第57話 男のロマン
暑の季節に入りました。
夏です。
海が呼んでいる!
……行きませんよ。
ええ、水着もありませんし、ギャルも居ません。
リリアーナ王女ですか?
王女様ですよ。
肌を晒すことはありません!
こっぴどくマーリンお頭に叱られた、哲治です。
海には行きませんが、辺境伯領へは行っています。
テツジシャトルバスです。
また、辺境伯から“相談”を受けました。
何でも、辺境伯領から王都に向かう途中、大きな山があり迂回をしないといけないそうで、昨年見せた“トンネル”を作れないかと相談を受けました。
ルイーゼ辺境伯と、辺境伯領の偉いさんたちと、一緒に現地視察です。
領都からも見えていたが、高い山々が、そびえ立っていた。
哲治から見ても、高層ビル群並みの高さだ。
哲治は、子供の頃に見たテレビ番組を思い出していた。
それは、ダム建設のためのトンネル工事だった。
色々な困難があり、完成されたと。
辺境伯に、説いていく。
「トンネル工事は、危険だらけです」
「何が危険じゃの?」
「まず、地層や地盤ですね。脆ければ崩れます」
「補強しても、難しいかの?」
「分かりません。専門ではないので。それに、水脈に当たれば大変なことになります。有害ガスも発生する可能性も有ります」
「“ユウドクガス”とは、何かの?」
「人に害の有る……気体ですね」
「害なす……キタイじゃの。キタイとは何かの?」
この国には、"魔素"という概念がある。
そのため哲治は、気体の概念があるものだと思っていた。
「気体とは……空気というか、身の回りに目に見えない物質が有るんです。例えば、水は寒いと凍ります。逆に温めれば、湯気を出しますよね。その湯気が気体ですね」
「つまり、目に見えない有毒なものが、出るかもしれないということじゃの?」
哲治は頷く
「その空気の中に、酸素と言って人が生きていくのに必要な気体も有ります。鼻を摘んで口を閉じたら、苦しくなりますよね」
哲治は、一同を見回すと、皆頷いていた。
「確かにじゃの」
「開かれた場所では、酸素は沢山有りますが、トンネルのような閉ざされた場所では、酸素が足りなくなる可能性が有ります」
「鉱山で、事故が多いのは、それが原因かの?」
驚いた顔で辺境伯は聞いた
「それは分かりません」
「だがの、王都までの輸送を早くなるようにしたいじゃの」
辺境伯が、残念そうに言った。
「どうしても、トンネルを掘るなら、先程言ったことは、注意して下さいね。あと、ドリルが要ります!」
高らかに宣言する哲治。
「ドリルとは何かの?」
「ちょっと待ってて」
と言いながら、哲治は走って二代目クラケン号へ行く。
屋根に載せてある工具箱から、キリを取り出し戻る。
キリを地面に刺し、穴を開けていく。
辺境伯たちは驚いていた。
気分を良くした哲治は、昔の漫画で見るような、三角錐に筋のあるドリルを地面に描き
「男のロマン!Theドリル!」
一同、拍手喝采である。
この絵のせいで、辺境伯たちが苦労するのは、また後の話である。
「硬い岩盤を砕くのに、ダイナマ……“破裂の魔法陣”が、あると便利ですね」
哲治は、ダイナマイトと言おうとしたが、この世界には、まだ火薬が無いかもしれない。
原材料は何となく覚えてはいるが、教えてはいけない気がした。
「エルフの魔法陣じゃの」
ドリルで気を良くした哲治は、
「早く王都に行くことが目的なら、鉄道と言う手も有りますよ」
と、また余計なことを言い出した。




