第49話 黒い影
海に行きます。
マリンスポーツ何も出来ませんが、朝から、テンション爆上がりの哲治です。
同行者をクラケン号へ乗せ、出発です。
今回は、ブルーも役人も居ますので、迷わず行こう……です。
少しだけ、ペースを上げます。
クラケン号のお客様から、クレームが出ますが、安全よりスピードです。
君たちは、宿泊出来るから良いですよね。
野宿は辛い。
と言うことで、弾丸ツアーです。
哲治は、快走を続ける。
目の前に海が見え始めた。
また、少しだけスピードが上がる。
怒号と、悲鳴も上がる。
気にせず哲治は走り、海岸へ到着。
役人からは、辺境伯の領都へ向かうよう言われていたが、案内役が寝てしまったため、海を目指した。
ブルーとライナーは、何が可笑しいのか、大爆笑している。
透き通った海。
元の世界では、映像でしか見たことのない、綺麗な海が広がっていた。
哲治は、海に向かって叫ぶ
「青い空、青い海、バカヤロー!」
「フォフォフォ。噂に違わぬ御仁じゃな」
哲治の後ろから、笑い声と聞きなれない声がした。
哲治は後ろを振り向く。
そこに、杖で体を支える老人が立っていた。
誰?
ブルーが、老人に走り寄る。
「父上、なぜ此処に?」
「おお、ブラッド。久しいの」
ブラッド⁉
ブルーの本当の名前?
後で、問い詰めよう。
「あっ、ご無沙汰しております。父上。領都でお待ちでは?」
「ああ。テツジ殿の噂を色々聞いての。領都には来んじゃろと思うての。フォフォフォ」
え⁉読まれてる。
行動、先読み?
老獪じゃなくて、“妖怪”先読みジジイ!
怖い……。
老人は、哲治を見上げ話し始める。
「わしは、南部を任されておる、ソロモン・ルイーゼじゃ。テツジ殿、お会い出来て光栄じゃ」
哲治は、片膝を付いて頭を下げる。
「こちらこそ、お会い出来て恐悦至極です。いつも御援助ありがとうございます」
出来る社会人、難しい言葉を使いこなします。
「丁寧な挨拶じゃの。海へ直接来られたのは、わしの懸念を知ってかの?テツジ殿は、識見に優れたお方じゃ」
褒められた!
誤解なのに嬉しい!
哲治は、浮かれ
「それで、ご懸念とは?」
つい、聞いてしまった。
ブルーの顔が固まる。
しまったー。これ、やっちゃった感!
「この海にの、何かおるようで、海運の船が襲われるのじゃ。それを調査してくれんかの?」
ルイーゼ辺境伯が、困った顔で言う。
「テツジ殿の活躍は聞いておるでの。優れたその頭脳で、何が起っとるのか、調べてくれんかの」
「そう言うのは、国のお仕事では?」
哲治が、そう言うと
「海運は、王国に内緒だでの。国王には言えんのじゃ。フォフォフォ」
やばすぎるでしょ。
哲治頭脳フル回転。
「すみません。海に潜る服も道具も無いので、調べようがありません。いくら巨人でも、海の深さは、自分の背丈以上です。お役に立てず申し訳ありません」
出来ないことは、出来ないと言える大人です。
「そうじゃの。こちらも、すまなかったの。折角の海じゃ、少し遊んで帰れば良いの」
ルイーゼ辺境伯は、あっさりと、要望を取り下げた。
「お昼ご飯も、海の幸をふんだんに使った料理を用意したでの。フォフォフォ」
良かった~。
しかも、念願の海鮮!
と、言うことで、遊びます。
海と言えば、まずは、砂山造り!
何と言っても、砂山造り!
浜辺の砂を、テツジブルドーザーが、かき集めます。
持ってきたバケツで、海から海水を汲んで、砂に掛ける。
高さ50㎝位の山を造り、トンネルを掘ります。
隣で、リリアーナとシータが、同じように砂山を作っています。
トンネルを両サイドから掘り進め、ついに貫通!
それを見ていた、ルイーゼ辺境伯が、
「これは何じゃ?」
と驚き顔で聞いてきた。
「トンネルですよ。山を繰り抜いて、向こう側へ行けるように」
「何と、山を越えずに、向こうへ行けるのかの!」
ルイーゼ辺境伯が、役人たちに何か話し、トンネルを観察し始めた。
……嫌な予感しかしない。
何を言い出すか分からないので、砂遊びはここまで。
崩れる可能性がるから、トンネルの中には入らないよう念を押して、クラケン号へ戻る。
いよいよ釣りだ。
“ショアジギング”!
言葉だけ知っている。
親父も本気で、釣りをやる気だったのか、釣り竿には、リール、ライン、ルアーが既にセットされている。
竿を持って、他の人を釣らないように、少し離れた場所へ行く。
さあ、遠くへ飛ばすぞ。
意気込んで、振りかぶり、キャスト!
飛んでいく、遠くへ。
釣り竿ごと~。
手が滑ったー!
釣り竿は、理想の角度で飛んでいく。
ヤバイ!親父に怒られる。
慌てた哲治は、着水地点を確認しながら、クラケン号に戻り、荷物を下ろしていく。
上半身裸になり、クラケン号を両手で持ち、海へ走る。
急がなければ、竿が波で持って行かれてしまう。
哲治は、クラケン号を海に浮かべ、サーフィンのパドリングの如く、沖へ泳いでいく。
海は、本当に透き通っている。
哲治の視力で、底まで確認することが出来た。
着水地点と思われる場所に到着。
迷ったが、潜水して探す。
すると、すぐに見付かった。
一度、海面に戻り、息を大きく吸い込んで、もう一度潜る。
竿を掴み、海面へ浮上しようとした、その時。
大きな影が、哲治の視界に現れた。
サメ⁉
この世界にサメが居るのか分からないが、魔物のような海生生物が居るかもしれない。
哲治よりも巨大な黒い影。
こちらに向かってくる。




