第47話 哲治の夏休み
まだまだ夏です。
“暑の季節”です。
夏休みを主張する哲治です。
夏休み貰いました。
一日だけですが……。
水道工事が始まってから、魔物領への資材の運搬に、職人たちの輸送。
溝堀りに、森の伐採、更に護衛任務と、過酷な労働を強いられてきました。
本日は、休日です。
昨日決めました。
何をしようか、わくわくです。
先日、魔物領で拓けた草原を見付けました。
パターゴルフをやるのに良さそうです。
ゴルフと言えば、ちょっと前に不幸な事故がありました。
気分転換で、ゴルフの打ちっぱなしをしました。
ちゃんと配慮して、魔物領との境の塀まで行き、最初はSWを使い、10球ほど打って、ボールを拾いに行っていました。
はい。
調子に乗って、ドライバー持ち出しましたね。
元々、右にボールが曲がるスライス傾向だったのですが、2、3球どスライスしました。
いやー、運悪く、兵士の詰所に大当たり。
死者は出ませんでした。
ブルーとライナーにど叱られました。
と言うことで、魔物領にゴルフ場建設を考えています。
ただ、一日では出来ません。
そうそう、これも先日。
クワガタを見付けたのです。
体長10㎝ほどの、オオノコギリクワガタ!
親父の釣り道具に“タモ”もあります。
飼育ケースを小脇に抱え、タモを持って、いざ魔物領へ。
探すと、なかなか見付かりません。
イノシシとか、オオカミとかしか出てきません。
踏みつぶします。
最近慣れた自分が、怖いです……。
すこし拓けた場所で、久々に“サイコロブリン”に遭遇。
何かと、戦っています。
ついに見付けました。
体長20㎝ほどのクワガタです。
違う。
良く見ると、角が3本のカブトムシです。
東南アジアに生息する、確か、“コーカサスオオカブト”に似ています。
とりあえず、異種格闘技を観戦。
体長差、約3.5倍。
コーカサスを応援します。
コーカサスは、3本の角で突いたり、サイコロブリンの足を挟もうとしたり、なかなか体格差を気にせず攻めます。
サイコロブリンは、最初、鬱陶しそうに片手で棍棒を振り回していましたが、徐々に押されてきて、両手で棍棒を持ち直し、一撃必殺の攻撃を繰り返しています。
哲治は、手に汗ならぬ、手に石を握り観戦中。
そんな中、コーカサスの角がサイコロブリンの足に刺さりました。
サイコロブリンは、怯むことなく、棍棒を角が刺さって動けないコーカサスに振り下ろす。
次の瞬間、
「俺のコーカサスに何をするー」
と叫びながら、哲治は石を投じた。
石は、うなりを上げ、サイコロブリンの脇へ当たり、右腕をもぎ取って飛んで行った。
唖然とする哲治とサイコロブリン。
刹那の間、目が合った。
サイコロブリンは崩れ落ちる。
哲治は、走って近付き、コーカサスオオカブトの背を掴む。
「うおー!取ったどー!」
定番のセリフを叫んだ。
魔物たちの逃げる音が、周囲から聞こえた。
コーカサスオオカブトを飼育ケースにねじ込み、蓋をして小脇に抱える。
物置前に戻ると、ライナーに見付かった。
口をあんぐり開け、コーカサスオオカブトを見ている。
「欲しくても、あげないよ」
と言うと、
「魔物を飼う気かー?駄目だ、駄目!」
めっちゃ怒られた。
ゴルフも昆虫採集も駄目らしい……。
せめて、標本にと思い、亡骸を釘で板に打ち込む。
物置のオブジェになった。
数日後、異臭を放ち出したので、埋めました……。




