第54話 ゴブリン退治
暖の季節に入り、段々暖かくなってきました。
ウインタースポーツが出来なかったので、体が鈍っている哲治です。
いえ、嘘です。
哲治重機有限会社フル稼働でした。
違うんだよ!
スポーツがしたいのです。
青春という汗を流し、仲間と盛り上がる……飢えています。
と言うことで、魔物領の開拓と言いつつ、ゴルフ場造りに精を出しております。
右ドッグレッグ、PAR4、350歩。
完璧な計画です。
魔物領の森を無駄に伐採しています。
そう言えば、最近、サイクロプスを見ません。
名前覚えたのに…。
気になったので、ブルーたちに聞きました。
「最近、サイコロプス見ないけど、駆逐しきったのかな?」
ブルーが答える。
「案外、知性が有るのかもしれないな。テツジ殿を恐れて、森の奥に引っ込んだんじゃないか」
「ところでさ、この世界にゴブリンて、居るの?」
哲治は、唯一知っているファンタジーに固執していた。
今度はライナーが、
「ゴブリン居たな。……弱すぎて、兵士たちで、ほぼ駆逐したぞ。あいつら森の奥に行くことはないしな」
「なーんだ。そうか」
哲治は、がっかりしてしまった。
でも、そんな話をしていた数日後。
ゴブリンに出会った。
花咲く森の中~、ゴブリンに出会った~。
緑色の体に、のっぺりとした顔。
魔物領の入口付近。
背丈も小さい、10㎝ほどだ。
間違いない!
哲治が、歓喜に浮かれていると、ゴブリンたちが動き出した。
ゴブリンが持つ杖から、火の玉が発射される。
フヨフヨと哲治に向かってくる。
「すげー。ゴブリン魔法使うんだ!」
そう言って、哲治は火の玉を難なく避ける。
火の玉は、哲治の後ろの木に当たるが、木が燃えることなく消えた。
職人に教えてもらった。
魔物領の木は燃えにくいから、薪には向かない。
だから、焼き討ち出来ないらしい。
と余計なことを考えていると、ゴブリンたちが、次々に火の魔法を使ってきた。
あまりに遅いので、避けることに苦はないが、ちょっと鬱陶しくなってきた。
手に持っていた鍬を、逆に持ち直し、柄の部分で払うように地面ギリギリをスイング。
ゴブリンたちは、まとめて塀へ当たり、動かなくなった。
魔石を回収しないといけないが、小さ過ぎるので、哲治は、持って帰ってライナーに任せようと考えた。
動かなくなったゴブリンたちを掻き集め、両手で挟むように持つ。
数えたら、丁度10匹いた。
一度では無理だったので、二度に分け塀の向こう側へ運んだ。
ゴブリンの持っていた杖も回収する。
珍しい昆虫がいたら、捕まえようと思って持って来ていた、昆虫飼育ケースにゴブリンを入れる。
開拓用具も、三代目Jクラケン号に乗せ、物置前シティーへ戻った。
哲治は、戻るとすぐにライナーを探す。
こういう時に限って居やしない。
せっかくゴブリン捕まえたから、“どや顔”しようと思ったのに。
ヴァレルが居たので、声を掛ける
「ヴァレルさん。ライナー知らない?」
「ライナー大隊長か。見てないな。何かあったのか?」
「ゴブリン捕まえた。ヴァレルさんゴブリン知ってる?」
「知ってはいるが、ゴブリンは何年も前に駆逐されたと聞いたぞ」
「それがさ、居たんだよねー。ほら」
と言って、哲治は飼育ケースをヴァレルに見せる。
ヴァレルは、飼育ケースの中を見て、表情が固まる。
「テツジ殿。これはゴブリンではなく、人間だぞ」
「え⁉……でも、魔物領に居たし、魔法撃ってきたよ」
「魔法が使えるのは人間だけだ。それに、この国の人間だけだ」
今度は、哲治が固まった。
「えー⁉……でも、でも、えー⁉」
「一人出してくれんか」
哲治は、ヴァレルに言われた通り、飼育ケースから一人摘まんで出し、ヴァレルの前へ置いた。
確かに言われてみれば、緑色の肌ではなく、深緑色のローブを着ている。
顔も、のっぺりとした顔ではなく、お面を被っているように見えた。
ヤバい……。
哲治が、そう思って焦っていると、ヴァレルは、その死体の仮面をはがす。
確かに人だった。
焦る哲治。
背中に汗が流れる。
ヴァレルは、深緑のローブを見て
「この色のローブ。もしかすると、シギリード公爵の影かもしれん」
そう呟く。
「シギリード公爵?……あの、ラムダを監禁していた魔術師?」
哲治は、思い出す。
「いや、やつの兄だ。シギリード公爵家の当主じゃよ」
ヴァレルは続けて
「聞いたことがある。シギリード公爵は、暗殺部隊を持っていると。それが、深緑のローブを着ているとな」
「……暗殺?」
「杖が有るな。テツジ殿。それを見せてくれ」
哲治は、杖を取り出し、ヴァレルに渡す。
ヴァレルは、杖を観察しながら言った。
「火球の魔法陣が描かれておる。テツジ殿を害そうとしたのだろう」
……何で?




