表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/44

第5話 それぞれの思惑② ~王国第二王女リリアーナ~

今回は王女視点です。

 召喚の儀の3か月前。

 王宮の一室で、王国第二王女のリリアーナ・エルディアス・フォン・アストレイアは、そわそわしていた。


 部屋の中をウロウロしていると、侍女がクスクス笑っている。


 「姫様、落ち着いてください」

 「だってー。勇者召喚よ。立ち会えるかもしれないじゃない」

リリアーナは、頬を膨らませる。

 

 「まだ、名代に決まったわけではないのですから…」

かぶせるように、リリアーナは言う

 「可能性はあるわ。第一皇子は東の砦でしょ。第二皇子は未成年だし、お姉さまは、もうすぐ輿入れだから、無理じゃない」

 「姫様、お言葉が…」

と、侍女が言いかけると、部屋の扉がノックされる。


 侍女が駆け寄り、扉を開けると、一人の近衛兵が立っていた。

 扉を開けた侍女に、近衛兵が耳打ちをし、敬礼をして去っていく。


 扉を閉め、残念そうな顔をして侍女は、リリアーナの側へ行く。

 リリアーナは、不安感に襲われ


 「な、何かあったの?」


 「姫様…残念ながら、名代に…決まりましたー!」

そういって、侍女は微笑んだ。


 それを聞いて、リリアーナは、

 「もう~からかわないで。」

と、言いながら満面の笑みを浮かべた。



 

 リリアーナは、勇者召喚に憧れを持っていた。

 子供の頃、今は亡き祖父から話を聞き、勇者の英雄譚に、心を踊らされた。

 異世界より来国し、我が国のために、命を懸けて戦う物語。

 祖父にせがんで、何度もお話をしてもらった。



 その召喚の儀が、いよいよ明日に迫っていた。

 

 遅れてはいけないと、12日前に王宮を出立し、無事に前日には、召喚の館に着いた。

 リリアーナは、召喚の館に隣接した、王族用の建物の一室にいた。

 もう夜も遅いため、ベッドに入ったが、眠れる気配がない。


 起き上がり、ベッド脇のテーブルに置いてある水差しから、水を木のコップに注ぎ、一口飲む。

 王宮では、ガラスのコップを使用しているが、移動で破損する恐れがあるため、木のコップが用意された。

 王都から出たのも初めてで、色々な体験が、彼女を益々興奮させた。


 明日の予行練習しておこうかしら。


 何度目かの、予行練習が始まる。


 ベッドから降り立ち、背筋を伸ばす。

 「アストレイア王国、第二王女リリアーナ・エルディアス・フォン・アストレイアが、アストレイア国王に代わり、召喚の儀、執行を命ずる」

 隣の部屋で待機している侍女に、聞こえないよう小声で言う。


 「勇者の皆様、よくぞお越しくださいました。神様より遣われし英雄たちよ、我らをお救いください」


 うん、完璧と、一人満足をする。


 ベッドに戻り、目を瞑って、心の中で明日のセリフを繰り返すうちに、深い眠りに落ちた。



 当日の朝、朝食を取った後、侍女3人と、護衛の近衛兵10人と一緒に召喚の館へ赴く。


 前日までは、召喚の館に近づかせてもらえなかったので、見るものが全て新鮮であった。

 時折、壁などを触ると、侍女たちに笑われてしまった。

 それでも、キョロキョロ周りを見ながら興奮を抑えきれなかった。


 召喚の間に着くと、最上級魔術師が近付いてくる。名前が思い出せない。

 侍女が「カリス卿です」と耳打ちしてくれた。ありがとう。



 召喚の儀が始まる。


 何度も練習したセリフを言う。

 「アストレイア王国、第二王女リリアーナ・エルディアス・フォン・アストレイアが、アストレイア国王に代わり、召喚の儀、執行を命ずる」

 ホッと、一安心。


 魔法陣が、光り輝き出した。

 今回の召喚は、20名ほどと聞いた。

 どんな方達が来るのだろうと、ドキドキしながら魔法陣を見つめる。

 光が眩しすぎて、目が開けていられない。


 ゴゴゴゴ…と音が鳴り出す。

 召喚の瞬間を見たいけど、眩しさで、薄目しか開けられない。

 大きな音が、天井付近で鳴ったあと、光が収まった。


 目を開けると、銀色の巨大な建造物が立っていた。


 この中に勇者様がいるのかしらと、思いながら、姿勢を正し待っていた。

 侍女たちも、近衛兵たちも騒めいていたが、皆、召喚の儀を見るのが初めてだったので、異変には気付けなかった。


 目の前の大きな扉が開いた。と、思った瞬間、巨大な何かが飛び出してきた。

 何かに拘束され、浮き上がる。

 「キャー」

 悲鳴が出たが、次の瞬間、気を失っていた。



 「…姫様、姫様」

 いつもの侍女の声で、目を覚ました。

 侍女の一人が手を握り、泣き顔で呼んでいる。

 微笑むと、抱き着いてきた。


 侍女の肩を押し、顔を見て、真顔で聞く

 「…マーリン…、何があったの?」

 マーリンと呼ばれた侍女は、しゃくりあげながら

 「皆、多分死んでしまいました。あの巨人が、暴れたのです」


 リリアーナは、最初意味が分からなかった。

 言葉として聞こえているが、心が拒絶していた。

 「皆、死んだ…。エマ…、サーシャ…」

 ここに居ない侍女の名を呟く。


 そして、周囲を見渡す。

 ガラス張りのような建物に、自分と侍女が閉じ込められている。

 隣の同じような建物に、魔術師2人と、近衛兵のピピンが居た。


 そして更に、無機質なベージュ色の巨大な壁と床。

 開け放たれた部分からは、瓦礫の山が見える。


 反対側には、見たこともない巨人が、座っていた。

 なぜか胸の奥が、冷たくなっていく。…涙も出ない。


 ピピンと巨人が、何か話している。

 「この星は、地球か?」

 「星?…星とは、夜空に光るものだろう。何を、言っておる」

 「まあいい。それでお前ら、何をした?」

 「それは…」


 リリアーナは、この巨人には敵わないと、理解した。

 敵対すれば、王国は壊滅する。

 巨大なだけではない、知性も感じさせる物言い。


 彼女は、毅然と言い放つ。

 「よい。全て答えよ」


 すると、カリス卿が叫びだす。

 異世界人を奴隷にして使役?

 驚愕の事実に耳を疑う。


 「よし。お前だけ解放」

 指した指先にいたのは、ピピンだった。


 彼女は理解した。

 自分は人質なのだと。


 しかし、第二王女である自分には、人質としての価値は皆無だ。

 あと、2年もすれば他国へ輿入れする、単なる政治の道具に過ぎない。

 

 深呼吸をしながら考えた。

 この巨人に、価値のある人質と、思わせなければいけない。

 そして、巨人との和解。


 あと出来ることは、国王が、間違った判断をしないよう祈ることだけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ