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第37話 後悔・信頼・直感

 前第一師団長のルーファスは、戸惑いながら、東へ向かっていた。

 

 馬が少なく、歩きでの行軍のため、進軍速度は遅い。

 それに、兵士たちの動きがバラバラだ。

 それは良いのだが、兵站部隊がおらず、物資は街や村から徴収していると言う。


 第一師団は、王都及び、王都周辺の警備が仕事だ。

 しかし、他の師団が、行軍時に物資を、自国の街や村から徴収しないことは、知っている。


 公爵の私兵を纏めている男、私兵長とでもいうのか、その男に、

 「徴収は、マズイのではないか?」

 と、ルーファスが諫めると、

 「軍のため、第一師団長ルーファス様のためと、喜んで提供してくれております」

 そう、飄々と答えた。


 「では、村長に礼をしよう」

 そう、ルーファスが言うと、

 「庶民に頭を下げる必要はありません。貴方様は、この王国軍のトップなのですから、威厳ある態度でお願いします」

 私兵長は、ルーファスの目を見ながら言った。

 

 何か所目かの村で、徴収を行い、出発直後に火事になった。

 ルーファスが戻るよう指示すると、私兵長が

 「大丈夫です。あの村に、まだ兵士が残っておりますので、避難誘導や消火作業に当たるでしょう」

 そう言って、馬を進めていく。

 仕方なくルーファスも馬を進める。



 運の悪いことに、第二師団の大隊長に遇ってしまった。


 名前は忘れたが、知った顔だ。

 不審に思ったのか、近付いてくる。


 馬上で、その大隊長が話しかけてきた

 「ルーファス殿ですか?第一師団がなぜここに?」


 ルーファスは返事に窮した。

 まだ、軍部も掴んでいない情報。

 事実確認で、時間を取られる。

 下手をすると、第二師団の管轄ということで、手柄を横取りされる可能性がある。


 ルーファスが、無言でいると、

 「ルーファス殿、貴殿は謹慎の身では?それに、第一師団の鎧が違うような……」

 大隊長の言葉は続かなかった。

 隣にいた私兵長が、持っていた槍で、大隊長を突いたのだ。


 魔術師たちが、革袋を第二師団の騎馬へ、投げ込むのが見えた。

 革袋は放物線を描き、騎馬たちの側へ。


 その瞬間、革袋が破裂した。

 細かい石礫のようなものが広がり、馬が嘶き、暴れる。

 兵士たちが、次々落馬した

 公爵の私兵が動き、落馬した第二師団の兵士を槍で刺していく。


 ルーファスは、言葉が出ない。

 何が起こっているのか、理解が出来ない。


 私兵長が耳元で言う

 「これで、後戻り出来ませんよ」



 ルーファスは、悪魔に縋っていたことを、この時に知った。



■■■


 ライナーは、ひとり西門から王都に入った。


 うろ覚えの第八師団長の屋敷へ急ぐ。

 あの人のことだ、第二砦に戻っている道中の可能性が高い。

 ライナーは、一縷の望みを賭けて、王都を走る。

 

 途中、道を尋ねながら、ブルーの屋敷に到着した。

 ドアを叩くと、第八師団の兵士が応対する。


 ホッと、安堵の息を吐き、ブルーを呼んでもらう。

 

 「おお、ライナーどうした?巨人勇者に何かあったか?」

 慌てた様子で、ブルーが問う。

  

 「いや。実は、テツジと一緒に、王都に来た。彼は、王都の南側で待機させてる」

 ライナーは、いつもの口調で答える。


 「何が、目的だ?」

 ブルーは、探るような眼で問う。


 ライナーは、ここに来た経緯を説明し、第二砦近くの防壁崩壊の件を、自分の推測も含め、ブルーに説明する。


 ブルーは、しばし考え、

 「王女殿下も来ているなら、王城へは行かんだろう。宿の手配はしておく。馬車を用意するから、少し待て」

 そう言って、兵士たちに指示を出し、戻ってくる。


 「シギリード魔術師の件は、俺に預けてくれ。実は、少しきな臭い情報が入った」

 ブルーは、一旦言葉を切る。

 「きな臭い情報?」

 「不確実な情報だが、第一師団の鎧を着た軍勢が、東の街や村で、徴発行為をしているとの噂だ。中には、強盗まがいや、強姦があったという話まである。軍務大臣が不在だからな。国王から、真偽を確かめるよう頼まれた。俺がここに居るのが、バレてたみたいだ」

 カカカと笑い、

 「第一師団に、伝手がないわけじゃないんで、今から確認に行くところだ。それで、お前、巨人勇者をどうするつもりだ?」


 ライナーは、勢いで来てしまったので、テツジのことを考えていなかった。

 額に汗を浮かばせ、

 「南側で、野宿してもらいます……」


 カカカとブルーは大きく笑い、

 「信頼関係、築けてるじゃねーか。引き続き、仲良くやってくれ」

 そう言って、ライナーの肩を叩いた。



 馬と、馬車を借り、テツジの元へ戻る。

 夕闇が迫ってきていた。


 王女たちと、ルヴァンに宿を手配したことを伝え、馬車に乗ってもらう。


 テツジに、

 「俺は?」

 と、聞かれ、思わず目をそらした。



 王都に向かう途中、振り返ると、大きな体を小さくしたテツジが、空を見上げていた。



■■■


 ブルーは、ライナーを見送った後、第一師団の詰所へ向かう。



 詰所に着くと、扉を勢いよく開け、

 「第八師団長のブルーだ。今の第一師団の責任者は誰だ?」

 大声で叫ぶ。


 周囲は、あまりの迫力に驚き、誰も言葉を発しない。


 「もう一度言う、責任者は誰だ?」

 ブルーの迫力に圧された一団の中から、ひとり進み出て、

 「はっ。自分が、第一師団長代理のコインスです」

 敬礼をし、答える。


 「おお、コインスか、久しいな」

 「はい、ご無沙汰しております」

 「ところで、コインス師団長代理、第一師団の一大隊、もしくは二大隊は、東に遠征してるのか?」


 コインスの顔が疑問に染まるが、

 「いえ、それは有りません。本日、昼過ぎに大隊長が全員集まって、協議を先ほどまでしておりました」


 ブルーは、

 「そうか、変な噂が入ってな。疑って悪かった」

 笑顔を見せる。



 その時、詰所の扉が開き、第二師団の鎧を着た兵士が飛び込んできた。

 「至急至急!国王へ報告の議あり、どなたか取り次げる方は居ませんか?」


 ブルーは、嫌な予感が押し寄せる。

 至急を二回いう場合は、本当の危機的状況。


 「俺は、第八師団長のブルーだ。国王に取り次ぐ」

 ブルーは、内容も聞かず、第二師団の兵士を連れ出し、急ぎ王都へ向かう。



 下らない報告で、首が飛んでも構わない。

 自分の直感が、何か叫んでいた。

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