第46話 有頂天
問題が発生しました。
大工たちが、殴り合いの喧嘩を始めたようです。
トラブルシューターの哲治です。
大工たちに話を聞きました。
今までは、西砦付近の人たちばかりだったので、問題はなかったのですが、上下水道施設工事のため、南部の辺境伯領地、北部、中部から人が集まっています。
問題というのは、何と!
出身地により、長さの概念が違っていました。
度量衡と言うのでしょうか、尺貫法と言うのでしょうか、一尺の長さが、人によって違うのです。
それによって、用意した材料の大きさが、バラバラ。
そこで、大工たちは、殴り合い。
勝った方に合わせる。
そんな、力技です。
哲治は、大工たちに提案しました。
「トーナメントより、リーグ戦の方が面白い!しかも団体戦!」
大工たちが、唖然とした顔を見せます。
ルールの説明をしようとしたら、
「そうじゃない!」
と言われてしまった。
見ている分には面白いのに。
ケガしても、シータとラムダが居るから、安心なのに。
……チェッ!
というわけで、長さや重さを、統一することになりました。
メートルやグラムという単位を使うと、自分自身が混乱するので、単位名は変更します。
哲治は、メジャーを持ち出し、長さを大工や職人たちに提示します。
哲治基準の10㎝を、1ライナー!
はい。
勿論、ライナーに怒られました。
長さは、軍部が使用しているものを基準にします。
ブルーとライナーに頼み、資料を持って来てもらいました。
その時一緒に、計算が得意という若い兵士たち数名を、連れてきました。
軍部の基準サイズをメジャーで測っていると、若い兵士たちが興味深そうに見ていた。
哲治は、
「何か、気になることでもあるの?」
そう若い兵士たちに聞く。
少し迷ったあと、代表して一人が聞いてきた
「この、線は等間隔なので、目盛だと思うのですが、一緒に書かれた模様は何ですか?」
模様?
ああ、数字のことか。
哲治は、数字のことを若い兵士たちに説明する。
調子に乗って、四則演算まで披露する。
“神”の如く扱われました。
有頂天です。
地に足がついていません。
何でしょう『他人の褌で相撲を取る』、勝てばいいんです。
この国では、決まった数字がなく、“正”の字を書くような方法で、数字を表していた。
数字が、大きくなれば、書くのも読み取るのも大変だ。
テツジ塾開校です。
若い兵士の他に、大工や職人たち、更に他の住民まで集まってきます。
物置の棚に布を被せ、ホワイトボード代わりにして、木炭で書いていきます。
数字と、四則演算の記号を教え、単位の記号も教えていきます。
書き取る物がないので、皆、木の板や布に書いたり、地面に書いたりして、覚えようとしてくれていました。
ブルーやライナーが所属する軍部には、一応、数字的なものがあるそうです。
しかし、軍の使うものであるため、一般公開されていません。
更には、小隊長以上でないと教えられないそうです。
ルヴァンやヴァレルのような魔術師は、特別な数字はないとのことでした。
魔法陣の模様は覚えるものの、数字は不要だからという理由です。
リリアーナに、貴族の数字はどうなのか聞きました。
首をかしげて、とても可愛いです。
“推しごと”に、しましょうか?
気を取り直して、マーリンに聞くと、貴族も軍部の使うものと一緒だということです。
文字も、貴族は子供の頃から家庭教師が付き、教えてもらうそうです。
庶民は、働きながら覚えていくとのこと。
読み書きが出来ないと、上の立場にはなれないそうです。
ライナーは、第八師団に入ってから、他3名の兵士と一緒に、3か月で覚えたそうです。
何でも、“3か月で覚えないと、3か月分の給与を返納”と、ブルーに言われたそうです。
なぜ、3か月分の給与返納なのでしょう?
ブルーに聞くと、
「まあ、昔のことだから」
と、はぐらかされました。
ブルーさん、今やったらパワハラですよ。
この物置前シティーには、王国からの援助もあるのですが、大口スポンサーは、ブルーパパです。
ブルーパパの領地から、数人の役人さんも来ています。
その役人から
「テツジ殿は、貴族の出身なのでしょうか?」
と聞かれた。
哲治は、
「違うよ。一般人……こっちで言う庶民だね」
と答える。
役人たちは驚き、
「なぜ、そのような高度な知識をお持ちなのですか?」
と聞いてきた。
哲治は、元の世界の教育制度を自分なりに説明し、それが長い年月の基礎となり、社会が発展してきたことを説明した。
哲治の持つスマホのことを聞いていたようで、役人たちは納得しながら、関心を寄せて、質問攻めだった。
学校制度のことや、インフラのこと、工業や農業の発展のこと、知っている限り弊害も含め説明していく。
特に、蒸気機関と電気は興味津々だったが、説明出来るわけがないので、ごまかすことに労力を費やしたよ。
夜寝る前にふと思った。
「あれ⁉これって、魔物討伐とかじゃなく、今度は知識や技術の取得のため、異世界人召喚するんじゃね」
少しだけ、“地に足のついていなかった”ことを、後悔しながらハンモックで、揺れながら眠りに就いた。
皆様、お読みいただき、ありがとうございます。
「章」で分けていませんが、前回で一段落です。
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