第43話 騒動の後の顛末書
異世界生活〇〇日目
〇〇は、炙り出しです。
火に炙ってみてください。
嘘です。
数えるのが、面倒になった……訳ではありません。
意味がないことに、気が付いただけです。
気が付ける男、哲治です。
ルヴァンの隠れ家回収からの~、中期出張から拠点に戻り、100日ほど経ちました。
季節も変わっています。
あの時、哲治の鋭い嗅覚で見付けた、黒幕の心臓は、本当に黒幕の小屋でした。
扉は、魔法と物理の鍵で開けられなかったため、テツジユンボが活躍しました。
閉じ込められていた、エルフのラムダの話を聞きました。
もう、10年以上前、ラムダは、魔物寄せ魔法陣開発の男性エルフと一緒に、 “ご主人様”と呼んでいた魔術師に、あの小屋へ連れていかれたそうです。
そして、“ご主人様”は、実験と言って、男性エルフの体に、“破裂の魔法陣”を描くようにラムダに強制したそうです。
当然、ラムダは、拒否しましたが、頭の中が霞み、言う通りにしてしまったそうです。
数日後、“ご主人様”から、実験は失敗だったと言われ、安堵したそうです。
それから、男性エルフは、魔物領で“魔物寄せの魔法陣”を描くから、戻ってこられないと伝えられ、“破裂の魔法陣”を量産するように指示されたそうだ。
黒幕の小屋を、調べていたルヴァンに聞いた。
男性エルフは、衆人環視の中、魔法が起動し木端微塵になったそうだ。
衆人には、“魔力暴走”として、説明され処理された。
黒幕の小屋は、ルヴァンと、魔術大臣という人が来て、徹底的に調べていた。
あの小屋の持ち主、“ご主人様”は、べリアス・フォン・シギリードと言い、ルヴァンの一つ上の階級だそうだ。
どうでもいい話だが、魔術大臣に、ルヴァンよりも優秀なのか聞いた。
答えは、貴族と庶民の差だと言われた。
出身大学による派閥みたいなものですかね。
ベリアスという人物は、自己顕示欲が強かったのか、証拠がわんさか出てきたらしい。
かなりの数の人体実験を、行っていた記録があったという。
何でも、エルフや、自分が作った魔法陣の効果を、人を使って確認していたらしい。
“マッドサイエンティスト”と、いうやつです。
嫌な話ばかりです。
ベリアスが黒幕と思っていましたが、本当の黒幕は、腹違いの兄だそうです。
シギリード公爵。
異世界人召喚に反対の立場で、“王国は王国の力で守るべき”と、唱えているそうです。
その意見には、大賛成です。
ですが、これは単なる、国王批判のための標榜で、実際はそんなこと考えていなかった。
ただ批判をしたい、現政権を貶めたい。
それだけのために、耳あたりの良い言葉を吐いていたそうです。
どこかで聞いたことありますね。
しかし、今回、クーデターを起こそうとしていたようです。
騒ぎを起こし、国王の失政を糾弾するつもりだったみたい。
召喚の儀で、人ならざる者を呼ぼうと画策したようです。
人ならざる者=哲治です。
悲しい現実です。
召喚失敗で、混乱する中、防壁に穴を開け、魔物を王国領へ呼び込む。
更に凄いのは、かなり前から計画されており、第一師団長を、時間をかけて懐柔していたそうです。
亡くなった軍務大臣に、今回の“召喚の儀”は危険を伴うから、第一師団を護衛に付けた方が良いと、直接自分が言うのではなく、他の貴族を使って耳に入れていたそうです。
その後、魔術大臣が、軍務大臣に、召喚の儀の不安を伝えたため、第一師団の護衛派遣が決まったそうだ。
そして、召喚事故から計算し、報告が来そうな期間は、第一師団長を、貴族の宴まみれにしていたそうだ。
これも、失脚させ、駒として使うつもりで。
前第一師団長が捕まった後、事情聴取の中で、シギリード公爵の名前が出たが、何も証拠が残されていなかった。
あと、捕まった魔術師たちも、シギリード公爵と関係はあるが深い繋がりでは無かった。
本物の悪人は、すごいものだ。
異母弟が、証拠たっぷりで処刑される見込みだが、シギリード公爵は、飄々としているらしい。
この王国では、連座制はない。
ベリアスの小屋や自宅から証拠は出ても、シギリード公爵に繋がる物はなかったそうだ。
まさに状況証拠は真っ黒なのに、物的証拠がひとつもない状態である。
まあ、それでも、悪党の手足は、もぎ取ったと、ライナーの上司、ブルーおっさんに言われた。
それから、シータとラムダの話。
彼女たちは、隷属の首輪が付けられているため、元の世界には帰れない。
隷属の首輪を外せば、自我をなくす可能性が高い。
それに、隷属の首輪を作動し続けるため、定期的に魔石を替える必要があるのだと。
彼女たちの、元の世界に魔石はない。
哲治も、もし巨人でなければ、いくら力を持って召喚されたとしても、元の世界に帰れる可能性がなかった。
それを思うと哲治は、この国も、善良ではないと判断せざるを得ない。
救いなのは、シータもラムダも楽しそうに過ごしている。
シータが、ラムダに治癒魔法を教え、二人で救護班を担ってくれている。
大工や職人はケガが多く、助かっているようだ。
でも、絶対6割は、“ワザとケガ”しているだろ!
分かるよ。
二人とも、美人だしね。
ルヴァンの話。
ルヴァンは、通信の魔法陣を手に入れた!
と、言っても、モールス信号みたいな、短音と長音を飛ばす魔法陣。
何か、以前話していた、“音は波”と言った言葉で、ヒントを得たらしい。
発信側の魔法陣に魔力を意図して流すと、受信側の魔法陣が揺れて、音を出す仕組みだそうだ。
説明を聞いたが、分かるわけがない。
まあ、ルヴァンが天才だということは分かった。
そろそろ、本格的に返還の魔法陣を頼むよ。
それと、ヴァレルという人が、こちらに住み着いた。
何でも、魔法大臣という役職を辞めて、ルヴァンの助手みたいなことをしている。
クルーガが、扱いに困っていた。
リリアーナ王女様は、今は、石大工たちが作った、立派な屋敷に住んでいる。
なぜか、物置の目の前だ。
石大工よ、返還の館を作りなさい!




