第48話 海が呼んでいる
涼の季節に入りました。
随分と過ごしやすくなってきました。
秋です。
スポーツの秋です。
スポーツに飢えている哲治です。
と言うことで、サッカーを大工たちに教えました。
ボールは、ゴルフボールです。
彼らのサイズですと、腰近くまでのボールです。
ルールは、手を使わずに、足で蹴ってゴールに入れる。
オフサイドとかは、一切教えません。
一人の大工が、思いっきりゴルフボールを蹴った。
ボールは、コロコロ転がり、蹴った大工も地べたを転がっています。
あ、皆に担がれて、ラムダ治療院行きですね。
次々、ゴルフボールを蹴っては、ラムダ治療院です。
面白いのは、2人目までなので、もう良いです。
最近、シータとラムダの治癒魔法が凄いことになっています。
骨折や火傷まで、治癒出来るようになったそうです。
シータの“どや顔”が、目に浮かびます。
何でも、あの黒幕公爵の弟、ベリアスの隠れ家から、人体に関するレポートみたいなものが発見されたそうです。
人体の構造などが、詳しく記されていたとか。
人体実験だけではなく、もっと酷いことをしていたのでしょう。
シータとラムダは、その資料をクルーガに読んでもらい、勉強したそうです。
ちなみに、クルーガも元治癒魔術師だったらしく、今は治癒魔法陣の作成に熱を入れています。
ベリアスの悪行が、活かされるのは、何だか解せませんが、知識欲が世界を変えるのでしょう。
大工たちは、サッカーをやめ、大玉転がしならぬ、中玉転がしを始めました。
ガンツチームが一位です。
ガンツに今度、ヘディングを教えましょう。
哲治が遊んでいると、辺境伯の役人が走って来た。
「テツジ殿。辺境伯から、領地に来てほしいとの書状が来ました」
そう言って、役人が哲治に書状を渡す。
哲治は、こちらの文字が読めないので、ブルー第八師団長を呼び、書状を見てもらう。
スポンサーからの呼び出しとは言え、一応、上司に確認するのは、社会人の基本。
あれ?ブルーが上司?
ライナー課長で、ブルー部長。
上司だ!
ブルーは、書状を読み終えると、
「テツジ殿。確かに、領地に一度来てほしいと書いてある。あのタヌキ親父のことなので、何か“裏”があると思うぞ」
そう言ってきた。
「う~ん。ブルーの“お父さん”てことは、もう、いい年でしょ?巨人を一目見たいとか、そんな理由じゃないかな?」
哲治がそう言うと、ブルーは
「確かに、80近い年だ。でも、“人を食ってきた”老獪ジジイだ。詳細を確認してからでも遅くないのでは?」
哲治は、悩んだが、海を見たい、海鮮を食べたい。
詳細の確認とかしていたら、“寒の季節”になってしまう。
そんな気持ちが勝っていた。
「まあ、“裏”があっても、俺を害するとかでなければ大丈夫でしょ。海に行こう!寒くなる前に。海鮮が待ってる!」
本音を言ってしまう。
海行きが決定!
もとい、辺境伯領地行きが決定。
同行者は、ブルー、ライナー、シータ、辺境伯役人と、なぜか王女&マーリン。
持って行くものは、釣りセット。
釣りは未経験者なので、何を持って行けばいいか、よく分からん。
ロッド⁉……釣り竿、リール、おもり、ルアー?
もうセットされている物がある。
釣り師っぽいベストは見当たらない。
オシャレサングラスは、必需品。
形から入るタイプです。
もしかしたら、魚突き、刺突漁が出来るかもしれないので、折れた4番アイアンも持って行く。
明日の朝から出発します。
ハマチとか、マグロとか釣れねーかな~。
と、こちらの世界で見ると、ブリより大きなルアーを見詰め、夢を見る哲治でした。
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私は、アストレイア王国第二王女リリアーナ殿下の侍女頭、マーリンです。
姫様にいつも振り回されています。
特に、テツジ様の人質になってからは、とても大変です。
国王陛下からのお手紙にあった『手綱を握りなさい』を、どう解釈したのか、いつもテツジ様を眺め、ウットリしています。
まるで、恋する乙女です。
私にも、若い頃、経験が……コホン。
今も若いです。
姫様に言うと、
「勇者様を監視し、この王国のため導くのが、私の使命です」
と、おっしゃいますが、導いたところを見たことがありません。
とても、キュートなお姫様です。
ただ、どこにでも付いていくのは、少しご遠慮いただければ幸いです。
あの木で出来た乗り物。
確か、“クラケン号”というものです。
あれは、いけません。
あの速さと、揺れは、常軌を逸しています。
姫様は、乗るたびに白目で失神されています。
気を遣い、私も気を失った“ふり”をしています。
姫様、そろそろ慣れるか、やめるかどちらかにして下さい。
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