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第58話 試行錯誤

 ルイーゼ辺境伯領。


 領都に建てられた学校の一室。

 辺境伯と数人の部下たちが、ロの字に机を並べて、会議をしていた。


 「紙の進捗は、どうかの?」

 辺境伯が聞く。


 「はい、試作品はまだ、使用に耐えません。もう少し、繊維を細かくする必要があります。材料、製作工程を広げます」


 「うむ。分かったの。紙は革命を起こすじゃの。人も金も惜しむなじゃの」


 「はい。畏まりました」

  部下に一人が、深く頭を下げる。


 「活版印刷の方はどうじゃ?」

 違う部下に、辺境伯は聞く。


 「彫金技士、木工技士に作らせております。試作段階では、上手く行っております」


 「文字の大きさも色々作っておるかの?」


 「はい。滞りなく」

  辺境伯は頷き、また違う部下に話し出す。

 「トンネルはどうかの?」


 「地盤、地層の調査というのは出来ておりません。入口候補地と、直前になる出口候補地の調査は進めています」


 「うむ」

 辺境伯が、難しい顔をして答える。


 「破裂の魔法陣は、"開拓利用"という条件で、数枚融通してもらえます。王国の許可も頂いています」

 部下は慌てて、付け足すように言った。


 辺境伯は顔を上げ、

 「ドリルというものは、どうかの?」

 更に違う部下に質問した。


 質問された部下は、苦い顔をして言う

 「鍛冶師に相談しておりますが、あの形状は難しいとのことで、工房から造らないと何とも出来ないようです。鉄道も同じです」


 「う〜む」

 辺境伯は、目を瞑り腕組みをして唸る。


 「テツジ殿も人が悪いですね。ヒントはくれますが、後は考えろと」

 誰ともなく、そんな声が聞こえた。


 辺境伯は、静かに目を開け、

 「いやいや。テツジ殿も考えておるのじゃ。元の世界に戻った後に、わしらが困らんように、わしらに考えさせとるのじゃ」

 全員が大きく頷いた


 「"ドリルではなく、穴を売れ"じゃの。テツジ殿の言葉じゃの。わしは、考えたじゃの。つまりは、紙も、印刷も、トンネルも作れば良いと言うものじゃないの。どう利用するか、先を見ろと言うことじゃ」



 会議は、その後も続いた。



■■■


 アストレイア王城、国王の執務室。


 国王と宰相が、ソファーに座り話し合っていた。


 国王が話し始める。

 「タヌキの学校はどんな感じだ?」


 宰相が答えた。

 「かなり人が集まったようですね」


 国王は頷き

 「学校の方は、何人か入れたのか?」


 「はい。ただし、子供です。教師と事務方は無理でした。身体検査がかなり厳しいようです。力及ばず、申し訳ありません」

 宰相が、頭を下げる。


 国王は、手を振り

 「良い。仕方がない。……あのタヌキの情報網は凄いからな。根っからの商人だ」


 「子供も、“退学制度”があるようで、無理な調査は出来ません」

 

 国王は頷いてから、宰相に聞く

 「あの王都との間にある山を繰り抜いて、道を作るという話はどうだ?」


 「はい。岩盤を砕くため、“破裂の魔法陣”の作成、使用許可の申請がありました。枚数に制限をかけて許可しています。また、使用の際には、王都から立ち合いを出します」


 「迂回をしなくて済めば、王都民にも益はある。……こちら側からの援助は、魔法陣だけで良い。人足は数人潜り込ませろ」


 「かしこまりました。陛下、あと一点よろしいでしょうか?」

 宰相が問うと、国王は頷き、先を促す。


 「植物から安価な“紙”を作ろうとしているようです。これは、噂程度の情報ですが、一応お耳に」

 

 国王は、驚いた顔をした後、ニヤリと笑い

 「その技術は、欲しいな。勇者の入れ知恵か?……リリアーナからは、何の情報もないな」


 国王は続け

 「皇太子を、勇者の街へ視察に行かせる。辺境伯領も寄らせるか。水道以外も、情報を得るよう伝えよう」


 「それと、勇者の街への羊皮紙の出荷を抑えよ。代わりに、もっと人を送れ」

 国王は、静かに言った。



■■■


 物置前シティー。またの名を……言いたくありません。

 ネーミングライツですか、命名権料払いませんよ。


 固く誓う哲治です。


 新しく来た人々は、この街の呼び名を。「勇者の街」とか「英雄の街」と言います。

 ガンツや職人たちは、「テツジの街」と呼んでいるようです。


 リリアーナ王女に聞いたら

 「勇者様の街ですわ」

 と言っていた。


 ブルーに聞くと

 「英雄の街で良いんじゃねえか」


 って、お前らか!


 ここは、「物置前シティー」一択です。


 ……あっ、物置って一言も言ってないわ。



 よし、チラシを配ろう。


 「この街の名前は、“ライナー街”」

 って、書いて貼り出そう。



 ルヴァンに紙を貰いに行ったら。

 「最近、羊皮紙が入ってこない。テツジ殿、何とかしてくれ」

 逆依頼がきてしまいました。


 こうなったら、紙を作りましょう。


 小学校時の自由研究を、必死で思い出す。


 魔物領の木は特殊だけど、繊維はあるはず。

 竹から紙が作れるって、話も思い出した。

 ルヴァンの元隠れ家辺りに、竹っぽい植物が生えていた。


 

 無駄に木工職人を使い、簡易漉き舟を作ってもらう。

 この人たち凄い。

 適当なイメージで話しても、理解して作ってくれる。

 

 何か、木材にも詳しくて、ノリになる植物も教えてくれた。


 

 哲治は、木の繊維を砕く係。

 ええ、力仕事オンリーですよ。


 木工大工の皆様、紙漉きも頑張って~。


 

 あっ、この世界の文字、読めないし書けないわ。


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