第59話 招かれざる客
調子に乗った哲治です。
反省しています。
そうです。
調子に乗ると余計なことをする子なんです。
会社では、先輩のフォローがありました。
草野球でも、チームメートが居ました。
物置探したら、先輩出て来ないかな?
辺境伯に調子に乗って、鉄道の話をしてしまいました。
あの後、めちゃくちゃ大変でした。
引っ切り無しに聞きに来ます。
タービンとか、ピストンとか説明出来ませんよ。
でも、知らないと言いたくない年頃なんです。
蒸気で回したら、なんとかなるっしょ。
“ドリルではなく、穴を売れ”
領内の指標にしないでください。
先輩から聞いた、聞きかじりです。
「切り替え、切り替え。バッチこーい」
はい、切り替えました。
東から来た人たちが、やたら魔物領の水道設備に興味津々です。
職人ではなさそうなんですが、見せてほしいと言っています。
自己責任で、見に行って下さいと、言っておきました。
今日はそれどころではないのです。
何と!皇太子殿下が、視察に来ます。
先触れで、数日前に連絡がありました。
物置前シティーと、水道設備の視察です。
皇太子殿下は、東の砦に赴任していましたが、昨年の騒動で、シギリード公爵の裏に帝国の存在が見えたため、王都に5年ぶりに戻ったそうです。
本日、午後から水道設備の視察予定。
リリアーナ御殿に泊まり、明日昼頃に辺境伯領へ行く予定です。
勿論、テツジシャトルバスです。
あっ、貸切ですので一般の方のご利用はご遠慮下さい。
皇太子殿下、ご到着です。
哲治、リリアーナ王女、ヴァレル、ブルーでお出迎えいたします。
ちなみに、ヴァレルは「魔術大臣辞めた」と言っていましたが、国王は認めていないそうです。
ブルーも、実は軍務大臣に任命されているらしい。
皇太子が、苦笑いで話してくれました。
早速、二代目クラケン号に、皇太子殿下、王女殿下、ヴァレル大臣、ブルー大臣、マーリン侍女頭、近衛兵数人が乗り込みます。
説明のため、ガンツを始め数人の職人が同行しますが、同じ二代目に乗せる訳にはいかないので、三代目Jクラケン号に乗ってもらいます。
東の人たちも何人か、皇太子殿下の許可を得て、連れていきます。
近衛兵による身体検査は、バッチリです。
テツジ観光バス出発です。
テツジ警備保障も兼ねています。
ひと通り見たいと言うことで、川まで行きます。
当然奥まで行けば、魔物が出ます。
キングボアとイービルモンキーが出ました。
二種類とも、攻撃パターンが決まっている感じなので楽勝ですね。
蓄魔石をかざし、ツアー客の中に解体出来るという人が居たので、魔石の回収だけお願いしました。
キングボアは、三代目に乗せて持ち帰ります。
ガンツ、文句言わない!
視察の時、リリアーナ王女とマーリンだけ二代目から降りてきません。
多分、中で寝ているのでしょう……白目で。
何しに来た!?
夕方物置前シティーに戻ります。
夜になってから、ちょっと事件があった。
水道施設見学ツアーに行った、東の出身者の数名が、体調不良を訴えた。
まだ、暑い季節なので、熱中症かと思ったが、どうやら違うようだ。
哲治も連れて行った責任を感じて、ラムダ&シータ治療院へ行く。
魔法で何とかしようとすると、余計に体調が悪くなるようだ。
通訳ヴァレルが、診察?観察して、
「これは、魔素酔いですな」
と言う。
「魔素酔い?」
哲治が尋ねる。
「魔力のない人間が、魔素を一度に取り込むと起こる現象です。東方面は魔素が少ないのか、慣れていなかったのでしょう」
ヴァレルが結論づけた。
「いや、東でも魔素はそれほど薄くはない。魔法も使用出来る。国境の山脈が壁になり、帝国側へは魔素は流れていないが」
何事かと付いてきた皇太子が異を唱える。
東の砦に5年居た人の意見だ。
「まさか、帝国の人間か?」
こちらも騒ぎを聞いて、駆けつけたブルーが言う。
「断定は出来ないが、おそらく……」
皇太子が言った後、難しい顔をした。
哲治も合わせて難しい顔をしてみた。
「水道のスパイか?それともテツジ殿の?」
ブルーが再度問う
「「両方だろう」」
皇太子とヴァレルの声が重なる。
スパイ……格好いい。
と、哲治は思っていた。
皇太子が少し笑って
「フフ、東の山で、少しやり過ぎましたか」
そう言って、哲治の方を見た。
帝国軍が東の山で演習をした時に、テツジに東の山へ行ってもらっていた。
テツジを見た帝国軍は演習をすぐに切り上げ、撤退したとの話が入っていた。
事情を聞いているブルーは苦笑いをし、事情を知らないヴァレルは、困惑の表情を見せる。
なぜか、哲治も困惑顔だ。
「どちらにせよ、魔素酔いであれば、魔素から遠ざけた方が良いだろう」
ヴァレルが言った。
「退席していただきましょう」
皇太子が冷たく言った。
この時、哲治は、帝国にお帰りいただくと思っていた。
「まあ、これで帝国からのお客様は、判別出来ますね」
皇太子がブルーに告げる。
ブルーは静かに敬礼し、哲治をチラリと見た。
良く分かっていないが、哲治の背中に冷たい汗が一筋流れた。
皆様、お読みいただきありがとうございます。
自分の中で、完結まで書き上げる目途が付きました。
徐々に完結に向け盛り上げていく予定です。
最後までお付き合い、よろしくお願いいたします。




