第21話 シャワー付きトイレとアトラクション
異世界生活8日目
昨日の雨が、嘘のように、晴れ渡っている。
哲治は、外に出て、クーラーボックスとバケツを確認する。
思惑通り、雨水が溜まっていた。
いそいそと、洗濯物を取り出し、クーラーボックスで手洗いしていく。
洗剤も洗濯板も無いため、完全に手洗い、揉み洗いだ。
絞って、振って水気を切ると、物置の中へ。
万能PPテープを、物干しロープにして、洗濯物を鼻歌交じりに干していく。
リリアーナが、迷惑そうな顔で、朝御飯を優雅に食べながら見ていた。
君たちは、良いよね。
毎日、着替えが届いて。
最初は、マーリンが「姫様が庶民の服を着るなんて…」て、言っていたけど、その姫様「この服、動きやすいわ」って、言って“リリアーナダンス”していたよ。
そうそう、何故か、テーブルとイスまであるんだよ。
俺、ライナーに頼んでないけどな。
色々脅して聞き出したら、ルヴァンから羊皮紙を貰って、欲しいものを書いて、空の木箱に入れていたらしい。箱入りのくせに…やるな。
あれ⁉情報も筒抜け?
まあ、彼らの目線では、棚に何が乗っているかまで見えないし、大丈夫でしょう。
洗濯していて、思い出したことがある。
超音波洗浄機。超音波で細かい泡出して洗浄する機械。ん…合ってる?
とりあえず、ルヴァンに、超音波出せる魔法陣描けないか聞いてみた。
「超音波?何だそれは?」
「音波を超える音波かな?」
「音波って何だ?」
そこから~⁉
音波って、ほら音って波打ってて、その周波数が…分からん!理系の人に聞け~。諦めた。
ライナーたちの、野営地に行く。
ライナーは、まだ、戻っていないみたいだ。
2人の兵士が、ブルーシートを見上げて何か言っている。
エルフの魔術師――シータという名前だ――は、ボケッとした顔で、見上げていた。
近付いて、兵士の話を聞くと、雨水でシートがたわみ、四隅の木も傾いてきていて怖いという陳情だった。
確かに、ブルーシートに雨水が少し溜まっていた。
雨水が流れるように斜めにしたけど、素人の即席DIYじゃあ、何らか問題はあるわなぁ。
潰れなかっただけ、“良かった”ことにしよう。
あれ?ブルーシート上手く使えば、雨水もっと溜められた?
気にしたら負けだ。…負けないぞ。
ブルーシートに溜まった水を落とした後、PPテープの結び目を外し、シートを外していく。
何かあるといけないので、兵士とシータには、避難してもらっている。
筏型ソリの作成に、取り掛かる。
昨日、持って帰った木を、結束バンドでつなげていく。
隙間だらけだが、そこから結束バンドを通せるので、良い様に捉えよう。
長めの釘を、何か所かに途中まで打ち込む。
そこに細長く切った防鳥ネットを引っかけて、転落防止ネットの完成だ。
長さ1mくらい、幅70㎝くらいのソリが出来上がった。
満足してから、川の様子を見に行く。
歩数で数えたら、塀から700歩ちょっと、距離にすると…まあまあな距離。
よくもまあ、一日で、ここまで木を切り倒したものだ。
ただ、入口付近は、幅が2mほどあるが、川の近くは、自分が通れる程度の幅だ。
川は増水している様子はなかった。
一昨日見た時よりも、少しだけ濁っているように感じた。
川幅はざっと見、7~8mくらい。
とりあえず深さを測る。
靴とソックスを脱いで、裾を膝までまくり上げると、ゆっくりと川へ入っていく。
冷たい…。
慎重に、川の中央まで進む。
膝下くらいの深さだった。
川から出て、タオルで足を拭いて、ソックスと靴を履き直す。
下流に向けて、河原を歩き出す。
ある程度、下流まで来たところで、河原を探索し、大きめの石を探す。
何個か集まったところで、また靴を脱ぎ、川へ石を持って入っていく。
石を積み上げ、足場を作っていく。
二か所だ。
そこに乗り、安定性を確かめてから、しゃがんでみる。
…転んだ。
積んだ石が崩れ、川にダイブ。
“暖の季節”と言っていたが、まだ肌寒い。
さらに、冷たい川の水。
河原に戻り、パーカーとアンダーシャツを脱いで、河原に並べる。
周囲を見回し、誰もいないことを確認し、ズボンとスラパンを脱ぐ。
そのまま、川へ行き、震えながら行水を行う。
カラスよりも早い行水を終え、タオルで乾布摩擦並みに体を拭いていく。
スラパンを履き、発汗性の高いアンダーシャツを着込む。
その状態で、もう一度川に石を積んでいく。
出来た。“開放型シャワー付きトイレ晴天時限定バージョン”…ありがとう。
気を良くして、物置の方へ戻っていく。
魔物に遭遇しないのかって?…います、出ます。
石を投げつければ、逃げていくって気が付いて、パーカーのポケットは石だらけです。
物置の前に戻ると、今日の食糧便と、ライナーが戻っていた。
話を聞くと、木工の職人や大工も、明日か、明後日には来てくれるらしい。
自分で壊しておいて何だが、ここに返還魔法陣を描ける施設も作ってほしい。
ルヴァンには申し訳ないが、彼を、王国の元へ帰すわけにはいかない。
早速、筏型ソリの試運転だ。
ライナーたちに説明をすると、引きつった笑顔で
「ウソだろ…」
って、言っていたので、
「本当です」
と、笑顔で言っておいた。
ライナーたち5人を乗せ、いざ出発。
筏型ソリの前方を少し上げると、ギャーギャー言ってくる。
少し上げないと、抵抗があって早く運べないでしょ。
兵士が、ギャーギャー言わない!
最初は歩いていく、少しずつ速度を上げていくと、ライナーたちの声が聞こえなくなった。
人間慣れるものさ。
小さな段差があったのか、ソリが少し跳ねた。
「落ちた~」
後ろから大声が聞こえる。
振り返ると、一人地面に転がっている。
ちゃんと掴まってなさいよ。
戻って、落ちた兵士を見ると、釘を掴んでいた。
あっ、抜けたのね。
兵士を左手で持ち上げ、ソリを引いて戻る。
また、ギャーギャー言っている。
野営地まで戻り、落ちた兵士を、治癒魔術師のシータへ預ける。
ライナーたちは、地面に降り、四つん這いになっていた。
楽しいアトラクションだと思うけどな~。
こっちに、遊園地は、無いだろうから、初めての体験で、ビックリしたのかな。
人間、いつかは、慣れるよ…きっと。
皆様、ありがとうございます。
第22話は、来年1月4日に投稿します。
それでは、良いお年を。




