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第38話 大人の階段

 おはようございます。

 異世界生活19日目です。


 初めての外泊。キャッ。


 あまりの理不尽さに、ふざけてみました。


 雨が降らなくて、本当に良かった。

 あ、宿泊出張手当申請しなきゃ。

 ホテル泊じゃないけど、宿泊代出ますか?


 シータも起き出した。

 衝立を持って、テトテトと歩いていく。

 お花摘みですね。

 紳士ですから、顔を背けておきます。



 哲治も、大きい用事を済ませるため、立ち上がる。

 少し離れた場所に、山があったので、その影で用事を済まそうと思う。

 少し速足で、山の反対側へ回る。


 街があった……。

 「「ギャーーー」」

 街の人と、同時に叫んだね。



 走って逃げました。

 大事な用事も、忘れました……。



 クラケン号の元へ戻り、三角座りで時を待ちます。

 暇なので、シータとお喋りしたいのですが、言葉が通じません。

 仕方ないので、身振り手振りで、マルペケを教え、巨大マルペケ(シータ目線)で、遊んでおります。

 最初は、勝ちました。

 その後は、白熱の戦い……引き分けが続いております。


 正確に数えていませんが、1勝124引き分け辺りで、ライナーたちが戻ってきた。


 ライナーが、

 「昨夜は、すまなかった」

 と、頭を下げる。


 哲治は、

 「宿泊出張手当ください」

 と、心の広い返事をした。


 王女と、マーリンと、ルヴァンがクラケン号に乗り込む姿を見て、

 「用事は済んだの?」

 哲治が、ライナーに聞く。


 ライナーは、バツの悪い顔をして

 「会って貰いたい方がいる」

 そう言った。


 「誰に?ライナーの上司?」

 「まあ、上司と言えば、上司だな」

 「いいよ」

 哲治が、そう言うと、ライナーは城壁の方を向き、手を振る。


 一応、お伺いを立ててくれたのか。



 馬車が来る。

 豪華な馬車が来る。

 この前来た、国王の使者より、豪華な馬車が来る。

 鎧を着た兵士が馬に乗って、馬車の周囲を付いてくる。

 数が、多い。

 ……今更、断ったらダメ?



 豪華な馬車が、哲治の前で止まる。


 哲治は、三角座りから胡坐に変えている。


 馬車の扉が開き、豪華でもない服を着たおっさんが、ひとり降りてきた。


 おっさんは、大声で、

 「初にお目にかかる、巨人勇者殿。朕は、アストレイアの王を務める者だ」


 やっぱり~。

 ライナー課長!

 部長が出てくると思ったら、重役飛び越えて、社長じゃん!


 ライナーを横目で見ると、直立不動!

 こちらを、チラ見することもない。

 仕方ない。


 「はあ、初めまして」

 社交辞令を(わきま)える男は違うぜ。


 「話に花を咲かせたいが、貴殿も朕も、忙しい身。掻い摘んで話そう」

 国王が大声で言う。


 哲治は、

 「そんなに大声じゃなくても良いですよ」

 出来る男は、上役にも意見出来る。


 「そうか」

 普通の声量で国王が言ったので、頷いておく。


 「巨人勇者殿に頼みがある」

 来ました。

 ブラックの香りがする。


 「王都より東の方で、“王国に害なすもの”が現れたようだ。それを駆逐してほしい」

 「え⁉」

 素で、声が出た。

 「貴殿との契約で、貴殿の条件を飲む代わりに、“王国に害をなすものの駆逐”という、当方のお願いを聞いていただける約束では?」


 ぐぬぬ。

 確かに、“王国に害なすものの駆逐”って、言われた……気がする。

 あの時は、魔物のことと、決め付けていた。


 優しい先輩から、『契約書は、細部まで確認しろ』って言葉が、フラッシュバック。

 新規取引先との契約で、契約書に不備があり、会社に損失を与えそうなことがあった。

 あの時は、先輩が見ていてくれて、大事にならなかった。

 教えを守り、契約書や見積書は、徹底的に確認してきた。


 あの時も、ライナーから書状を貰い、ちゃんと確認したさ。

 でもね、この世界の文字、読めねーよ。

 投げ捨てたね。


 “意思疎通”、仕事しろよ!



 国王は、

 「宜しく、頼むよ」

 と言って、馬車に乗り込み、王都へ戻って行った。



 ライナーを睨みつける。

 ……居ない。


 いつの間にか、クラケン号に乗り込んでいる。

 リリアーナは、父親の顔を見られて嬉しいのか、笑顔を見せている。

 ルヴァンは、相変わらず魔法陣と、にらめっこ。


 シータは、ひとりマルバツをやっていた。



 哲治の勤めていた会社は、決して、ブラック企業ではなかった。


 ブラック企業で働く人の気持ちが、ほんの少し分かり、大人になった気がした。

 口の中に、ほろ苦い味が広がった。

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