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第31話 人質たちと話し合い

 異世界生活15日目。

 今日も晴れております。


 製材職人と、木工職人にログハウスの話をしたのは、昨日のはずなのに、もう、木の組み方とか、分かっていた。

 ……異世界人よ、“ご都合主義”極めりだぜ。


 と、思ったら、木工職人は家具も作るので、釘を使わない工法もあるらしい。

 ごめんよ。“ご都合主義”、何でも君のせいにしていたよ。


 加工とかは、邪魔者扱いされたけど、屋根作りの話になった時。

 別々で作って、乗せればよくね。って言ったら、喝采を浴びた。

 フフフ、哲治重機、役に立ちます。


 石大工たちも、ログハウス作りに参加しています。

 君たちは、返還の館を作りなさい。

 って、言ったら、石材が届いていないとのこと。

 ほら、ライナー君、石材運ぶって言ったのに……ライナー君、居ないわ。



 今日も相変わらず、午前中は、魔物領で伐採作業。

 切り株撤去は、雨の次の日が、ベストということに気が付いた。

 土が柔らくて、掘れる掘れる。

 ただ、掘った跡は、悲惨な状態だけど。



 午後からは、伐採した木を、職人たちに言われるがまま、切って長さを揃えていく。



 そういえば、今日の朝、川へ行った帰りに、キングボアを2頭、倒しました。

 キングボアの肉が、皆に好評で、見付けたら、積極的に狩っております。

 ……少しずつ、いや、結構早く、こちらの世界に慣れてきているな。


 慣れと言えば……よし、皆、毎日“クラケン号”に乗ろう!

 え⁉仕事が進まなくなる?

 プロなんだから……だから、乗らないのか!


 早ければ、今日明日に、王国からの返事が来る。

 食糧と水は、第八師団の好意でいただいているが、王国の返事次第では、止められるかもしれない。


◆◆◆


 昨夜、ルヴァンと話をした。

 本当に、“返還の魔法陣”が、描けるのか聞いた。


 すると、

 「若い時の話だが。初めて召喚の儀を手伝った時、“呼べるなら、送れるのでは”と考えて、研究をした。ただ、完成はしなかった。その後、他の新しい付与や、戦闘系の魔法陣を描くよう指示され、研究をやめた」

 ルヴァンが、語る。

 哲治は、じっと話を聞いていた。


 「それにな、“多人数召喚”に、心を奪われて、そればかり研究していた」

 そこで、フーと息を吐き、続けた


 「送還の理論は分かっている。昔の資料があれば、一年で完成させられる」

 ルヴァンの言葉に、哲治は反射的に、

 「一年?なぜ、三年かかると?」


 ルヴァンが、哲治の目を見て答える

 「“送還”はな。どこの世界に行くか分からん送還だ」

 哲治は、息を飲んだ。


 「テツジ殿を、元の世界へ帰す。召喚魔法陣が、どこから異世界人を呼んでいるのか、気になっていた。ランダムに呼ばれているが、何か規則があるはずだ。それが分かれば、“返還”は可能だ」

 ルヴァンが言い切る。


 「三年で、出来るのか?」

 哲治が、不安になり聞く


 「そう約束したからな。召喚魔法陣は、ソラで描ける。今も出来ることはしておる」

 ルヴァンが笑う。


 哲治は、信じるしかない。

 「資料、どこにあるの?」


 「研究所…隠れ家だな。そこに保管されている」


 「隠れ家?」


 「ああ、魔法陣の研究を、真剣にしている魔術師は、大抵、隠れ家を持っておる。自宅なんぞに資料を置いておいたら、盗んでくださいと言っているようなもんだ」

 ルヴァンは、皮肉な笑みを浮かべた。


 「それ、どこにあるの?その場所、ライナー隊長に教えてもいい?」


 「ああ、わしから教えよう。王都から、馬車で2日ほどの距離、ここからなら、馬車で8日か。それと、家ごと持ってくるように言わんとな」

 ルヴァンは、いたずらっ子のような顔で笑った。



◆◆◆


 ライナーは、まだ、第二砦にいる。

 兵士たちに、ルヴァンの隠れ家のことを言っても、判断できないはずだ。

 それに、ルヴァンの言葉、“盗まれる”ことを、警戒しなくてはいけない気がする。


 元の世界でも、他人を出し抜こうとする人たちは居た。

 世界が変わっても、人間同じなのだろう。



 ライナーには悪いが、最悪、自分が取りに行っても良い。

 クラケン号を使えば、家ごと持って来ることも、出来るはずだ。

 ただ、問題は、地理が全く分からない。

 絶対、迷子になるやつ。



 夜になり、今度は、リリアーナ王女と話をすることにした。

 

 哲治は、リリアーナに話しかける

 「王女様。少し、お話を聞いていただけますでしょうか?」


 リリアーナは、えっ、という顔をした後、フフフと笑い

 「何でしょう?巨人勇者様」


 今度は、哲治が、えっ、という顔になる。

 何で、その呼び名知ってんの⁉

 隠れて、外と連絡取り合ってんの⁉

 まあ、いいか。


 哲治は、気を取り直し、

 「王国からの返事が、そろそろ来ると思う。それで、王女様と、マーリンを明日、開放したいと思う。ただ、ライナー隊長が居ないのが不安だけど……何なら、第三砦まで連れていくよ」


 リリアーナは、喜ぶと思っていたが、悲しい顔をして俯いた。

 「わたくしは、邪魔ですの?」

 哲治は、何を言われたのか分からなかった。

 マーリンが、心配そうな顔で、リリアーナに寄り添う。


 「わたくしは、交渉のカードになりませんか?」

 リリアーナが、顔を上げる。

 頬に、涙が流れる。


 「わたくしは、勇者の英雄譚に憧れていました。そして今、勇者様が、すぐそこにいて、毎日の冒険を語ってくださいます。怖いお話もありますが、いつも楽しくて、楽しくて、……出来れば、もう少し、ここに居させていただけませんか?我儘ですが、もう少しだけ…」


 そう言った直後、リリアーナは、寒冷紗の目隠しへ走って行った。

 マーリンが追いかける。



 哲治は、固まってしまった。

 

 人質解放ですよ。

 快適な王宮暮らしに戻れますよ。

 トイレも……女心は…リリアーナ心は、よく分からん!


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