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第26話 “クラケン号”活躍?

 異世界生活12日目

 空模様は、少し雲が多いが、雨を降らせそうな雲は見つからない。

 

 大きく伸びをして、今日も頑張ろうと、気合を入れる。


 朝から、筏型ソリ、名前は“クラケン号”を、木工職人たちと一緒に改良している。

 “クラケン号”、筏型ソリ、彼らから見れば、大きな筏型ソリ、そう、大きなイカ…だ。

 大きなイカと言えば、西洋の伝説の化け物“クラーケン”。

 語呂が悪いので“クラケン号”と命名。

 我ながら、素晴らしいネーミングセンス…ダジャレ、オヤジギャグではない。ネオダジャレ…ちょっと違う気がする。


 木工職人たちが、道具を使い、クラケン号の荷台部分を平らにしていく。

 他の職人が、コの字型に柵を作っていく。

 プロだ。早業だ。

 手を出そうとすると、バンスに怒られるので、荷運びと、柵とかを持って抑えるのが、ミッションだ。


 

 そんなこんな遊んで…仕事をしていると、東から3騎の馬が勢いよく駆けてくる。

 

 騎馬は、ライナーの元へ向かう。

 馬から兵士たちは降り、出迎えたライナーと何か話をしていた。


 ライナーがこちらに走ってきた。表情は硬く、何か焦っているようだ。

 地べたに胡坐をかいた状態で座って待つ。


 ライナーが近付きざま、叫ぶ

 「第二砦近くの防壁が、崩壊したとの連絡があった」


 第八師団が常駐する砦は、北から順に第一、第二と呼ばれ、第四まであるそうだ。

 ここから直近の砦は、第三砦。

 つまり、すぐ北にある砦が第二砦だ。

 すぐ北と言ったが、こちらの距離で90~100㎞ほど離れているらしい。


 周囲が騒めく

 「第二の近くに、俺の実家があるんだ、大丈夫なのか」

 「おお、俺の嫁の実家も近いぞ」

 「第二と第三の間の街は、俺の出身地だぞ」

 職人たちが、何か口々に周りと喋っている。


 哲治は、よく分からなかったが、皆が、不安になっているのは分かった。

 「防壁?あの魔物領との境の塀だよね。崩れるとまずいの?」


 ライナーが言う

 「崩壊の状態にもよるが、そこから、魔物が、王国側に押し寄せる可能性がある」


 哲治は、ああ、と納得をした。


 「第二砦の第5大隊から、第三砦へ応援要請があった。俺が、砦に戻って、第4大隊が応援に向かう」

 ライナーは、馬が繋いである方へ向かおうとした。


 「ちょっと待って」

 哲治が、ライナーを呼び止める。

 ライナーは振り返り、時間がないといった顔を見せる。


 「俺も行くよ。塀沿いに行けば良いよね?で、塀が壊れてたら直さなきゃ。ガンツ一緒に行ってくれる?」

 と石大工の棟梁を見る。


 「ああ、構わねえが、馬車で付いていくのか?」

 石大工棟梁のガンツが聞く。


 「いや、これで行く」

 哲治が指さした先には、“クラケン号”があった。

 「ライナーも乗って行こう!」


 ライナーは、時間がないという顔から、命がないという顔に変わった。



 準備にかかる。

 床が板のままでは、跳ねたりして痛いだろうと、ブルーシートを折り畳み敷く。

 釣り糸を出してきて、グチャグチャにして、ブルーシートの折り畳んだ間に入れていく。

 絡まった釣り糸の弾力をヒントに、寝具が開発されたという話を、昔テレビで見たのを思い出した。


 工具箱の中身を取り出し、クラケン号に乗せる。

 その中に、兵士の武器や盾、職人の工具などを入れていく。


 金属バットをバットケースに入れ肩に担ぐ。



 さあ。乗筏開始。…ほら、早く乗って!


 ライナーを含め5人の兵士、治癒魔術師のシータ、石大工数名。無事乗筏。

 上から転落防止に、防鳥ネットを被せる。


 ライナーに報告に来た兵士たちには、ライナーが青い顔で説明し、第三砦へ戻ってもらった。


 レッツゴー!



 北西に向け、ジョギングほどのスピードで走り出す。

 クラケン号の前部分も、ソリのように加工してもらってある。

 斜めにしないよう注意しながら、走って行く。

 皆、おとなしい。慣れたかな?



 塀まで着くと、今度は北へ進路を変え、ジョギングを続ける。

 何だか、中学時代の部活のタイヤ引きを思い出す。

 当時、意味が分からなかったが、今、理解しました。


 2回ほど休憩を入れ、体感でスタートから一時間半くらい走ってきた。

 前方に、兵士たちが、集まっているのが見えた。


 一旦止まる。

 防鳥ネットを取って、ライナーに確認するが、彼からは見えないらしい。

 顔を上げないから、見えないんじゃないの。


 工具箱から、兵士たちの武器と、盾を取り出す。

 兵士たちは2回目の乗筏なので、慣れたのか、すぐに動き出した。


 石大工たちは、地面に降り、四つん這いになっている。

 このポーズは定番なのか。

 治癒魔術師のシータは、眩しいほどの笑顔だ。


 やはり、女性の方が、絶叫マシンに強いのだろうか?



 ライナーと、もう一人の兵士が、北へ走って行く。

 残りの兵士はここで護衛だ。



 哲治は、塀を跨いで超え、木々の境目近くまで移動する。

 左手にバットを握り、右手に石が満載のスパイクシューズを持っている。

 身を屈め、塀の向こう側から見えないように北へ進んでいく。



 魔物が見えた。

 “ゴブリン”だ。


 違う、“ゴブリン”じゃなくて、“サイコロ(サイクロプス)…”だ。

 ライナーに、怒り口調で教えてもらった。…なぜ、怒られる…理不尽。


 “サイコロ(サイクロプス)”は、塀の方に向かっている。

 よく見ると、塀に隙間が空いている。

 あれが、崩壊した場所か。


 魔物に気付かれないように、ゆっくりと進む。

 まだ、距離があるし、的も大きくない。

 風上とか、風下とかよく分からないが、顔に少し風が当たる感覚がある。アゲインスト。


 音が鳴らないように、レガースは外してある。

 バットをそっと地面に置く。

 スパイクケースから石を4つ右手で掴んで、更に2、3歩進む。


 左足を斜め前にして、しゃがんだ姿勢を取る。

 右手を耳の付近に持っていき、肘を上げる。


 魔物の頭付近を狙い、少し山なりになるようなイメージで。

 右足に力を入れ、左足を小さく踏み込みスロー。

 外れても、こちらに意識が向いてくれれば、対応できる。


 4つの石は、思い描いた軌道を、思い描いた以上のスピードで飛んでいく。

 すぐにバットを拾いに行く。

 振り返ると、“サイコロ(サイクロプス)”は、転がっていた。



 え⁉…“サイコロ”の天敵は、石⁉


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