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第19話 雨の一日

 異世界生活7日目。

 朝から、春雨のような細かな雨が、降っている。


 哲治は、クーラーボックスとバケツを外に出す。

 クーラーボックスは、蓋が閉まらないよう、調整し物置へ戻る。

 

 王女たちの個室に使用されていた、ブルーシートを外し、代わりに、寒冷紗を目隠しにする。

 ギャーギャー言われたが、気にしない。


 魔物領へ走り、木を4本持って走って戻る。

 ライナーたちが、野営している場所に行き、四隅にシャベルで、深めの穴を掘って、持ってきた木を植え込む。

 PPテープを、ブルーシートのハメトに通し、枝にかかるよう木に巻き付けて縛る。

 一辺を、少し低くして縛れば、簡易屋根の出来上がり。

 

 ライナーたちは、最初怪訝な顔をしていたが、ブルーシートを張ると、口を開けて見ていた。

 どや顔をしてみる。

 馬車から、どや顔師匠のエルフが、笑顔でブルーシートの屋根を見ていた。


 満足して、物置へ戻る。



 ゴルフバッグの中から、レインコートの上下を取り出し、着ていく。

 釣り用なのか、園芸用なのか分からないが、長靴が置いてあったので、拝借する。

 野球用のキャップを被り、レインコートのフードを上からかける。

 雨対策バージョン完成。

 

 ちなみに、ルヴァンに、雨対策の魔法陣は無いか尋ねたら、呆れた顔で「無い」と言われてしまった。


 ふん。魔法も高が知れてるな。


 

 ライナーたちには、雨だからと今日の同行を断ると、

 「それでは、一旦3名が砦に戻っても良いか」

と、許可を求めてきた。

 君たちの上司じゃないから、好きにすればいいのに。

 

 ついでに、木工が出来る人や、大工を何人か用意できないか聞いてみた。

 「何のために?」と聞かれたので、

 「魔物領に、拠点を作りたい」

と、言ったら、納得はしてくれた。

 ただ、募集は掛けるが、用意出来るのは、いつになるか分からないと、言われてしまった。



 話は突然変わるが、彼らのトイレ事情を聞くと、男は開放的に行うと言っていた。

 女性はちゃんと、携帯用の衝立があるんだって。

 しゃがんで、頭が出るくらいの3面の衝立らしい。

 なるほど。



 雨が、少し強くなってきた。

 そんな中、魔物領へ向かう。

 

 今日は、川までの道の整備と、木材の調達がタスクだ。

 出来るサラリーマン風に、無駄に横文字を使ってみる。


 雨で、ぬかるんだ地面を鍬で掘り、切り株を除去していく。

 ぼこぼこの地面を、鍬の背で押し固め、なるべく平らにしていく。

 こんな時、トンボが欲しいなって思う。

 あの、グラウンドをならすT型の道具。正式名称は知らない。


 親父、グラウンド整備、趣味にしとけよ。



 雨のため、太陽の位置が分からないが、大体の感覚で、お昼頃に物置に一旦戻る。

 ライナーは、居なかったが、食糧と水を運んできた馬車が、丁度、到着したタイミングだった。

 馬を外した荷車を、倉庫に運び、水樽を下ろしたら、後は、クルーガとマーリンに任せる。



 午後から、再び魔物領での整地の作業だ。

 

 少し早目に戻り、持って帰った木の枝を払っていく。

 今朝、結束バンドを見つけたのだ。

 何のためにあるのか分からないが、緑色の結束バンドが大量にあった。

 見ているようで、見落としている物があるんだな。

 

 本日の“真のタスク”は、筏式ソリを作ることです。

 万能PPテープで、木を縛り付けても、地面との摩擦で、切れてしまう可能性が高かった。

 でも、結束バンドならどうでしょう。いけんじゃね。


 

■■■

 

 ライナーは、砦への帰還の許可をテツジに貰い、雨の中、部下2名と砦へ戻った。

 すぐに、ジョンを尋ね、一緒に会議室に入る。

 

 ライナーと、部下2名、それに、第4大隊長のジョンの4人で話し合っていた。

 魔物との戦闘を、事細かく説明し、絶対に、敵対してはいけない相手だと伝える。

 

 ジョンには、王国と、別の砦にいる第八師団長へ、早馬を随時飛ばしてもらっていた。



 そんな折、会議室の扉が、突然開かれる。

 驚いて扉の方を見ると、第八師団長のブルーがそこにいた。


 「おっさん!」「オジキ!」

 ライナーと、ジョンの驚いた声が重なる。


 第八師団長のブルーが、現在詰めている砦は、この砦から早馬で3日かかるところだ。

 馬を飛ばしてくれば、計算は合うが、壮年の体でフットワークが軽すぎる。

 驚くのも無理はない。


 「入るぞ」

 短くそう言うと、師団長には珍しい真顔で、部屋へ入ってくる。


 顔は厳ついが、陽気で、いつも人好きのする表情をしている。


 椅子に座ると

 「召喚の儀の失敗、聞いた。詳しく話せ」

 いつもの陽気な口調ではなく、冷たい口調で静かに言う。


 ライナーは姿勢を正し、シュメル中隊長、ピピン近衛兵士から聞いた話。

 自分が、直に見たテツジの話を、ジョンや部下の助けを借り、自分の感想を入れないように気を付けながら、事実のみを伝えていく。


 静かに、目を瞑って師団長のブルーは、話を聞いている。


 ライナーが、話し終わると、ゆっくりと目を開け。

 「分かった。ライナー、引き続き頼む。必要なものは、強制的に徴収してかまわん。俺が、全て責任を持つ。金のことも考えるな。政治は俺がやる」

 そう言って、いつもの陽気な顔をした。


 「俺も、会ってみてぇな。その大巨人様によ」

 カカカと笑う。


 報告を聞いて、一目散で来たんだろう。

 やっぱ、この人には敵わねぇわ。


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