボール。

 ゴルフバッグを担いで、フェアウエーを走る。


 ボールが入り込んだと思われる場所へ着くと、バッグを降ろし森へ入って行く。


 「ボールちゃーん。出ておいでー。どこに居るのー。返事してー」

 と大声を出しながら探す。


 すると、奥の方から

 「ウウウ……」

 と声が聞こえてきた。


 哲治は驚いたが、異世界って何でもアリだなと呑気に思っていた。

 声がする方へ行くと、ゴルフボールではなく人が倒れていた。


 慌てて哲治は掛け寄る。


 近付いてみると、人の形はしているが、見える肌は薄緑色になっている。

 顔も殴られた後のように腫れあがっていた。

 呻いている。

 まだ息がある。


 本物の“ゴブリン”か?

 サイクロプスもそうだし、ゴブリンも服は着ていないと聞いている。

 でも、この魔物……服を着ている。


 逃げ遅れた兵士?

 紛れ込んだ住人?


 もしかすると、何かの感染症に(かか)っているかもしれない。


 

 哲治は、一旦ゴルフバッグの置いてあるところに戻り、ゴルフバッグからタオルを取り出す。

 タオルで鼻と口が隠れるように顔を覆い、後頭部でタオルを結ぶ。


 もう一度、森に入り、薄緑色の謎生物をゴルフグローブ着用の左手で持ち上げる。


 イービルモンキー芝マットに包んで、塀まで走って行く。

 

 塀まで着くと、塀の手前で、マットに包まれた状態のまま謎生物をそっと置く。

 ゴルフグローブとタオルを外し、塀に掛ける。


 哲治は、塀を跨ぎ、物置前シティーへ走る。


 

 物置前に着くと、大声で

 「ブルーさん、ライナー、ヴァレルさん、クルーガ集まってー」

 四人の名を呼んだ。

 大声で叫べば、街中に聞こえる。

 こういう時だけは、巨人で良かったと思う。



 四人が集まったところで、哲治は簡単に説明する。

 感染症の疑いもあるので、布で鼻と口を覆い簡易マスクをしてもらう。

 二代目クラケン号に乗ってもらい、塀まで走る。

 いつもより少し、早く走ったのは御愛嬌だ。



 塀から少し離れたところで止まり、四人に降りてもらう。

 クルーガは四つん這いだ。

 初体験おめでとう。


 野球バッグに入れてあった使い捨てのマスクを装着し、目印に掛けたタオルの方へ行く。

 塀を跨ぎ、謎生物をマットのまま持ち上げ、再び塀を跨いで戻る。


 四人に見えるように、マットを開いて斜めにする。

 

 哲治は、謎生物を落とさないように気を付けながら

 「ブルーさん、ライナー。これは“ゴブリン”で合ってる?」


 ブルーとライナーは謎生物を遠目で観察し、

 「確かに似てはいる。だが肌の色が少し薄い気がするな。それに服を着ているのが奇妙だ」

 ライナーが答えた。


 ブルーも

 「そうだな。ゴブリンと人間の中間みたいだ」

 と言った。


 哲治は、立ち直ったクルーガに

 「何かの感染症とか、そういう事例はない?」


 クルーガが口元を片手で押さえながら

 「ウップ……肌が……緑色になるような……、病気は聞いたこと……ない。ウエッ」

 言い終えると、両手で口を押さえ走り去った。


 「ヴァレルさんは、何か心当たりある?」

 そう哲治が問うと、ヴァレルは

 「仮説だぞ。あくまで仮説だ」

 と前置きをして


 「もしかすると、魔力の無い人間が、濃い魔素を浴びて、変異したのかもしれない」

 衝撃の発言が飛び出した。


 ライナーが言う

 「他の魔物の魔石を食った魔物が変異するという話がある。人も同じなのか?」


 ヴァレルは

 「確証はない。“人が魔物になった”と言う話は聞いたことが無い」


 ブルーが静かに言う

 「魔石が体内にあるか、確認しよう」

 

 ブルーが哲治に近付き、マットを下ろすように言う。


 哲治は目を逸らした。

 まだ、息があったはずだ。


 

 体内から、ゴブリンの魔石よりも小さな魔石が出てきたらしい。


 塀を超え、マットに包んだまま魔物領に埋めた。



 魔力の無い人間。

 帝国のスパイが、逃げ込んで変異してしまったのか?

 しかし、魔物に襲われず、生き延びられるとは思えない。

 ゴブリンの変異種なのか。



 哲治は、自身に魔力が無いことは分かっている。


 いつか、自分も変異してしまうのか……。


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