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第32話 ジグソーパズルのように

 ライナーは、シータと共に、第二砦にいた。


 砦に残っている第1大隊に、状況を説明し、街や村での聞き込みを指示する。


 防壁は、王国側から強い力で、破壊された形跡があった。

 瓦礫を集め、手掛かりを探す。


 ライナーは、魔物領側に、魔法陣が描かれていたことから、魔術師の関与を疑っていた。

 しかし、戦闘魔術師や、治癒魔術師に複雑な魔法陣を描けるものは、皆無だ。


 大きめの破片を手に取り、断面を見ていると、隣にいたシータが、

 「これ、何か、ある」

 ライナーは、シータに指さされた表面を見るが、何の変哲もない。


 「ん⁉何もないぞ」

 「薄く、光、反射、見える」


 ライナーは、その破片を光に翳し、角度を変えて見る。

 一瞬、線が見えた。

 もう一度、慎重に角度を変え、凝視すると、薄っすらと、何か描かれているのが見えた。


 他の破片に手を伸ばし、シータに指示を出す

 「シータ、何か描かれている破片が有ったら、ここに集めてくれ」

 瓦礫が置いてある場所とは、別の場所を指さす。


 ライナーは、思い出していた。

 確か、異世界人は、目や耳が異常に良いと。

 

 テツジも耳が良い。

 魔物の発する音を聞き分け、先制攻撃を仕掛けている。

 立ち上がったテツジに、大声で話さなくても、会話が出来る。

 時々、聞こえないふりをされるが……。


 そうだ、確か、エルフの召喚をした時の、召喚魔術師。

 誰だったかは、分からんが、護衛した大隊のやつが言っていた。

 『召喚時に、異世界人を改造しているらしいぞ。そう、召喚魔術師が言ってた』


 その時、腹が立ったのを覚えている。

 異世界人に対し、“情”があったわけではないが、憤りを感じた。

 異世界人の活躍が無ければ、この王国は持たないのかもしれない。

 やるせない気持ちが、思い出される。



 ライナーが、そんな思い出に浸っている間に、シータは次々に破片を運んでいく。

 しかも、指定された場所に、ジグソーパズルを並べるかのように。


 シータが、ライナーを見て言う

 「魔法陣、衝撃?……破裂!」


 やはり、魔法陣か。

 衝撃、破裂の魔法陣など、聞いたこともない。


 かなり、優秀な召喚魔術師か?

 でも、なぜ?。

 

 「シータ。なぜ、破裂の魔法陣だと?」

 ライナーは、シータに問いかける。


 「仲間、作った、破裂、罠、魔法陣、似てる」

 シータは、ボソボソと答えた。


 ライナーの中で、理解が膨らむ。

 “魔物寄せの魔法陣”で、魔物を誘い出し、“破裂の魔法陣”を使って、仕留める罠。

 臆病なエルフが、必死で考え、編み出したもの。

 軍部、いや、少なくとも第八師団には伝わっていない。

 

 それを、独占した者がいる…。

 それを、悪用した者がいる…。


 ライナーは、慌てて部屋を出て、走りながら、大声で兵士を呼ぶ。

 「誰か居るかー。至急王都に伝令!師団長に連絡!」



■■■


 前第一師団長のルーファスを乗せた馬車は、丸一日を走り止まった。

 休息時に、周囲を伺ったが、王都から東へ向かっていること以外、分からなかった。


 同乗していた、使用人らしき人物が降りると、馬車の扉を開けたまま、歩いていく。

 降りて、付いて来いということだろう。

 

 ルーファスも、馬車から降り、歩いていく。

 周りは、農村地帯なのか、畑が広がっていた。

 

 一軒の民家に入っていく。

 農村地帯で、よく見かける民家だ。


 そこに、シギリード公爵の屋敷で見た顔があった。

 名は、忘れたが、公爵の腰巾着の貴族だ。


 その貴族が、ルーファスの顔を確認し、懐から書状を出し、読み上げる

 「ルーファス第一師団長。この度の、貴殿への処遇、誠に遺憾である。これまで貴殿は、王国に対し、多大なる功績を残した。才能ある者が、些細な手違いで、処罰を受けるのは、王国の損失である。今一度、貴殿は功績を挙げ、名誉を挽回するべきである」

 

 一息に読み上げると、その貴族は、笑顔で

 「ルーファス第一師団長。丁度今、東の国境付近で、不穏な動きがあると報告が入っております」


 ルーファスは考える。

 東の国境、アリーシア帝国とは、最近いざこざは無いはずだ。

 現状維持が続いており、平穏だと聞いている。

 だからこそ、箔付けのため、皇太子殿下が東の砦に任務している。


 「私は、何をすれば、よろしいのでしょう?」

 ルーファスが問う。


 貴族は頷いて、

 「情報では、東の第一砦に程近い山に、謎の集団が集結しているとのことです。貴殿には、第一師団を率いて、偵察を行ってもらいたい。また、不審な輩と判断した場合は、殲滅ないし、撃退を依頼したい」


 「それは、軍部の知っているところでしょうか?また、今の私には、第一師団を率いることが出来ません」

 ルーファスは、不審に思い聞く。


 「軍部は知りません。公爵の独自の情報源から、もたらされた極秘情報です。しかし、時間がたてば、軍部も把握するでしょう。兵士は、こちらで用意いたしました。二大隊分の戦力です」


 二大隊分の兵士を用意した。

 ルーファスは、意味が分からなかった。


 貴族が続ける

 「東第一砦には、皇太子殿下がいらっしゃいます。事を未然に防げれば、貴方様の功績も大きくなります。シギリード公爵閣下は、貴方様に期待しております。王国の希望だと」

 恭しく頭を下げる。



 “王国の希望”という言葉に、ルーファスは感銘を受けた。


 シギリード公爵の情報は、確かにすごい。

 軍部より先に、情報を掴んでいることも多々ある。


 謎の集団というのは、多分、帝国に追われた難民か、盗賊の類だろう。


 兵士の練度は、分からないが、自分の指揮で動かせば、誰もが猛将に変わるだろう。

 百人ほど、貴重な一流の戦闘魔術師も貸してくださるそうだ。


 

 負けるわけがない戦い。

 甘言が、背中を押す。


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